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2009年10月10日 (土)

乳歯のうちに治しておきたい噛み合わせ1

本日は、『口腔の育成をはかる~こんな問題に出会ったら   生活者とともに考える解決法~』(佐々木洋先生ほか編)の中から、嘉ノ海龍三先生の著作分よりお届けいたします。

◇不正咬合の成り立ち

不正咬合とよばれる噛み合わせや歯並びの異常は、さまざまな要因が重複しあうことで発現します。その要因は、遺伝的・先天的要因と、環境的要因に大きく分けられます。

さらに、環境的な要因のなかにも、内分泌の異常や栄養障害による全身的なものと局所的なものがあります。

乳歯列期で関係のある局所的な要因には、乳歯の早期喪失、咬唇癖、吸指癖、舌突出癖、口呼吸、異常嚥下、おしゃぶりの常用、睡眠態癖、舌の形態異常、小帯の異常、歯と顎の不調和、鼻咽腔疾患、顎関節の疾患、その他の外傷など数多くのものがあげられます。

◇乳歯列から対応したい不正咬合

日本人における発現頻度は反対咬合、過蓋咬合、開咬の順に高いといわれます。

乳歯列の反対咬合には自然治癒の可能性が高い歯性のものと、自然治癒の可能性の低い骨格性のものがあります。自然治癒しない反対咬合は、混合歯列や永久歯列期になると著しく悪化する傾向にあり、乳歯列のうちに前歯の噛み合わせを改善しておくことで、その後の顎の成長に寄与する可能性があると考えられています。

乳歯列期には骨格性の反対咬合はもちろんのこと、いずれの場合でも、前歯の被害を改善し、上下顎の近遠心的関係を良好な状態にすることが臨床的に望まれます。

乳歯列期の開咬の多くは、吸指癖を主とする口腔習癖が原因といわれています。ですから、一般的には口腔習癖を中止させて自然治癒を促すことが第一ですが、必要に応じて口腔周囲菌のバランスを整えるために筋機能訓練を行うことが望まれます。ただし、鼻疾患など、ほかの疾病が関与するものに対しては、原疾患への対応が必要です。

乳歯列期の上顎前突も吸指癖によるものが多く、同時に上顎歯列弓の狭窄を認めることもあります。この場合、まず吸指癖の中止をはかり、次に上顎歯列弓の側方拡大などをおこなう方針が考えられます。この場合も、必要に応じて口腔周囲筋のバランスを整えるための筋機能訓練が有効です。原因が重複するため、乳歯列期には、開咬と上顎前突が併発している例が高頻度に見られます。

乳歯列期に改善しておきたい噛み合わせの1つに、乳臼歯部の歯冠崩壊や早期喪失を原因とする過蓋咬合や、下顎遠心位を伴う著しい過蓋咬合があります。このような噛み合わせでは、下顎の成長は抑制され、顎運動も制限される状況が考えらるため、早い時期に対応していきます。

次に問題となるのは交叉咬合です。。正常咬合では、上顎の歯が下顎の歯の内側に位置して咬合することをいいます。交叉咬合には、偏側性と両側性があります。噛み合わせのずれや歯の傾斜による交叉咬合と、上顎歯列が狭窄、あるいは下顎歯列が拡大している骨格的な交叉咬合に分けられます。

交叉咬合が放置された場合、成因に関わらず自然治癒する可能性は低く、歯の交換、顎の成長とともに歯列の左右の非対称性は著名になり、顔面の非対称性を呈したり、顎関節の機能や形態に障害を及ぼす危険性が高いと考えられています。

機能的な面においても、反対咬合や交叉咬合、また部分的な咬合干渉が歯列内に存在すると、片側的な咀嚼運動パターンが習慣化(偏咀嚼化)して、さらに不正咬合を助長してしまう場合もあります。

できるだけ早期に発見し、改善することが望ましいでしょう。

乳歯列期では、霊長空隙、発育空隙という言葉が存在するように、切歯部に歯間空隙がのある歯列が多く、叢生歯列の発現頻度は低いといわれています。口腔習癖に関連する乳歯列期の叢生歯列ならば、習癖の中止をはかりますが、この時期に将来の顎と歯の不調和の予測は難しく、一般的には経過観察にとどめます。正し、乳歯の早期喪失があり、永久歯列の空隙の縮小が起こる場合は、それを防ぐ目的で必要に応じた保隙処置を行います。

明日へ続きます。

参考文献 口腔の育成をはかる~こんな問題に出会ったら   生活者とともに考える解決法 佐々木洋先生ほか編の中から、嘉ノ海龍三先生の著作分 医歯薬出版 

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