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しろくま先生のブログ
しろくま歯科医院より歯にまつわる楽しいお話や、
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2010年2月19日 (金)

よく噛めば頭がよくなってボケない

本日は、中村輝夫先生の著書『食は一生-そのための「歯」の本』よりお届けいたします。

◇よく噛めば頭がよくなってボケない

噛まなくてもよい粉末の飼料で育てたネズミと、よく噛むうちに固形飼料で育てたネズミを絶食させた状態で、出口に餌を置いた迷路に入れ、どちらが試行錯誤が少ないかを調べてみると、固形飼料で育ったネズミの方がよい成績を収めました。よく噛まないと賢くならないのです。

生まれて間もないネズミの歯が片側だけ生えてこないよう、将来、歯になる組織を摘出しておいて固形飼料で育てると、このネズミは片側だけで咀嚼して成長します。成長してから脳細胞を顕微鏡で検査すると、歯がない側の反対側の脳の発育が遅れていることが確認できました。

ご存じのように右半身の刺激は左脳に、左半身の刺激は右脳にと、身体からの刺激は左右反対側の脳に伝わります。よって、歯がない側の反対側の脳の発育が遅れいたのは、歯がないため、咀嚼の刺激が伝わらなかったからと考えられます。

咀嚼しないと脳の発育が遅れることが推測できます。

また、幼稚園の子どもたちの噛む力と幾何学図形テストの成績の関係を調べたところ、噛む力が強い子の方がテストの結果が良かったそうです。

小・中学生の運動能力の調査でも、歯が丈夫で噛む力が強い子のほうが優れていたことがわかりました。しかしながら、おかずに硬いものが入っているとはき出してしまったり、噛まないで飲み込んでしまう幼児が増えているといわれており、心配です。

高齢者の痴呆と歯の関係については、どちらかというと、歯がなくて噛めない方のほうがボケやすいようです。また、寝たきりの高齢者に入れ歯を作って、自分で咀嚼出来るようにしたら、元気が出て起き上がって歩けるようになったという話をよく聞きます。これは、噛む動作が脳の血流量を増加させるからで、実験でも確認されています。

火を知らなかった原始時代の人間は生肉をほうばり、木の実を歯で食いちぎって生きていました。やがて、火を用い、焼いたり、煮たりして食物を調理して食べるようになりました。人間の食の変換をみると、より食べやすく、軟らかくなているのが伺えます。調理することにより、消化しやすく、美味しく、食べやすくなったので、現代人はあまり噛まなくても充分な栄養がとれるようになりました。

車社会になって歩くことが少なくなった現代人は、運動不足を解消するためにフィットネスクラブなどで器械の上を歩いたり、走ったりしています。同じように噛むことが少なくなったことを補うために、ガムを噛んだりします。

これらは、何か変かもしれません。本当は、山村の元気な高齢者のように、自分の身体を使ってよく働き、昔の日本人が食べていたような噛み応えのあるものをゆっくり咀嚼する生活がいいのでしょう。スローライフ、スローフードが頭にも健康にもよさそうです。

参考文献 食は一生-そのための「歯」の本 中村輝夫著 東京図書出版 

2010年2月11日 (木)

32本の歯が示すアンチエイジングな生活

本日は、坂本洋介先生の著書『元気でキレイは口元から~アンチエイジング歯科のすべて~』よりお届けいたします。

◇動物や人間の歯

動物によって歯の形や本数はいろいろです。

ライオンなど肉食獣の歯は、前歯が上に4本、下に5本あり、その横には大きく鋭い犬歯、奥にも尖った歯が4,5本生えています。どの歯も牙のように尖っていているのが特徴で、平たい歯はありません。獲物を襲って肉を引き裂くのに適した歯ばかりで、草や木の実などをすり潰して食べる食物に適した歯は必要ないのです。

これに対して、草食動物のウシの歯は、上に6本、下に10本あります。前歯は下だけで上にはありません(上は歯ぐきのみ)。その他の歯は平べったい臼状です。草を舌で巻き取り、前歯で切って奥歯でかみ砕くのに適した構造です。

一方、人間の永久歯は、親知らずを含めると上下各16本で、計32本あります。

このうち、野菜や果物を噛むための門歯(前歯)は8本、肉を切り裂く犬歯(糸切り歯)は4本、穀物を砕いてすりつぶす臼歯は20本となっています。

人間は、肉も野菜も食べる雑食動物ですが、歯のバランスを考えると肉と野菜のバランスも歯と同じ比率にするのが理想ということになります。

つまり、肉1:野菜2・穀物4の割合で食事をとることが健康の秘訣になるのです。肉食に偏りがちな私たちの食生活への警鐘がこんなところにも表れているのです。

◇ネコはむし歯にならない

ここで、もっとも身近な動物であるネコの例を挙げてみましょう。皆さんは、ネコにむし歯がないことをご存じですか?

事実そのとおりで、ネコがむし歯にならないのには二つ理由があります。歯はすき間だらけで、針のようにとがった形をしています。そのために汚れが残りずらいのと、ネコは甘みを感じないので、むし歯の原因となる甘みを口にしないらしいのです。

しかしながら、ネコにも歯周病が見られ、歯の周りに付着する歯石が原因で、歯が抜けたり溶けたりするそうです。

参考文献 元気でキレイは口元から~アンチエイジング歯科のすべて 坂本洋介著 北海道新聞社

2010年2月 5日 (金)

市販の口臭チェッカーは正確か?

本日は、川口陽子先生監修の『「息さわやか」の科学』よりお届けいたします。

◇市販の口臭チェッカーは正確か?

口の中がすっきりしないからといって、口臭がいつもあるとは限りません。

一方、「歯磨きをしたから大丈夫」と思っていても、口のにおいを人に指摘されてしまう場合もあります。家族など身近な人にいつも自分のにおいを確認してもらうわけにもいきません。

そこで、市販の口臭チェッカーを購入して、自分のにおいを確認しようとする人がいます。

口臭チェッカーの多くは、センサー部位に「はぁ~っ」と息を吹きかけると、口臭の強度が5段階や6段階ですぐに表示されます。口臭の原因となるガスに反応するセンサーが、機器の中に入っていて、においを検出する仕組みになっているのです。

しかし、このようなセンサーは、口臭物質だけに反応するのではなく、ほかのにおい(食品のにおい、アルコールやタバコの臭い、歯磨き剤やマウスウォッシュに含まれる香料)にも反応してしまいます。

ですから、においが表示されても、それは、口のにおいだけを正確に検出したわけではないのです。

自分の口臭を非常に心配している人は、口の中をきれいにしておくために、歯磨き剤を使って何回も歯を磨き、口臭予防のためにマウスウォッシュやスプレー、ガムやタブレットを頻繁に使用している場合が多いようです。

そのような人が口臭チェッカーを何回も使用しているいちに、センサーの表面部分が汚染されてガスに反応しなくなり、値が何も表示されないこともあります。こうなると、もっと心配になってしまいます。

病院で使用口臭測定器は常に正確に測定出来るようにメインテナンスしていますし、測定条件を一定にして診断しています。口臭は1日に時間帯によっても強弱が変化するので、口臭チェッカーを使用する時は注意しましょう。

参考文献 「息さわやか」の科学  川口陽子監修 明治書院

2010年1月24日 (日)

美味しく食べるには自前の歯を大切に

本日は、NPO団体DOC(デンタルハイジニスト&オーラルヘルスセラピー協会)編著の『歯から始まる健康と医療』よりお届けいたします。

◇歯は表情や発音にも影響する

歯の役割は、食べると言うことだけではありません。キラリと光る白い歯は、美しい笑顔に欠かせませんし、歯をむき出しにして威嚇するという動物的な怒りの表現もあります。

魅力ある表情について考えてみましょう。

「明眸皓歯(めいぼうこうし)」という言葉があります。明るい瞳と口元の白い歯、これは中国で古くからの美人の要件です。この「美人」は、女性ばかりを対象にしているのではなく、美しい顔、美しい表情をいいます。我々の顔は社会の門戸として演じているわけです。

顔が利くという言葉も普段よくつかうでしょう。ほかにも、目は口ほどにものをいう。目元千両、口元万両。これは目が千両役者なら、口元はそれに倍して演ずることが多いということです。魅力ある表情には、口元は非常に大きな役割を果たしています。

昨今、日本歯科審美学会をはじめ、口元の美に関するいろいろな研究が学会として進んでいます。

次に、好感をもって相手に意思が伝えられるかどうかです。

アナウンサー、歌手、俳優の方々が、私どものところにいらっしゃいます。義歯を入れるようになって、皆さんが特に心配されるのは発音です。特にS音。「し」のS音が聞こえず、「い」が強く聞こえてしまうことがあるのです。

しばらく見ている患者さんで、国立劇場の舞台に立ている方ですが、「し」のS音がどうしても強くでない。この場合は、S音が出るように義歯の形態を変える必要があります。あるいは「がぎぐげご」がうまく発音できない。それは入れ歯の形態をなおせばおおかた治る発音です。

そういうことで、歯は食生活、あるいは審美、あるいは会話など、生きる上での基本的な喜びを与えてくれるものです。

◇健康は正しい噛み合わせから

最近は体のコントロールにも、噛み合わせが大きな影響を与えるということがわかってきました。

15年前にスポーツ歯学医学会が出来ましたが、全国の大学あるいは開業の先生方が参加されて、皆さんが歯を健康に保つことで、スポーツを楽しく、あるいは自分の体を上手にコントロールされてできるようにと研究しています。

数年前、ある射撃の選手が私の診察室にいらっしゃいました。近くの歯医者さんで臼歯の7番、一番奥の上の歯にインレーという詰め物をしたら、的が今までどおりうまく当たらない。どうも的を外す。的中率が悪くなったとおっしゃる。そこで、拝見して、数ミクロン、ほんのちょっと削りました。後日頂いた電話では、元にもどったということでした。正しい噛み合わせ、きちっと歯をあわすことが、全身の関節を固定する、姿勢をコントロールするのに非常に大事なのです。

また十数年前には、あるプロゴルファーが私の所にいらっしゃいました。臼歯が三カ所ほど噛み合わせが壊れていました。私もスポーツ歯学を始めて2年か3年からいたっていた頃だったと思います。9月に試合があるというので、2ヶ月くらいである意味で突貫工事でしたが、治療しました。するとなんとそれまで2年間トーナメントで優勝から離れていたのに、いきなり2連勝しました。

このように、噛み合わせは、全身の運動や、口元の美、発音と深く関わっているのです。

◇日本の食文化を楽しむために

これまでお話したことを簡単にまとめますと、味覚、嗅覚、見た目、これは世界の文化のいずれも大事にしていると思いますが、触覚、聴覚、音を大事にしているのは日本の食文化なのだということです。五つの感覚をフルに使って、我々日本人は日本の食文化の中で食を楽しんでいます。

食材を単味でそれと確かめ、料理そのものの特徴として記憶の中にとどめています。

日本人は複合味を感覚するのは不得手と言われますが、食材のひとつひとつの持ち味をおいしさと結びつける五つの感覚には鋭いものがあります。

日本の食文化は、繊細な食感覚を育て、精緻で豊富な擬音語、擬態語を生みました。言葉の文化にも大きな影響を与え、豊かな表現力を与えました。

デパートの地下街にならぶ焼き魚、天ぷらでは日本の食文化は語れません。地下街に山と盛られたきんぴらごぼうは圧力釜でどんと軟らかくして、後からきんぴらのたれで和えると聞きます。これでは歯ごたえなど味わえるはずもありません。

四季折々に魅せる旬の味、香り、彩り、それに歯ざわり、歯ごたえと音を一つ一つ確かめながら、季節の味、家庭の味として記憶し、生涯を通じて楽しめるのが日本の食文化であるはずです。

世界に類を見ない擬音語、擬態語を豊富にしかもひじょうに細かい精緻な表現、感覚表現を私たちは食文化の中で学び取って、日常生活で使っているわけです。そういう意味では、日本人こそ自前の歯を大事にしなければいけないと思います。

参考文献 『歯から始まる健康と医療』 NPO団体DOC(デンタルハイジニスト&オーラルヘルスセラピー協会)編著 九天社 

2010年1月22日 (金)

正しい噛み合わせが血流の代謝を良くする

本日は、国武和春先生の著書『診療歯科医のプレッシャーに打ち勝つ歯の噛み合わせ治療法』よりお届けいたします。

◇顎の開閉が、血液を心臓に送り返すポンプの役割をする

歯を噛み合わせるという行為は、血液の代謝に重要な役割を果たしています。新鮮な血液を臓器に送り込み、古い血液と交換する血液代謝は、健康な体を維持するうえで必要不可欠な機能です。

血液は、新しい酸素や栄養分を身体の各細胞に届け、代わりにいらなくなった老廃物や二酸化炭素を受け取るという、物質代謝の役割を果たしているからです。

私の患者さんに、漢方医の早崎知幸先生がいらっしゃいます。先生によれば、東洋医学では、「気」の流れとともに「血(血流)」の流れを非常に重要なものとしてとらえているそうです。血液がスムーズに流れなくなる状態を「瘀血(おけつ)」といい、さまざまな疾病の原因になることが多いです。血液の役割を考えれば、それも当然といえるでしょう。

心臓がポンプの役割を果たして血液は全身を循環しています。新鮮な血液を取り入れるには、古い血液を押し出す強い力が必要です。しかし、心臓の力だけでは頭のてっぺんから足のつま先まで、血を巡らせることは出来ません。そのため、身体各部に血の巡りを助ける組織があります。

例えば、首から下でポンプの役割をしているのは横隔膜です。呼吸をするたびに横隔膜は上下し、そのことで心臓に血液を送りポンプの役割をしています。足も、第二の心臓といわれるように、動かすことによって末端部から心臓に血液を戻しています。

首から上について言えば、脳が身体の中でも最も多くの酸素や栄養分を必要とする部位です。その脳に新鮮な酸素を送り込むためにも、老廃物などを含んだ血液はどんどん心臓に送り返さなくてはなりません。そのための強力なポンプの役割を補助しているのが、実は顎の開閉なのです。

物を食べたり、話したり、笑ったり、あくびをしたりする度に、顎は大きく開いたり閉じたりしmす。その開閉運動によって、こめかみや顎関節部にある海綿静脈洞や翼突筋静脈叢のたまり場を通じて、脳や顔面の血液を心臓に送り戻しているのです。

参考文献 診療歯科医のプレッシャーに打ち勝つ歯の噛み合わせ治療法 国武和春著 本の泉社  

2010年1月 7日 (木)

口臭とは

本日は川口陽子先生監修の『「息さわやか」の科学』よりお届けいたします。

◇口臭とは

口臭とは、呼吸や会話をする時に口からでる息が第三者にとって不快に感じられる臭いです。重要なのは、自分ではなく第三者が不快に感じるかどうかです。

口臭の診断名は、医学用語では「ハリトーシス(Halitosis)」と表現します。その語源は、“息”を意味するラテン語の「halitus」と“異常な状態”を意味するギリシャ語の「-osis」であると、考えられています。

口臭のことを、英語では「バッドブレス(Bad breath)」といいます。まず、非常に口臭が強い人を、「ドラゴンブレス(Dragon breth)」や「ドラゴンマウス(Dragon mouth)」と表現することもあります。

ドラゴン(竜)が火を吹くように、口から強烈な臭いを発する人は、周囲の人々に敬遠されています。

ロビンソン・クルーソーのように、他人との接触が全くない無人島に、たった一人で生活しているのであれば、どんなに口が臭っても、口臭を病気として意識することはないでしょう。また、動物であるならば、自分の口臭について悩むことはないでしょう。

集団で社会生活を営んでいる人間だからこそ、口臭が深刻な悩み、苦しみとなるのです。

口臭は、人間が社会生活を送るための基本となるコミュニケーションに支障をきたします。「自分に口臭があるせいで、人に迷惑をかけている」といつも気にしていると、心理的に不安になり、だんだん行動が消極的になっていく、ということもよくあるのです。

また、口臭の発生には、口の中の不潔な状態や病気、鼻などの病気、呼吸器系の病気、消化器系の病気など、多くの原因が複雑に影響している場合があります。

口臭の原因の90%以上は、口の中と関係があります。ですから、口臭が気になったら、まずは歯科医院で診てもらってください。最近は、大学病院を中心に、口臭の質や強さを化学的に分析し、診断を行ってその原因を突き止め、口臭の予防法をアドバイスしたり、必要な治療を行ったりするところが増えてきています。

参考文献 「息さわやか」の科学 川口陽子著 明治書院

2009年12月27日 (日)

歯の不具合、身体への影響2

本日も昨日に続き、伊藤正夫先生監修の『高度歯科医療最前線』よりお届けいたします。

◇身体への影響~奥歯が失われると~

歯が痛む、ぐらぐらするなどの不具合とともに、特に多いのは歯が抜け落ちた(あるいはむし歯などによって抜けた)ことによる不具合、それから入れ歯による不具合です。

人は、歯がないだけで死ぬわけではありません。ライオンのような肉食獣にとっては牙を1本失うことは、そのまま狩りができないこと、すなわち死に直結しますが、人は特に最近は食べ物が軟らかくなっていますから、たとえ全部の歯がなくなったとしても死にはつながりません。

しかし、奥歯が抜けてしまったという場合、想像以上の不具合が生じます。

奥歯の存在は、実は顔の長さを決定している最大の要因なのです。

奥歯はあたかも「ヘラクレスの柱」に似ています。ヘラクレスの柱は地中海のはずれ、ジブラルタル海峡の南北に立つ岩山です。スペインの国旗に描かれ、通貨ドルを表す$の縦の2本線もヘラクレスの柱といわれていますが、古代の宇宙観にとって大変重要な役目を果たしています。

歯の世界でも奥歯の重要性は同じで、奥歯が上下に噛み合って顔と顎を支えており、顔面の長さを維持しているのです。

ですから奥歯を失うと、次第に顔の長さが短くなって、口の周囲に深い皺がより、老け込んでしまいます。さらに顔が短くなるにつれ、前歯が飛び出して歯と歯の間にすき間ができ、唇が閉じなくなります。

また、奥歯がなくなると顎に加わっていた力が、直接、顎の関節に加わります。顎の関節には口を開閉する筋肉、噛むための筋肉などがついています。これらの筋肉(咀嚼筋)と協調して頭蓋を背骨に固定する筋肉群も口の開閉に参加します。従って、口の開閉や咀嚼は多数の筋肉の緊張と弛緩が同時期に、かつ調和を保って行われる運動です。これを統合するのは脳にほかなりません。

ですから、奥歯がないとまず顎の関節が大きなダメージをこうむることになり、そのことによって口を開閉する筋肉や、頭を背骨に固定する筋肉などのバランスが狂います。

そうすると、肩や首が凝る、頭が痛い、姿勢制御が難しくなる、歩行が困難になるといった様々な不具合が生じてきます。ですから、奥歯はどうしてもなくてはならない重要な歯ということが言えると思います。

◇細菌を培養し味覚障害を起こす入れ歯

歳を重ねるにつれ歯が抜け落ち、こえを補うために入れ歯(義歯)をする人が多いのはご存じの通りです。とりわけ80歳以上の高齢者の大変多くの方が総入れ歯となっています。

歯が抜け落ちた部分に義歯をする。これはいわば応急処置のようなものです。応急処置といったのは、義歯やブリッジにしている方々は、誰もが不満を抱えている根本的な解決になっていないからです。実際、義歯やブリッジに対する不満、不快の声が、私たちの元へたくさん寄せられています。応急処置ですから、これで良いわけはありません。1日もはやく義歯かたインプラントにすべきであるのはいくつかの理由があるのです。

まず衛生面です。

義歯はどのようなものであっても、金属とプラスチックから出来ています。プラスチックだけの場合もありますが、金属だけというものはありません。このプラスチックは吸収性があって、内部に唾液などが浸透していきます。

水分を浸透させることは、いわば入れ歯の中で細菌を培養することと同じになります。

また、入れ歯の清掃がうまくできていないと、歯にバイオフィルムが発生します。バイオフィルムとは、細菌が重なって出来たフィルム状のもので、台所のシンク(流し)などのぬるぬるしたものと同じです。

入れ歯の表面についたバイオフィルムが、咽頭部に落下することもあります。このバイオフィルムを吸い込んでしまうと、肺炎の原因にもなります。

入れ歯による弊害はこれだけではありません。味覚にも大きな影響を及ぼします。たとえば、入れ歯というものは、顎に吸盤のように張り付かなくては機能を果たせません。入れ歯と顎の間にすき間があると、入れ歯が動いてうまく噛めません。そこで、上の入れ歯を入れたとすると、上顎にぺたんと張り付くような感じになります。

ところが、顎の内側、口蓋といわれる部分には味蕾(みらい)があります。味蕾は食べ物の味を感じ取る器官ですから、入れ歯によってこの部分がふさがれてしまうと味を感じ取ることが出来なくなってしまうのです。

これは、入れ歯がもたらす「味覚障害」です。味を感じないと、人は食べる楽しみを失ってしまいます。入れ歯ひとつで人生の楽しみが失われるわけですから、応急処置であきらめてしまうことがあってはならないのです。

参考文献 高度歯科医療最前線 伊藤正夫先生監修 経済界 

2009年12月26日 (土)

歯の不具合、身体への影響1

本日は伊藤正夫先生監修の『高度歯科医療最前線』より二回に渡ってお届けいたします。

◇歯の不具合の影響

私たち大人には、親知らずを含め32本の永久歯があります。最近は、食生活の変化で親知らずが退化傾向にありますから、実際には28本から32本というのが正しい永久歯の数でしょう。

わずか30本前後。実に限られた数です。

私たちはこの限られた数の歯によって、単に食べ物を咀嚼するというだけではなく、コミュニケーションや生き甲斐、楽しみを十分に亨受することが出来ます。逆に歯が1本でも欠けたり、痛みを感じたりすると、身体的・精神的・社会的なすべての面で決定的とも言えるようなマイナスの影響を受けます。

まさに生涯にわたって身体にも心にも、また社会生活にも重大な影響を及ぼす器官、それが歯であると言っても過言ではありません。

ところが、あまりにも身近な器官であるためか、その重要性にもかかわらず、一般に歯の治療や影響力に無頓着であることが多いのも事実です。それによって失われることは、予想以上にたくさんあります。

歯の不具合は、身体や心、あるいは社会生活にどのような影響をもたらすのか、人が行きていく上で健康な歯が「幸福」とどれほど密接に結びついているのか、いかに「歯」が大切なものであるかについて、概観しておきたいと思います。

◇身体への影響(1)噛めないことと健康、そして老化

歯が痛い、ぐらぐらする、欠けている、といった不具合があるとき、私たちがこうむる一番の影響は「食べ物をよく噛めない」ということです。

少し硬いものだと噛めない。干した魚や硬い木の実を食べていた縄文時代の人々は、1回の食事で4千回噛んだといわれていますが、軟らかい食べ物に慣れている現代人はどうでしょう。縄文時代の人々とは比べものにならないほど、噛む回数が少ないのは明らかです。

しかも歯に不具合を起こすと、噛む回数はさらに少なくなり、あまり咀嚼しないまま食べ物を胃に送り込みます。十分に咀嚼しないと唾液の分泌も不十分になり、これによって胃に負担をかけ、消化不良を引き起こします。あるいは、硬いものが食べられないことによって食生活が変化し、それによって十分な栄養を摂ることが出来なくなり、栄養失調を起こします。

栄養失調は気力を失わせ、それによって人生に悪影響を及ぼす結果にもなりかねません。

それらのことを考えただけでも、人にとって「噛む」という行為は、重要な意味を持っていることがわかります。

詳しく説明すると、人は噛むときに唾液が出てきます。その唾液は食べ物の消化作用や溶解作用、口の中の洗浄作用、抗菌作用など多くの働きを持っています。ところが、十分に噛めなくなると唾液が少なくなり、当然ながらこれらの働きが阻害されます。

まず唾液の中にはアミラーゼ等の消化酵素、ホルモン、神経成長因子などが含まれていますが、これらが分泌されなくなるために健康を阻害します。

また、唾液と一緒に分泌されるものとして唾液腺ホルモン、パロチンがあります。これらは若返りホルモンと言われるほど、若さを保つためには重要な物です。唾液の量が減ると、当然、パロチン等も不足し、結果、髪が抜けたり、関節が変形するなどの老化現象が加速することもあります。

経験されている方ならすぐにお分かりいただけると思いますが、唾液の分泌量が減少すると、口の中が乾き、粘膜がひび割れて、味覚が悪くなるばかりか、ねばねばした苦い味が口腔内を満たし、それだけで不快です。

そうなると、常に水などで口を湿らせていないと、会話さえもままならなくなります。さらに、バーニングマウスシンドロームといわれる、口腔内の灼熱感にも発展することがあります。

老化との関係でいえば、よく噛まないことによって、脳の賦活化が阻害される点も無視出来ません。脳の細胞間の連絡を司る神経伝達物質の分泌が低下するのです。

私が指導した研究の中で、次のような興味深い研究があります。ねずみの歯を抜いて軟らかい食事だけを与える実験なのですが、この場合、明らかに学習能力が低下し、記憶力も減退。生化学的にも脳内の重要な神経伝達物質であるアセチルコリンが著しく減少しました。人においては、老人性認知症の原因になります。

この原因は、関節や筋肉が十分に働かないことにあります。

顎の骨や顎の関節、口を開閉する筋肉には、多くの脳神経が分布しており、絶えず脳との間で情報のやりとりをしていますが、関節や筋肉が十分に働かないことによって情報伝達量が激減し、そのために脳神経の退行を生ずるのです。

別の観点から見ると、脳は脳脊髄液の中に浮かんでいる状態になっています。この脳脊髄液を頭蓋骨が保護しているわけですから、頭蓋骨は1枚の骨ではなく、たくさんの骨が積み積木細工のようにつながっていて、つなぎ目(縫合線)が噛むことによって動きます。

この動きが脳脊髄液にとってポンプのような作用を起こして、脳脊髄液の環流を助けているのです。

噛むことは脳からの血液環流に対しても同じ作用があります。したがって脳脊髄液や脳の血液の環流を助けるのが、噛むという行為なのです。それが十分に働かないために脳の賦活化が阻害されるのです。

◇血液中に細菌が送り出される

痛みを感じている場合には、さらに注意が必要です。痛みがあるということは、歯、あるいは歯の回りに病気が進行していることを示すからです。

むし歯にせよ歯周病にせよ、口の中の病気はほとんどが細菌感染です。炎症を起こして痛むのは、歯を通して細菌が浸透し感染しているということです。

私たちの身体の中は無菌状態です。ここに少々の細菌が入り込んでも人には免疫がありますから、通常は駆除することができます。

ところが、歯が痛い、ぐらぐらする、よく噛めないといった症状が起きるのは、歯、あるいは歯の回りの組織に感染症が発生しているからであり、しかも細菌が1ml程度の中に、少なくとも10億個以上生息している可能性が高いのです。

このような状態で歯を噛み合わせた時に痛いのは、大きな圧力によって細菌が血管の中に押し出されて行くことなのです。歯が噛み合うとき、最大約80kg/㎠もの圧力がかかり、たとえ痛くて加減したとしても数十㎏/㎠という圧力がかかります。つまり、血液中にきわめて大量の細菌が混入されていくことになります。

この結果、組織の中に網の目状の毛細血管がある臓器に細菌が運ばれやすくなります。この臓器には、心臓、肺、肝臓、腎臓、あるいは脳などがあり、いずれも重要な臓器です。また、皮膚などにも毛細血管は多く存在します。

このような、歯とは遠く離れている臓器で感染症が発生しやすくなります。とりわけ心臓や脳といった臓器に細菌が入り込んだ場合、生命の危機に発展する可能性があります。

明日へ続きます。

参考文献 高度歯科医療最前線 伊藤正夫先生監修 経済界 

2009年12月22日 (火)

咀嚼と学習能力

本日は、日本咀嚼学会編集 窪田金次郎先生監修の『誰も気づかなかった噛む効用~咀嚼のサイエンス~』よりお届けいたします。

◇食事・咀嚼と成績

最近の研究によりますと、食べ物をよく咀嚼すると、生きる意欲が増大し、記憶力まで向上することがわかってきました。

私たちの脳は、通常、睡眠状態と覚醒状態との間を行きつ戻りつしています。例えば、私たちはガム等を咀嚼すると、覚醒の程度が高くなり、頭がすっきりして、いわゆる「エネルギー覚醒の状態」になります。ラットやモルモットによる実験では、餌を咀嚼したあとで、脳の中の化学物質を測定してみると、コレシストキニンやFGFなどの記憶に関係する物質が増加していることがわかっています。

また別の動物実験ですが、ラットに、迷路を通り抜けて餌に到達するように「道順を記憶」させる実験をしましたら、餌をよく咀嚼して食べていたラットの方が、迷路を早く覚えることがわかりました。

迷路以外での「学習実験」でも同じような結果がでています。

アメリカの研究では、毎日きちんと朝食をとっている子どもと、朝食を取らないで学校へ来る子どもの成績を比較すると、朝食組の方が成績が良かったという報告があります。

スウェーデンの研究では、400キロカロリー以上の朝食を食べさせた児童のグループと、400キロカロリー以下の児童のグループの成績をやはり比較したそうです。結果は、高カロリーのグループの方が、成績が優れていたそうです。ですから、朝食時のカロリーも大切だということになります。

日本のある幼稚園で、56名の園児を二組に分けて、一方の組は、今まで通りのメニューの給食を続け、もう一方の組には、硬い食物のメニューを給食としました。そして六ヶ月後に「噛む力」と「記憶力」のテストを実施した結果、硬い給食組の方が噛む力が強く、記憶力テストの成績も良かったと報告されています。

◇噛む子はよく育つ

この研究をもう少し詳しく説明しましょう。普通食組(対照群)の園児24名の噛む力の平均は、最初22.6キログラムで、記憶力テストは7.9点でした。六ヶ月後の検査では、噛む力の平均は、24.6キログラムでしたから、2.1グラム増加しています。記憶力の方は平均8.5点で、0.6点高くなっています。

さて、一方、硬食組(実験群)の園児32名の、実験を始める前の噛む力は、平均21.7キログラムで、記憶テストは7.7点でした。両方とも普通食組とはほとんど差がありません。

ところが、硬いメニューの給食を六ヶ月食べた後の検査では、噛む力が27.7キログラムとなり、7キログラムも増加しました。また、記憶力テストも9.0点で。1.3点向上していました。この検査結果のみから一概に断定は出来ませんが、硬い食物を一定期間食べれることが、噛む力をアップさせるのみならず、さらに記憶力もアップさせる可能性を予測させます。

◇脳の発達とは?

さて、前に述べてきましたラットの実験や、アメリカ・スウェーデンでの研究報告、そして日本の幼稚園での検査結果などをまとめてみましょう。

子どもの「頭のよい・悪い」はいったいどこで分かれるのでしょうか。もちろん、親の遺伝子によってそれは決定される、という意見もあります。私たちは、その遺伝子決定説を全く否定するわけではありません。しかし、「脳の発育」を考える場合、生後の環境をよく考慮に入れる必要があると思います。

生後の環境というのは、前述のカロリーの調査のように、栄養の問題もあります。と同時に、どれだけ適切な「刺激」が、脳に与えられるかということも重要になってきます。

アヒルやカモなどのヒナは、孵化すると親鳥の後をついて行きます。これは先天的に(遺伝子によって)決定されている行動だとこれまで考えられていました。

ところが、生後すぐのヒナが、孵化を見守ったヒトの後をついて行くことが発見されました。じつはヒナは、生後すぐに(9時間から17時間内に)見たもの(ヒトでも機械でもいい)を(親と思って)ついて歩く・・・・・ということがわかったのです。

生後ある一定の時期に経験したこと(この場合は「見た」こと)は、脳のある特定の部分に刻印され、それがこのヒナの知能となり、その後の行動を支配することになる・・・これは私たち人間でも同じです。

このように、私たち(動物)の行動学習にとって、脳の発達段階における環境とそこから受ける刺激は、非常に重要なのです。

◇脳の発育と刺激

さて前述の「頭のよい・悪い」です。生命がこの世に誕生して、どのような脳細胞を、どれだけ造るかは、遺伝子の中に組み込まれたプログラムによって決定されます。遺伝子の中に組み込まれたプログラムによって決定されます。遺伝子には生命体のハードの情報があるのです。

しかし、脳細胞に、どのようなシナプス(脳細胞同士の連絡)を造らせるかは、外部からの刺激、すなわち環境によって決定されるのです。いわばソフトの情報は、外部からの学習によるのです。ですから、特に幼児期の環境というのは、きわめて大切なわけです。

これもアメリカでのラットの実験です。離乳直後のラットを二種類のケースで育てました。一つは、一匹づつ隔離して、刺激の少ないゲージで育てた場合です。もう一つは、数匹一緒に、しかも回転車やハシゴなどの道具を入れてある、刺激の多いゲージで育てた場合です。もうおわかりのように、後者のケースのラットの方が、脳の発育がよく、迷路学習でも成績がよかたのです。

さて、このような結果を踏まえながら、咀嚼という行為を考えてみましょう。幼児の生活の中で、非常に大きな比重を占めるものの一つが「食べる」という行動です。幼児のしつけは、きちんと食べる習慣から始めるといわれています。じつはこの「食べる」ということ、また咀嚼することが脳に大きな影響を与えるようです。

第一には、栄養の問題です。栄養だけを考えるなら、噛もうが噛むまいが、差は無いはずです。しかし実際はそうではないのです。

このことを考えるために、もう一度ラットの実験を取り上げます。

◇学習能力を向上さえるためには

同じ両親から生まれたラットを、生後三週間に離乳させ、二群に分けました。一方の仔ラットには、硬い固形の餌を与え、もう一方の仔ラットには、同じ成分の粉末の餌を与えて、5週間飼育します。

この結果、一方は、硬い固形食をしっかり咀嚼して成長した仔ラットです。またもう一方は、軟らかい粉末食をあまり噛まずに成長した仔ラットです。この二群に、迷路テストや条件回避学習を行わせました。これらの具体的な実験内容に関しては、また機会を改めて説明しますがから、今回本書では省きますが、結果的には、固形食のラットの方が、学習能力は優れていたのです。

よく咀嚼すると、脳細胞の代謝活動を盛んにさせ、脳の血液循環をよくするようです。このFGFには、記憶力を増進させて学習能力を向上させる働きがあるのです。

人間とラットを同一線上で述べることは出来ないでしょうから、結論を急ぐのは危険なのですが、咀嚼という行動が、脳の活動に何らかの影響を及ぼすことは、どうやら本当のようです。

よく噛むことが、頭を良くするようです。

参考文献 誰も気づかなかった噛む効用~咀嚼のサイエンス~ 日本咀嚼学会編集 窪田金次郎監修 朝日大学学長・船越正也テキスト分掲載 日本教文社 

2009年12月14日 (月)

ストレスとはなにか?3

本日も昨日の続きの3回目です。志賀泰昭先生の著書『噛み合わせと顎関節症の治療と予防』よりお届けいたします。

◇咬合異常と自律神経神経失調症

~咬合異常がストレッサーとなる~

自律神経が乱れることによって様々な症状が生じることを、一般に自律神経失調症といいます。自律神経失調症の多くは交感神経の亢進(異常な興奮)によります。

交感神経の興奮状態が続いているということは、脳と体が活動し続けいていることを意味します。交感神経の働きが活発なので血圧も頻拍数も上がってきます。これによって、高血圧になり、心臓の負担も増し、疲れやすくなります。また、交感神経は血液中の糖濃度を高めるので、交感神経の亢進が続くと糖尿病になる危険性が高まります。

交感神経と副交感神経はシーソーのような関係にあるので、交感神経の亢進が続くと副交感神経の出番がなくなり、体を休めて修復することが出来なくなります。すると、ついに神経に誤操作が生じて、目眩、耳鳴り、頭痛などの症状が現れてきます。

また、副交感神経は内臓を動かす働きが低下すると、胸焼けや食欲不振、腹痛、便秘・下痢などの胃腸障害が生じます。

自律神経失調症によると思われる症状はたくさんあります(志賀先生の本を参考にしてください)。ただし、自律神経失調症には明確な疾患概念や診断基準があるわけではありません。ほかの病気に疾患概念に当てはまらない場合に自律神経失調症という病名がつけられているという、曖昧な病気とされています。

自律神経失調症の原因としては、ストレス、夜更かしなどによる生活の乱れ、過労などによる脳の疲れ、更年期のホルモンバランスの乱れなどがあります。このうち最も多いものがストレスです。たとえ弱いストレスであっても、それが長期に及ぶと自律神経を乱すようになるのです。

咬合異常は、物理化学的なストレスとして自律神経を乱します。噛み合わせの微妙な変化が、歯根膜、咀嚼筋、顎関節などの感覚器官によって捉えられ、それがストレスとなって交感神経を興奮させるのです。

自律神経失調症は曖昧な病気ですが、咬合異常を治療した結果さまざまな症状が消失するが極めて多いのも事実です。次のような症状がある場合は、一度噛み合わせをチェックすることをおすすめします。

・頭痛、微熱

・耳鳴り、ドライマウス、喉の渇き、肩こり

・呼吸困難、胸の苦しさ、胸焼け、吐き気、嘔吐、動悸

・下腹部の不快感、下痢、便秘、残便感、残尿感、頻尿

・全身の倦怠感、食欲不振、しびれ、めまい、冷え性、多汗

・情緒不安定、抑うつ気分、イライラ、不安感、生理不順

参考文献  噛み合わせと顎関節症の治療と予防 志賀泰昭著 日東書院

2009年12月13日 (日)

ストレスとは何か? 2

本日も昨日の続きの2回目です。志賀泰昭先生の著書『噛み合わせと顎関節症の治療と予防』よりお届けいたします。

◇ストレッサーが様々な疾病を引き起こす~内分泌系の反応~

ストレッサーには物理化学的ストレッサーと認知的ストレッサーがあります。物理化学的ストレッサーとしては、寒冷、高熱、気圧変化などの環境因子、ケガや打撲や火傷、振動、騒音、そして咬合異常などがあります。

認知的ストレッサーとしては、人間関係などの社会的要因、悩みや心配ごと、不安、緊張、恐怖、怒り、悲しみなどの情動的要因があります。現代社会的な問題となっている「いじめ」は認知的ストレッサーの代表といえます。

ストレッサーが加わると自律神経を混乱させることはすでに述べましたが、ストレッサーは内分泌系にも影響します。内分泌系の中枢は、自律神経と同じ視床下部にあります。ストレッサーが加わると視床下部から指令が出て、視床下部の真下にある脳下垂体の前葉から副腎皮質ホルモン(ACTH)が分泌され、これによって副腎皮質から副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)が分泌されます。グルココルチコイドは、グリコーゲンの合成の促進、タンパク質の異化作用、抗炎症作用、過剰な免疫反応の抑制などをします。しかし過剰に分泌されると、高血圧症を進行させます。

また、ストレッサーに遭遇すると、副腎皮質からノルアドレナリンなど(これらをカテコールアミンといいます。)の分泌が増えます。アドレナリンが血中に放出されると、心拍数や血圧が上がり、瞳孔が開き、血液中のブドウ糖濃度が上昇するなどします。

ノルアドレナリンは、交感神経を活発にして心拍数を上げたり、脂肪からエネルギーを放出させたりして筋肉が敏速に動くようにします。さらには交感神経が高まるとエピネフリン、ノルエピネフリンが過剰に分泌し、冠動脈を収縮させ、血栓ができやすくなるほど重大な心臓疾患を引き起こしやすくなります。

ストレスによって、胃酸分泌と胃粘膜の抵抗力のバランスが崩れて胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こすことはよくしられていることです。

このように、ストレスは自律神経と内分泌系の両面から生体に影響を与えるのです。ストレスによって生じるとされている疾患は、循環系、消化器系、呼吸器系、神経、筋肉と多岐にわたっています。

明日へ続きます。

参考文献  噛み合わせと顎関節症の治療と予防 志賀泰昭著 日東書院

2009年12月12日 (土)

ストレスとはなにか?1

本日は、3回に分けて、志賀泰昭先生の著書『噛み合わせと顎関節症の治療と予防』よりお届けいたします。

◇刺激に対して体が反応する

咬合異常はヒトの体にとって大きなストレスとなります。そこで、「ストレス」とは何かを整理して起きましょう。

物理学では、物体に力が加わった時に生じる物体内の「ゆがみ」のことをストレスといいます。これは医学や生物学の分野でも同じです。したがって、一般には外部からの刺激のことをストレスといっていますが、正確には刺激に対する反応が「ストレス」です。

ストレスというとカナダの生理学者であるハンス・セリエ(1907~1982年)の「ストレス学説」が有名ですが、生理学の分野で最初にストレスという言葉を使ったのは、先ほど(志賀先生の本を参照してください)出てきたウィンター・キャノンです。

キャノンは、イヌに吠えられて緊張状態にあるネコの血液中にアドレナリンという交感神経の伝達物質がたくさん存在することを発見したのです。

緊張時間が発生して、闘うか逃げるかしかない状態では、心拍数が上昇し、瞳孔が開き、消化器の働きが抑えられます。キャノンは、生体がこのような状態になることを「ストレス」という言葉で表現したのです。

セリエは、外部から刺激を受けて緊張したり体にひずみが生じたりすると、これに対応しようとして体内で非特異的な生理的反応が起こるというのです。非特異的は特異的の反対語です。

たとえば、急に寒くなって震えるというように、ある刺激に対して常に一定の反応が起こるのは特異的反応です。これに対して、非特異的反応は、どのような刺激かに関係なく起こる反応です。

セリエはこの非特異的反応をストレスと呼び、その反応を生じさせる有害な外部環境因子をストレッサー(ストレス因子)と呼んだのです。そして、ストレッサーに対する生体の適応現象をセリエは「一般的適応症候群」といい、これには次の3段階があるとしています。

◇1警告反応期

体が連続的にストレッサーにさらされた時に緊急的に反応する段階です。まず、体温が低下し、血圧が低下し、血糖値が低下し、神経の活動が抑制され、筋肉の緊張が低下し、血液の濃度が上昇するなどの反応が現れます。

次いで、生体防衛反応が現れて、副腎が肥大し、胸腺・リンパ組織が萎縮し、血圧が上昇し、体温が上昇し、血糖値が上昇し、神経の活動が活発になり、筋肉の緊張が増加するなどの反応が現れます。

2抵抗期

持続しているストレッサーと抵抗力のバランスが崩れて、適応現象が安定している段階です。適応を持続するにはエネルギー(これを適応エネルギーといいます)が必要ですが、このエネルギーが消耗してしまうと適応力が低下して、次の疲憊(ひはい)期に移行します。

3疲憊期

抵抗力が失われてしまい、再び体温が下降し、胸腺・リンパ組織が萎縮し、副腎皮質の機能が低下するなどして、生体に大きなダメージを与え、最悪の場合には死に至ることもあります。

以上が、ハンス・セリエのストレス学説の概略です。

明日へ続きます。

参考文献  噛み合わせと顎関節症の治療と予防 志賀泰昭著 日東書院 

2009年11月29日 (日)

唾液の働き(口呼吸)2

本日も、昨日に引き続き、坂本貴史先生の著書『歯と口の悩みを解決する本』よりお届けいたします。

◇唾液を分泌を低下させる口呼吸

口呼吸をしていると、唾液の分泌が低下してしまいます。ふつうは無意識のうちに鼻で空気を吸って、鼻から吐きますが、最近は口から空気を吸って吐く人が増えてきました。口呼吸をしていても自分では気づかない場合が多いので注意が必要です。

◇ここがポイント

・いつも鼻がつまっている人

・いつも口を開けている人

・唇や喉が渇きやすい人

・歯ぐきの色が悪い人

・虫歯のある人

口呼吸をしている人には、このような特徴が多いようです。とくに、前歯の表面の一部が白い人や口臭が生臭い人は口呼吸の疑いがあります。

口呼吸が歯にとって危険な理由は、虫歯や歯周病になりやすくなってしまうからです。その理由は唾液に関係してきます。前にお話した通り、口の中の酸性度がpH5.5~5.7以下になると、歯の表面に当たるエナメル質のすぐ下からカルシウムやリンが溶け出します。

この状態を脱灰といいますが、しばらくすると、今度は唾液の力がは働いて酸を中和し(緩衝作用)、きれいに洗い流す(浄化作用)などをして歯垢の酸性度を中性にします。すると、次に唾液に含まれるカルシウムなどのミネラルが歯に沈着し、さきほど脱灰した部分が修復されます。この状態を再石灰化と呼びます。

つまり、口の中では食事のたびに虫歯ができはじめたり治ったりしているのです。しかし、口呼吸をしていると、唾液が分泌されてもすぐに乾いてしまうため、再石灰化もできず、細菌の活動も抑制しきれず、虫歯や歯周病を進行させてしまうことになります。

口呼吸をしている人には、さらに次のような特徴があります。

・自然に口が半開きになってしまう。

・前歯が飛び出していたり、歯にすき間が多い

・上下の歯のかみ合わせが逆になっている(受け口)

・いつも片側の歯で噛む癖がある。咬み合わせも悪い

・下唇が上唇より分厚い

・唇がカサカサに乾燥する

・朝起きると、喉がヒリヒリ痛い

前に記した特徴と合わせ、このような徴候があれば口呼吸を行っている可能性が十分にあります。

人間以外の哺乳類動物の場合は、鼻呼吸が普通です。人間の場合は口で呼吸をするので、扁桃腺炎やかぜなどの呼吸器の病気にかかりやすく、最近の子供にぜんそくが多いのも、口呼吸の影響ではないかという説もあります。

元・東京大学医学部口腔外科の西はあら克成博士による口呼吸を治すトレーニングを簡単に紹介しておきますが、もっと詳しく知りたい方は『呼吸健康法』(法研)をお読みください。

最も簡単なトレーニングは、シュガーレスのガムを噛むことです。この場合、口を閉じて噛むこと。近くにいる人にクチャクチャと音が聞こえるような噛み方はいけません。

これを毎日、1~2時間続けると、二週間くらいで効果が表れます。

また、口を閉じて噛むので、顔面表情筋の力がアップし、開きっぱなしだった唇が、少しずつ閉じやすくなってきます。そのほかには、かみ癖でないほうの側でリズミカルに噛むと、顔のひずみも少しずつ改善されて行きます。

口呼吸では、次のような原因で唾液の分泌が少なくなることがわかっています。

・あまり噛まずに食事をする

・鎮痛薬、血圧降下剤、利尿剤、向精神薬などを使用しているとき

・脱水症状を起こしたとき

・頭部の癌治療に放射線療法を用いた場合

・自己免疫疾患やHIV感染など

参考文献 歯と口の悩みを解決する本 坂本貴史著 法研  

2009年11月28日 (土)

唾液の働き1

本日は、2回に渡り、坂本貴史先生の著書『歯と口の悩みを解決する本』よりお届けいたします。

◇唾液の効用

唾液の中に含まれるアミラーゼは、血液中の血糖値の上昇を速め、食べ過ぎを防いでくれます。さらに、リゾチーム、ラクトフェリンなどは、口の中で細菌が増殖するのを防ぎ、ペルオキシダーゼはたばこのヤニや牛肉の焦げなどの発がん性物質の発がん毒性を抑えるといわれています。

◇ダイエットだけではない唾液の効用

唾液は肥満やがんの予防をするだけではありません。口や歯が健康でいられるためにさらに重要な役割を果たしています。

①食べ物のかすを洗い流す浄化作用がある。

②pHを一定に保ち、細菌の繁殖を抑えるpH緩衝作用がある。

③歯の表面に皮膜を作り、虫歯を防ぐ保護作用がある。

④抗菌作用がある。

などがそれです。ですから、唾液の分泌が少なくなると、虫歯や歯周病にかかりやすくなってしまうのです。

②のpHとは酸性度をはかる単位の事で、ピー・エイチ、またはペーハーと言います。普通蒸留水はpH7で、この値が「中性」です。これよりもpHが小さければ「酸性」、大きければ「アルカリ性」です。

ちなみに、pH5.6以下の雨を酸性雨といいますが、歯もpH5.5~5.7以下になるとカルシウムやリンが溶け出し、虫歯になってしまいます。

自律神経に支配されている唾液腺は、リラックスした状態で食事をすると、副交感神経が優位に働き、さらさらとした唾液を多く分泌します。

ところが反対に、イライラしたり、どきどきしたり、感情に起伏があると、交感神経が働き、ネバネバになり量も少なくなります。そのため、緊張すると食事ものどを通らなくなるのです。

唾液の量が多いほど、サラサラしているほど、今述べたいろいろな作用を発揮する力が高まります。まだまだ体を守る判断力を持たない赤ちゃんがだらだらとよだれを垂らしているのは、唾液にこんなすばらしい力があるからなのです。

明日へ続きます。

参考文献 歯と口の悩みを解決する本 坂本貴史著 法研  

2009年11月 1日 (日)

義歯

本日はアリソン・レイ、デービット・レイ共著の『歯と口腔』よりお届けいたします。

◇義歯

義歯とは入れ歯の事で、洗浄の際や寝る時には外せます。

一本の歯、あるいは全部の歯の代わりに入れます。義歯の主要な役割の1つは噛みきったりすることを容易にすることですが、実際はあまりうまくいかないことも多いです。

本物の歯のようにしっかりと噛みきることが出来ませんし、もぐもぐ噛んでいるとずれてしまうこともあるからです。

特に、吸着力と筋力の力だけで支えられている総義歯の場合は難しいのです。下の総義歯の場合は吸着力もなく、筋肉だけで支えられています。

義歯のもう一つの大事な役割は審美的なものです。失った歯の代わりに義歯を入れれば、素敵な笑顔が取り戻せます。歯を抜いた後、歯茎の穴に骨が新たに埋め込まれれば、顔や唇がより正常で若い形になります。義歯が小さすぎると顔や唇が「すぼんだ」ようになります。

◇義歯による痛み

義歯は口の内側をこするので痛みの原因になることがあります。時間が経つにつれ骨が治療賃でくると、義歯が緩んできますから、問題が生じたときは取り替えなければなりません。

新しい義歯も不快感の原因になることがあり、不快感が2,3日続くようなら、義歯を作ってくれた歯科医の所にもう一度行った方がよいでしょう。

たいていはちょっとした調整でよくなる場合が多いです。歯を抜いて義歯を作った場合は、ぴったり合っている期間は限られています。抜いた歯を支えていた骨がだんだん溶けてきて縮み口の形が変わってしまうからです。ぴったりあった状態を続け、唇や頬の形を保つには、規則的に、理想的には4,5年に1回、義歯を作り直すことが大切です。

◇義歯の衛生

義歯を付けている人、特に総義歯を付けている本当の歯が1本もノ残っていない人は、義歯が恥ずかしくて、四六時中つけっぱなしという人が多く見られます。

この場合、義歯床で口蓋が常に覆われていますから、口がとても不潔になります。一晩中義歯をつけたままにしていると口蓋が軟らかくスポンジ状になり、カンジダに感染することがおおくなります。これを防ぐためには、夜は義歯は外して、次亜塩素酸ナトリウム(商品名:ミルトン)や、義歯洗浄剤として売っている薬剤の中に浸しておきます。

また、口蓋や歯茎を軟らかいブラシと水で朝晩軽く磨いたほうが良いでしょう。

歯茎が刺激されてしっかりし、健康に保つ事が出来ます。義歯も装着する前にはいつも磨いた方がよいです。磨くときは石けんと水を使うのが最善で、歯磨き剤は研磨作用のため義歯のプラスティック(レジン)には向きません。

参考文献 歯と口腔 アリソン・レイ、デービット・レイ共著 一灯舎  

2009年10月25日 (日)

“過食の秋”避ける工夫は

本日は日本経済新聞 2009年10月3日分 『健康生活 NIKKEI PLUS 1』よりお届けいたします。

◇30回かみ満腹感得る

野菜や果物など、様々な食材がおいしくなる季節が始まった。これら豊富な材料に彩られる秋の食卓に期待は高まるばかりだ。一方で気になるのが食べ過ぎだ。秋の食材を楽しみながら、過食を防ぐコツを専門家に聞いてみた。

「秋になるといつも体重が増えて困る」と話すのは大阪在住の田中好美さん(仮名57歳)。好物はクリとイモ。

この季節を代表する味覚だけに「思わずスーパーなどで売っている甘栗や焼き芋などを買ってしまう」。

甘栗は100グラムあたり約220キロカロリー、焼き芋は同約160キロカロリー。主食の米飯と比べると、おにぎり1個分に相当する。

「家でテレビを見ながらついつい食べ過ぎてしまう」と秋ならではの悩みを打ち明ける。

過食とはどんな状態を指すのだろうか。女子栄養学の松田早苗准教授(栄養学)は「摂取エネルギー量の多さと消費エネルギー量のバランスがとれていない状態」と話す。簡単に言えば過剰なエネルギーの摂取が食べ過ぎというわけだ。

特に秋においしくクリやイモは「意外にカロリーが高いので食べ過ぎには気をつけて」と呼びかける。

では過食を防ぐためにはどうすればいいか。国立健康・栄養研究所の饗場直美・栄養教育プログラムリーダーはまず「よくかむことを意識すればいい」と助言した。

目安の回数は一口につき30回ほど。30回かめば「ほとんどの食品がかみ砕かれて細かくなる」。よくかむことで食事の時間はかかるが「食事をしている間に血糖値が上がって満腹感が得られ、食べ過ぎを防げる」と身体のメカニズムを踏まえた解説をする。

◇再度食べる悪循環

かむ回数がすくないと、当然「血糖値が上がりきる前に食事が終わる」(饗場リーダー)ことになる。これは満腹感を求め、再度食べるという悪循環に陥りかねない。特に肥満の原因になりやすいと言われる早食いの場合「一口に5回くらいしかかまずに飲み込んでいる。よくかめば時間がかかるので早食いも防げる」。

料理を口に含んだ後に、一度は箸を置くという動作を加える事も効果があります。「箸を持っていると次から次へと料理を口に入れてしまい、結果として食べ過ぎの原因になる」からだ。この方法は、肥満者に対する生活指導でも採用されている。かむことに集中しやすい利点もある。

こうした技術的な手技以外に食材や調理方法の選択が重要だ。まず気をつけたいのは油の多い料理。油は1グラムあたり9キロカロリーと、糖質やタンパク質の4キロカロリーと比べ摂取エネルギー量が多くなってしまう。具体的には「主菜に油を選んだら、副菜は油を使わない料理にする」(松田准教授)工夫や、サラダに使うドレッシングをノンオイルタイプにするなど、こまごまとした手技の積み重ねが大切だ。

◇繊維質多い食材を

繊維質の多い食材をとることも食べ過ぎには有効だ。「キノコなど食物線維の多い食材を選べば、よくかむことにつながる」(松田准教授)。

白米を玄米に替えたり、シリアルなら小麦の外皮(ふすま)を含むものにすることも効果がある。繊維質の多い食事はかむ回数が増える以外に「胃の中は消化液などの水分を含んでふくれやすく満腹感を感じやすい。エネルギー量もすくない」点でも優れている。

繊維質の多い食材が苦手ならば食材の調理法を生える手もある。そのポイントについて饗場リーダーは「食材を大きく固いものにすること」と説明する。例えば野菜スープであれば、この季節においしいジャガイモやニンジンなどの野菜をみじん切りにするのではなく「大きく切ったごろごろした野菜を使う」。大きく固い素材は、どうしても食べにくいことにつながり過食を防ぎやすいからだ。

食事方法と食材の選び方の改善に加え生活習慣を見直すことも過食防止には効果的だ。特に気をつけたいのが食事を抜くなど空腹時間を長く作らないことだ。仕事の忙しさのあまり朝食はむさぼるように食べてしまいがち。これは早食いにつながるほか、かむ回数の減少をもたらす。

◇毎日体重をメモ

毎朝の起床時など決まった時間に体重を量ってそれをメモすることも効果的だ。前日に食べ過ぎれば翌日の体重が増える、前日に運動すれば次の日は減るなど摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが一目で分かりやすいためだ。松田准教授は、日々の記録を手帳に記しておけば「数字で視覚的に訴えられるので、過食を抑えるように意識しやすい」と鼻hしていた。

◇野菜の摂取は1日350グラムに

食材選びには栄養のバランスも大切だ。バランスの良い食事とは「主食、主菜、副菜の取り合わせが基本」と松田准教授。主食はご飯やパン、麺類など、主菜や肉や魚や卵、副菜は野菜だ。

野菜の1日の摂取量については厚生労働省が350グラムと推奨している。1回でこの量を食べることは難しいので毎食に「生野菜のサラダや野菜を使った煮物など1,2品食卓に並べるように心がけて欲しい」と松田准教授。

ビタミンなどを含む野菜は健康にも不可欠で、かむことにつながる繊維も豊富。加えて生野菜などはかさが多く見えるため、見た目にも満足感があり食べ過ぎにも一定の効果がある。

カロリーが低い点なども食べ過ぎには有効だ。

2009年10月16日 (金)

食事風景が変わった現代日本

本日は、吉野敏明先生の著書『再生医療で歯並びを治す』よりお届けいたします。

◇「サザエさん」のような大家族が減り、食事風景が変わった現代日本

突然ですが、皆さんはどんなふうに食事をしていますか?Images

え、普通に食事をしているって?

はい、先ほどの章(詳しくは吉野先生の著書を参考にしてください)で、噛み合わせに問題はないと思っていても、意外と正常とは違いましたよね。食事の仕方といっても、噛み方や飲み込み方ではありません。っこでいう食事の仕方とは、食べる環境や姿勢、誰と食事をどのようにしているか、しかもいつしているかです。

テレビでおなじみの『サザエさん』の食事風景を思い浮かべてみてください。サザエさん一家は、ちゃぶ台を全員で囲み、正座しています。

波平とフネ、マスオとサザエ、タラちゃんの3世代に、タラちゃんの叔父にあたるカツオや叔母のワカメもいます。おまけにペットの猫のタマまでいる、大人数での食事です。

子供達が学校で給食を取るとき以外は、家族みんなで食事をします。

当然、その日に何かがあったのかを皆が語り合い、ときには叱られたり、ときには褒められたりしながら、テレビや本を見ないで、いわんやゲームなどもしないで、食事をするのです。

実はほんの三十年くらい前までは、日本中がこのような光景でした。学生が下宿すると、賄いのおばさんや下宿先の女将さんがご飯を作ってくれ、一見、一人暮らしのようでも、みんなで食事をとるように出来ていたのです。

これは日本が誕生したときから、いや、われわれ日本人の先祖が農耕を始めたときから、何万年も続いてきたことなのでしょう。

さて、現代の日本人の平均世帯数は2.56人です。ひとり暮らしが約30%で、核家族が約52%(いずれも2002~2008年の国勢調査から)です。

1986年の調査では平均世帯人数は3.22人ですから、20年間に約2割も家族の人数が減ったことになります。

となると、そうでない世帯、つまり大家族で暮らしているサザエさん一家のような世帯は、サザエさんのテレビ放送が始まったとき(1967年くらい)はまだ平均的な家族像だったのでしょうが(ちなみに原作の漫画の連載開始は1946年だそうです)、現在では100-(30+52)=18%と、かなり特殊な形態になってしまっています。

さて、世帯人数が減ってくると、当然一人で食事をする回数が増えてきます。一人で食事をすると、どのようなことが起こってくるでしょうか?

現代の生活はとてもせわしくなっています。食事も出来るだけ短時間に栄養価や質の高いものをとろうとする傾向にあります。スティックタイプやゼリータイプで、「エネルギーとビタミンはばっちり」のようなものがコンビニや駅の売店でもよく売っています。

しかし、自動車レースの「給油」ではないのですから、エネルギーの補給だけでは本来いけないのです。特に、子供や赤ちゃんや乳幼児にとってこそ、この問題は「超」重要なのです。

参考文献 再生医療で歯並びを治す 吉野敏明 ディスカバー携書 

2009年10月 1日 (木)

カミング30

本日は福島民報平成21年9月27日の『健康』の記事よりお届けいたします。

◇一口30回以上噛んで健康維持

厚生労働省の「歯科保健と食育の在り方に関する検討会」は、食事の際に一口三十回以上噛むことを目標とする「カミング30(サンマル)」という標語を掲げて、食べ方を通じた健康作りを促進するべきだとの報告書をまとめた。

小児期や成人期、高齢期と通して健康を維持するためには、よく噛んで食べることが重要だと訴えるのが目的。

一九八九年に提唱された、八十歳になっても自分の歯を二十本以上保つことを目指す「8020運動」をさらに推進する狙いもある。

検討会の座長を務めた昭和大学歯学部の向井美恵教授=口腔(こうくう)衛生学=によると、乳幼児がさまざまな食品を食べる際、二十~三十回噛むと安全に飲み込めることを示す研究データがあるほか、生え替わり時によく噛むと歯の発達が促されることが知られているという。

成人期では、よく噛むことで早食いや食べ過ぎを防ぎ、食欲を抑制するホルモンが分泌され、薄味や少量でも満足感が得られることで、肥満の予防につながる。

高齢期では、ものを噛む機能を維持し、もちなどを詰まらせる事故を防ぐ。

また、よく噛むと食材が細かく粉砕されて唾液(だえき)とよく混ざり、おいしさが引き出せるという。向井教授は「三十回噛めば、食事も味わえて安全性も確保できる」と利点を強調する。

ただ、食事中、一口ごとに噛む回数を数えるのは現実的ではないのも事実。向井教授は「飲み込む前に五回多く噛む。あるいは一口分だけ数えてみる。噛む回数を意識する機会をもって、よく噛む習慣を身につけてもらいたい」と話している。

2009年9月 3日 (木)

なぜ歯に色がつくの?

本日は、朝日新聞出版の『Q&Aでわかる「いい歯医者」』よりお届けいたします。

Q:なぜ歯に色がつくの?

A:食べ物などによる着色や加齢による黄ばみ、薬による変化なのです。

 ニッコリと笑った時にキラリと光る白い歯は、第一印象の好感度を上げる重要な武器。生活スタイルの欧米化ともあいまって、最近では白い歯を求める人が増えています。

しかし、「日本人の歯は、もともと欧米人のような白さを持っているわけではありません」とホワイトニングにくわしい昭和大学歯科保存学講座教授の久光久歯科医師は話します。

歯の構造は、いちばん外側にエナメル質があり、その下に象牙質、中心に神経や血管が通る歯髄があります。

エナメル質は大部分が半透明の硬い結晶で、象牙質は薄い黄色や黄色がかった茶色の組織、歯髄は赤色です。

歯の色は、おもにこの象牙質が透けたり、エナメル質を乱反射したりすることで白っぽい色に見えるのです。象牙質の色は人種により異なり、日本人は一般的に淡い黄色です。

さらに、自分の本来の歯の色よりも濃くなる原因がいくつかあります。

代表的なのが、歯の表面の着色です。お茶や赤ワイン、カレー、コーヒーといった着色性の食べ物を摂取することで、歯の表面にステイン(汚れ)が付着します。たばこのヤニも原因の1つです。こうした食べ物を食べれば食べるほど、たばこを吸えば吸うほど色は濃くなります。

もう一つは薬物による変色です。

乳幼児が、テトラサイクリン系の抗生物質を服用すると象牙質に黄色や茶色、グレーのすじが出来ます。

また、外傷などで歯髄が壊死したり、むし歯の治療などで神経を抜いた場合にも、象牙質が黒っぽく変色することがああります。

さらに、加齢も歯が変色する原因です。

「歳をとるとエナメル質を構成しているハイドロキシアパタイトの結晶が変化し、透明度が上がるために、その内側にある象牙質の色が透けて見えやすくなり、黄ばみます。しかも、年齢とともに、象牙質自体の色も濃くなってしまうのです」(久光歯科医師)

このほか、むし歯でも白斑が出来たり、黒ずんだりすることがあります。また、乳歯の打撲や乳歯を抜くときの機械的な刺激によって、永久歯のエナメル質の形成が部分的に不完全になり、白斑や褐色斑ができることもあります。

ですから、ただの黄ばみ程度ではない歯の変色があれば、歯科医院を受診し、変色の原因が何であるかを確かめる方がいいでしょう。

また、ステインによる着色は、歯のメインテナンス不足もあります。歯の健康を維持するためにも、禁煙や歯磨きの徹底など、生活習慣の改善が必要です。

一方、加齢などによる変色は、機能面では問題ありませんが、「歯の色がきになり、自然に笑うことが出来ない、自信がもてないといった、精神的な苦痛があるならば、治療により白くするのも1つの方法です。」と久光歯科医師は助言します。

2009年8月30日 (日)

口臭は病のシグナル?

本日は、日本経済新聞2009年8月22日分の『健康生活NIKKEI PLUS1』よりお届けいたします。

★口臭~心因性目立つが要注意~

8月も半ばを過ぎ、暑さで疲れがたまって来た人もおおい。不規則な食生活やストレスをため込むなどして体調を崩すと、口臭が発生することがある。

通常は一時的なものだが、長く続くような場合は原因の特定が必要だ。本当は臭っていないのに「自分は臭い」と思いこむ人もいる。専門家に対策などを聞いた。

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「打ち合わせ中に同僚が鼻の辺りを覆う。電車では隣の人が顔をしかめた。自分の息がにおっていると思うので見て欲しい」

口臭の問題に詳しい荻窪デンタルクリニック(東京都杉並区)の本間敏道院長にこう訴えたのは、診断時40代の女性会社員だった。簡易測定器で息を測定したところ、口の臭いの程度は、他人が不快と感じない「ノーマル」レベルにとどまり、歯もよく磨けていた。

本間院長によると、これは「口臭恐怖症の典型的な症例」。この女性会社員には口腔(こうくう)内のクリーニングをした上で、測定結果を示し、問題がないことを説明するカウンセリングを行った。その結果、女性はしだに納得し、自分の口臭を訴えることはなくなったという。

「心因性の口臭恐怖症の患者は、性格がきまじめだったり、職場で大きな責任を負ったりしているタイプの女性が多い」(本間院長)。

そもそも人間の嗅覚には、長時間かいでいると、そのにおいに慣れる順応反応があり、自分の口臭が不快なレベルかどうかを判断するのは困難という。

東京医科歯科大学歯学部付属病院息さわやか外来(東京都文京区)の植村正之医長によると、口臭は口の中の細菌が、はがれた粘膜や食べかすなどのたんぱく質成分を分解し、揮発性硫黄化合物を作り出すことで発生する。

★9割は口腔の汚れ

治療が必要となる病的口臭の場合、9割以上が口腔内の汚れや病気などに原因がある。むし歯や歯周病、多量の舌苔(ぜったい)の舌への付着、義歯の清掃不足、唾液量の減少などが原因だ。

口腔内を洗浄、殺菌し、口臭を抑える働きをする唾液。しかし、唾液の分泌量は加齢とともに減っていく。また、「ストレスをため込んだり、睡眠不足だったりという場合も分泌量が減る」(植野医長)。

規則正しい生活を送ること加え、食事時に食べ物をよく噛んだり、食間にはガムを噛むなどの方法で積極的に唾液の分泌を施すとよい。顔の筋肉を動かして唾液腺を刺激するというトレーニングも有効だという。

気をつけなければならないのは、寝たきりの高齢者の場合など。強い口臭を放置していると、それが危険な状態を招くことがある。

舌苔や歯周病の原因菌が肺に入り込み、肺炎を引き起こすからだ。高齢者では死亡に至るケース多く報告されている。一方、口腔内を清潔に保っても、口臭が続くような時は注意が必要だ。本間医長は「そんな時は消化器系や肝臓の疾患を疑うことがあり、専門医を紹介している」と指摘する。

健康な人から腸から血液に移動した臭い物質は肝臓で除去さえるが、肝機能が低下している人の場合はそのまま肺に回り、呼気と一緒に放出されてしまう。ほかに糖尿病や尿毒症、腎臓疾患、重度の蓄膿症なども口臭の原因になるという。

ごくまれだが、遺伝性の病気で口臭が発生することもある。先天的な分解酵素の不足が原因のトリメチルアミン尿症は魚臭症とも呼ばれ、魚の生臭いにおいが息だけでなく、汗や尿からも発生する。においを緩和することは出来ても、根治する方法はないのが現状だ。

★女性ホルモン影響

また、女性の中には、排卵周囲にあわせ、女性ホルモンの働きで歯ぐきの細胞が壊され、においが発生する人もいるという。

口臭はデリケートな問題だけに、たとえ親しい間柄でもにおいを伝える際には配慮することが必要だ。

植野医長はストレートに指摘せず「いつもと違うにおいがする」「体調がわるいのではないか」など「思いやりのある表現を心がけてほしい」と話す。

また、一定の生理的な生理的な口臭はだれにでもあり、起床時に最も強く、食事するたびに低下する。

口臭クリニックが全国の歯科大学付属病院や口腔外科のある大学病院が開設している。受診の際、口臭の測定や唾液のPH測定、口臭恐怖症など精神面のカウンセリング治療については、健康保険などの適用外となるので注意が必要だろう。

2009年8月14日 (金)

就業時間中の歯科受診

本日は、デンタルトリビューン紙2009年8月号よりお届けいたします。

◇就業時間中の歯科受診

~抑制か、許容か-企業のジレンマ~

《英国》従業員が歯科治療のための外出許可を申請しても、管理職の8人に一人はそれを認めようとしないことが、英国の医療保険会社Simplyhealth社の年次統計調査で明らかにまりました。

~●~●~20~25%は抑制の傾向~●~●~

Simplyhealth社が行った年次統計調査では、従業員が就業時間中に歯科を受診したいと申し出ても、13%の上司はその時間を勝手に決めたり、時には就業時間中の歯科受診を禁止する方針を取ったりしていることが示されました。

特に、リバプールは就業時間中の歯科受診率が高い地域の1つです。管理職の約25%が、従業員の歯科受診時間を厳密に規制しています。

また、カーディフでは従業員の約25%は就業時間内の歯科治療を認めてもらえない状況にあります。

ブライトンも同様であり、約20%の管理職が歯科受診は昼休み、退勤後もしくは休日に行うよう制限していると告白しています。

しかし、詳細な人事考課の際には、不良な口腔衛生状態は昇進においてマイナス評価の要因となっているといいます。

◇不良な口腔衛生状態は昇進に影響◇

実際に従業員の約75%が不良な口腔衛生状態は昇進に影響する可能生があると感じ、約10%の管理職は口腔衛生状態が不良、あるいは口臭などがある場合、顧客との商談の場には同席させないようにしています。

さらに、約33%の上司は従業員の昇進を見送る理由の1つに口腔衛生状態不良をあげていることが今回の調査で明らかになりました。

多くの会社は就業時間中の歯科受診を好ましくないと考えている一方で、半数以上の会社が福利厚生の一環として、歯科治療関連の補助を取り入れれば従業員の勤務中の職場離脱を大幅に抑制し、従業員のモラル向上にも有効だと指摘しています。

Simplyhealth社取締役James Glover氏は、「管理職はみな従業員と信頼関係を築きたいと考えているが、こうした現状では、長期にわたって職場での信頼関係を構築するのは難しいだろう」と指摘しました。

英国では従業員の勤務態度向上対策は非常に難しい問題であり費用もかかります。安定した企業経営を図るうえで、従業員に勤務時間内の歯科受診を許可することは有効な対策の1つと考えられます。

深刻な経済不況のため、調査対象の45%は治療費を受診抑制の理由としてあげています。

2009年7月 9日 (木)

白ワインでも着色亢進

本日は、デンタルトリビューン紙2009年7月号よりお届けいたします。

◇白ワインでも着色亢進

〈米国〉赤ワインが歯に着色を引き起こすことは以前より知られていますが、白ワインでも同様だといいます。

ニューヨーク大学歯学部教授Mark Wolff氏らは、白ワインの摂取によっても着色を来すことを、4月のIADR/AADR/CADR年次大会で発表しました。

同研究では18本のウシ抜去歯を用い、紅茶液に浸透する前に1時間赤ワインに浸漬した群(赤ワイン群)、紅茶液に浸漬する前に1時間白ワインに浸漬した群(白ワイン群)、紅茶液浸漬前に1時間水中に保管した群(統制群)の3群にわけました。

分光測色計による解析の結果、統制群と比して白ワイン群で顕著に濃い着色が確認されました。

同士らは、「コーヒーや紅茶と同様に、ワインに含まれる酸が歯の表面を粗造にし、着色物質が浸透しやすくなるのだろう」と考察しています。

もちろん、赤ワインのほうが、白ワインよりも有意に強い着色性を有している。赤ワインは白ワインに比べて着色生成物質(クロモゲン)の濃度が高いためだと解釈されています。

ワイン愛好家に対して、同氏らは、「着色を過剰に恐れる必要はない。ホワイトニング効果の高い歯磨剤で十分にブラッシングすれば問題はない」とコメントしています。

2009年4月30日 (木)

歯医者は敗者だ

本日は、島谷浩幸先生の著書『歯磨き健康法』の中の~まえがき~よりお届けいたします。

★歯医者は敗者

唐突ですが、我が国の現状では、「歯医者は敗者だ」といわれても仕方がないと思います。

口の中の二代疾患と言われるむし歯(デンタルカリエス、齲蝕)・歯周病(以前で言う「歯槽膿漏」)はいずれも口腔内細菌の感染症であることが知らされていますが、統計によると、40歳の80%を越える人が歯周病に罹患しており、さらにむし歯も含めると、90%以上に及びます(平成11年、17年厚生労働省歯科疾患実態調査。6年おきの実施)

本来、歯科医師というものは(医師もそうですが)、病気になった患者さんの「治療」だけでなく、病気になる前の「予防」も含めた、総合的な医療行為あるいは医療指導を行うべきです。

にもかかわらず、現状を見てみると、「一体、歯科医師は何をしているのだ?」と思う人もいるかもしれません。確かに、歯が痛いなどと言って来院する患者さんのむし歯の「治療」と「虫歯予防の「指導」は、大概の歯科医院はきちんとしていると思います。

しかし、多くの患者さんがどこか症状を持って、リピーターとして再来医されます。つまりそれは、『指導』その基本としての「歯磨き指導」に問題があるのではないでしょうか?口腔の自己管理である「歯磨き」が不十分な結果、新たなむし歯や歯周病になってしまっているのです。

歯科医師の中には、「歯磨きをきちんとしない患者さんが悪い」という一言で片付けてしまう横暴な先生ももしかするとおられるかもしれません。

でもそれは大きな間違いです。

「患者さんに、歯磨きの大切さをしっかりと伝えられなかった」先生が悪いのです。

患者さんに行う指導は、正しい歯磨きを覚えてもらうと同時に、継続的に実行していただけるものではないと意味がありません。それと併せて、定期的に歯科医院に来院して定期検診し、むし歯や磨き残しなどのチェックをするという「予防」の意識をしっかりと持ってもらうことが重要なのです。

痛みなどの症状があって顔をしかめて来院するリピーターは望みません。笑顔で定期検診を受けに来られるリピーターを一人でも多く作りたいものです。

一般的に、日本人の患者さんの特徴として、「痛みなどの症状が出てから、歯科医院に行く」ことが多いと言われています。逆に、歯科の医療先進国といわれるスウェーデンや米国などでは、「悪くなる前に、定期検診をきっちり受ける」人が多いそうです。ということは、我が国には「症状はまだ出ていないけども、むし歯や歯周病に罹患している人」が数多く存在する、つまり「潜在的な患者さん」がまだまだ隠れているのです。

むし歯や歯周病はある程度の悪い状態に進行しないと痛みなどの症状はでません。これを勘違いして「自分の口の中は、健康だ」と思う人も多いでしょうし、またあるいは「もしかするとむし歯や歯周病があるかもしれないけれど、歯医者は怖いイメージがあるから行きたくないし、まだ痛くもかゆくもないから、まあいいか」という人も、すごく多いと思います。

北欧や米国との「予防」に対する意識の差は、歯科医師の保険制度や国民性の違いもその理由として挙げられると思いますが、日本人の口腔疾患に対する「予防」への認識gあまだまだ低いことも大きな要因だと思われます。

口腔二大疾患と呼ばれる「むし歯・歯周病」は、ともに口腔内細菌の感染症です。つまり、口腔内細菌を排除すれば、罹らない病気なのです。

この「口腔内細菌の排除」の最も効果的で、かつ簡単な方法が、歯ブラシによるブラッシング(歯磨き)なのです。

「なんだ、歯磨きか」と今、心の中で思った方はいませんか?先ほどの統計にもあるように、40歳の時点で実に80%以上もの人が歯周病に罹患しています。このことは、きちんと歯磨きができている人が、10人のうちほんの1人いるかいないかでしかない、ということを示しています。

つまり、歯磨きを「している」けれども、実際にきちんと「できている」人は本当に少ないのです。

昨今の時代の流れとして、「予防歯科」に重きを置くようになり、歯磨きの重要性がクローズアップされて多種多様あ歯磨き剤や歯ブラシが市販されています。にも関わらず、きちんと正しい歯磨きを出来ている人が非常に少ない。便利なものであっても、うまくその「道具」を使いこなせていないのです。

ですから、まず正しい歯磨きをきちんと覚えることが重要です。また、歯磨きが出来る前提として、歯磨きをしやすい「口腔環境」の整備をする必要もあります。

例えば、歯並びが凸凹していたり、古い詰め物と歯質との境界に隙間があったりして口腔内細菌の「巣」になりやすい場所があれば、どれだけ歯磨きを丁寧に行っても、必ず磨き残しができます。そこで、歯並びを矯正したり、新しく詰め物を交換したりする「口腔環境」の整備が必要となります。

その上で、私が以前より提唱する効果的歯磨き法「スロー・ブラッシング」を行えば、かなりのむし歯や歯周病の予防や進行抑制が期待できるのではないか、と思います。

口中の健康は、楽しい食生活をもたらし、全身の健康へとつながっていきます。

参考文献 歯磨き健康法 島谷浩幸著 アスキー新書

2009年4月19日 (日)

加齢による変化2

昨日の続きです。

本日も戸田恭司先生、森下真行先生の著・編『口腔ケアでいきいき』よりお届けいたします。

6。顎骨

顎提の高さが減少します。歯を喪失した顎骨では歯槽骨(顎骨のうち、歯を支持している部分)が吸収されている骨量の減少を来します。60歳以上の人の下顎骨は20歳前後の若者に比べ、6割の外力で骨折するとの報告があります。

7。舌

味覚機能の低下や異常、舌炎を起こしやすくなります。また、舌表面の裂溝形成、乾燥傾向と舌乳頭の消失が高率となります。

舌運動の協調性が低下することにより義歯が合いにくくなります。味蕾(みらい)の数は個人差が認められますが、75歳以上では20歳代の三分の一しかないとの報告もあります。

8。味覚

加齢によって味覚がかわるかという疑問があります。化学的、非化学的なことは問わず、また個人的な感受性の幅の広さや嗜好を考慮にいれても、味覚の変化はつきない話題の一つです。

私たちは体験的に味覚が変化していくことをしっています。60歳を過ぎた頃から四つの基本味の感度が鈍くなり、とくに「塩味」と「苦味」が著明に低下します。高齢者が若年者といっしょに食事をすると味覚の違いを訴えるのはそのためです。

9。味覚嗜好変化

味覚生理学者によると、若年者や中年に比べ、高齢者は、高濃度の食塩、砂糖を好むようになるといわれています。その理由としては、前記のように高齢者は、若年者や中年と比較して濃度を高くしないと、塩辛さや甘さを感じないからではないかと考えられています。味覚は嗅覚とも関係していることから、食生活での嗜好変化はにおいとの関連で影響を考えていく必要があるように思われます。

10。味覚障害

「最近、味が薄くなったように思う」から「全然、味がしなくなったと思う」まで、中高年になると味覚障害が増加します。年間約14万人に味覚障害が発生しているとの報告もあります。高齢化の進む現状からすれば、将来、味覚障害がさらに増加する可能性が考えられます。

味覚障害者は50歳代、60歳代に多く、高齢社会におけるQOL(生活の質)を阻害する障害の一つとして問題提起されています。原因としては「薬剤性」、「亜鉛欠乏症」、「全身疾患」が半数以上を占めます。

味覚障害予防の観点から、亜鉛を多く含む食品を普段から食事のときに摂っておくことが必要です。食品100g中10mg以上亜鉛を含む食物を列挙します。

①嗜好品・・抹茶、緑煎茶、玄米茶、ココア

②魚介類・・かき、かずのこ、いわしみりん干し、煮干し、ゆでたらばがに、さざえ

③海草類・・あまのり、てんぐさ、寒天、あさくさのり

④豆類・・きなこ、赤色辛みそ

⑤種実類・・カシューナッツ、アーモンド、ごま、かぼちゃの種

⑥穀類・・麩(ふ)

味覚障害ははやく治療にとりかかれば高い確率で改善できるといわれています。(1ヶ月以内では80%)。異常が確認されたら早く専門医に相談されることをすすめます。

11.唾液腺

唾液腺は加齢とともに脂肪化や結合組織化が進み、分泌機能が低下します。さらに高齢者は、何らかの疾病をもっていることが多く、その場合薬の服用による口腔乾燥を来している(鉱区乾燥症)ことも少なくはありません。その結果、義歯の安定に重大な影響を与えることがあります。

このような場合は、唾液線刺激錠剤の服用や人口唾液を口腔内へ噴霧すると良いでしょう。また、粘膜にくっつきにくい義歯は、人口唾液を使用して湿らせてくっつきやすくするといいでしょう(いずれも市販されています)

参考文献 口腔ケアでいきいき 戸田恭司・森下真行 著・編 医歯薬出版

2009年4月18日 (土)

加齢による変化1

本日から2日間にわたり、戸田恭司先生、森下真行先生の著・編『口腔ケアでいきいき』よりお届けいたします。

◇加齢による歯・口腔の変化

1:歯・歯肉

①齲蝕、歯周病などによって歯は喪失します。しかし、加齢だけでは歯は失われません。年をとるのは自然の摂理ですが、歯と喪失はイコールではありません。

歯を失うのは自然なことではなく、病的なことです。現在では、国が提唱した自分の歯で食事が出来る状態を長く続けること、すなわち80歳で20本の歯を保つ「8020運動」がだいぶ国民に浸透しています。

歯の喪失は口腔ケアで予防することが出来き、80歳で20本の歯を保つことが実現可能です。

②歯先の咬耗

上下の歯が噛み合わされることにより歯先(咬合面や切縁)が自然に少しづつ咬耗して行きます。食生活(硬質食や硬異物混入など)や歯ぎしりにより「すりへり」速度が速くなるといわれています。

③歯肉の退縮

歯周病にかかっていたり、加齢現象により歯肉がやせてきて、歯の根が露出する状態を退縮といいます。歯と歯の隙間が広がったり、冷たい水がしみる知覚過敏の原因にもなります。

④根面齲蝕

歯周病や加齢により歯肉の退縮(やせる)が起きてきますと、歯根部が露出します。この部分は象牙質やセメント質で出来ており、エナメル質に比べ齲蝕が発生しやすくなります。

⑤楔状欠損

咬合力によって歯頸部に力が集中し、それがさらにブラッシングによって剥がされることにより楔状欠損が生じると考えられています。

2.口唇

口角炎、口唇炎が繰り返し再発しやすくなります。

3。咀嚼

『普通に噛める』グループと『普通に噛めない』グループに分け、老化目安調査の簡易法として「開眼片足調査」(目を開け、何分片足で立てるか)を調べたものです。明らかに「普通に噛める」グループの方が、老化が遅いことが分かりました。また、体重、握力なども「普通に噛める」グループが勝っていることが分かります。

4。摂食・嚥下

加齢と共に舌や頬、喉頭・咽頭の反射が鈍くなります。その結果、食塊形成や嚥下がスムーズに行かなくなります。また、脳血管、神経など中枢性の疾患により、摂食・嚥下機能の低下を来しやすくなります。

5。口腔粘膜

加齢に伴い、粘膜下の脂肪組織の減少、歯の喪失、顎提(歯が抜けた後の歯肉の部分)吸収により老人様顔貌となります。また、粘膜表面の萎縮により、平滑化→滑沢となります。

粘膜角化層の非薄化→慢性炎症→潰瘍→口内炎となりやすいことも加齢変化の一つです。

明日へ続きます。

参考文献 口腔ケアでいきいき 戸田恭司・森下真行 著・編 医歯薬出版  

2009年4月 3日 (金)

高齢者の歯の手入れ

本日はアリソン・レイ先生、デービット・レイ先生共著の『よくわかる 歯と口腔』よりお届けいたします。

☆高齢者の歯の手入れ

私たちの社会は大きくかわりつつあります。長生きになっただけではなく、高齢者が自分自身の歯を持ち続ける期間が長くなり、一生自分の歯で過ごす人も珍しくなくなりました。

しかし、健康な口腔を保つのは困難な人もいます。一番の問題は身体にそして知的な面でも衰えてくることによって引き起こされます。衰えによって、歯を磨いたり、健康的な食事をとることがどんどん難しくなることです。噛んだり、食べたりすること自体も厄介になり、これがさらに問題を悪化させます。

歯肉が時と共にやせてきて、歯頸部や歯根が露出することかた別の問題が生じます。歯根の表面はエナメル質の歯冠より軟らかく、むし歯にかかりやすいので、口腔の衛生状態が悪いことと相まって、高齢者は新たにむし歯にかかりやすくなります。

高齢者は義歯、特に総義歯をいれていることが多いようです。多くの人が30年以上前に、歯を一度に全部抜くのが一般的な治療だった頃義歯を入れたのです。一般に年を取ると歯肉がどんどん痩せていき、義歯はゆるくなり合わなくなってきます。でも高齢者は若い人のようには義歯を新しくしようとしません。合わなくなった古い義歯で何とか間に合わせようとします。

この状態は、加齢による粘膜表面の変化によってさらに悪化します。歳を取るにつれて粘膜は薄くなり傷つきやすく過敏になります。こうした状態は栄養状態が悪かったり、病気だったりすると一段と悪化します。さらに高齢者は唾液があまりでなくなりますし、このような症状を悪化させる利尿剤や坑うつ剤を服用していることが多いのです。唾液がたりないと義歯に問題が生じますし、むし歯や歯肉の病気などの口腔感染症にかかる危険性が高まります。

高齢者は多種多様の薬を投与されていることが多く、中でも鎮痛剤や血圧降下剤などは潰瘍を引き起こす可能性があります。もし痛みや潰瘍などの症状が生じたら、直ちに歯科医に見てもらいましょう。診断がなされて初めて病気に対処できるのです。また、万一の口腔ガンの可能性も排除する必要があります。

高齢者に対する具体的な介助は、口腔衛生を保つことで、もし必要なら歯磨きを手助けします。人によっては普通の歯ブラシより、電動歯ブラシの方が磨きやすいと思うかもしれません。

肉親の高齢者を介護しているなら、義歯を毎日ブラシと洗剤で洗うこと、夜寝る時ははずすことを念押ししてください。自分の歯がもう全然ない人でも、口の中を軟らかいブラシで規則的に洗ってきれいにするのは効果がありますし、健康的でバランスの取れた食事は粘膜の病気を予防します。でももし、問題があればすぐ歯科医に診てもらうことが必要です。また、1年に1回は定期検査をしてもらいましょう。

参考文献  よくわかる 歯と口腔 アリソン・レイ、デービット・レイ著  一灯舎   

2009年3月17日 (火)

カラーバス効果

本田直之さんの本を読んでいて、非常に共感できることがたくさん書いてあるので、著書は必ず読むようにしています。

昨日も『レバレッジ・リーディング』読み返していました。久しぶりに読み返したのですが、さすがに何度読んでも新しい発見があります。その中で、ちょっと歯科にも関係あるかもしれないとおもったことがあったので、すこし紹介します。以下に本田さんの全文です。

カラーバス効果とは?

読み始める前にこの本から何を得たいかをイメージしておけば、たとえとばし読みをしていても、大事なところに差し掛かったとき、何か引っかかる感じがします。

この感じをたとえていうと、電話帳とか時刻表から必要な情報を探し出すような感じです。もしも、電話帳や時刻表を目的も持たずに読んでいたら、どうなるでしょう。おそらく丸一日かかっても読み終わらないし、読むこと自体がものすごい苦行に違いありません。

しかし、目的があると、自分の持っている課題や目的と照らし合わせて、役に立つことを要領よく拾うことができます。なぜこんな事が可能なのでしょうか。

それは、加藤昌治さんの『考具』(阪急コミュニケーションズ)の中に出てくる「カラーバス効果」説で説明できます。カラーバス効果とは、次のようなものです。

たとえば朝、家を出る前に「今日一日で、赤い色のものを何個見つけられるかな?」と思う。すると街に出たとたん、世の中はこんなに赤があふれていたのかと驚くほど、ポストや赤い文字の看板、赤い花など、赤い色のものが目に飛び込んでくるのです。もちろん、一晩で急に赤いものが増えた訳ではありません。ただ、意識しているとそれが目につくと言うわけです。ちなみにカラーバスのバスとはBATHのことで、「色を浴びる」という意味だそうです。

私も、こんなことがありました。以前、ボルボのステーションワゴンを買ったときの話しです。妻とドライブしていると、彼女が対向車線を眺めながら、「なんだか最近、妙にボルボが増えたと思わない?」といいます。しかし、特にボルボが販売台数を延ばしたという話しは聞きません。つまり、妻はボルボに乗るようになったとたん、街を走っているボルボが目に入るようになったのです。これがカラーバス効果です。

こんな話しを聞いたことがあります。私の患者さんで、「歯が痛いと、なぜか、歯医者の看板ばかりが目に付くようになるのです」とのこと。これも一種のカラーバス効果なのでしょう。

私は、治療の際に、常に噛み合わせを気にしながら診療しているのですが、逆に全くかみ合わせに問題のない患者さんを見分けるコツを身につけることが出来ました。これは、しめたもので、噛み合わせ意外の原因だけを探し出せば、自ずと診断が見つけやすいのです。

毎日、何かに注目して生きていこうということなのかもしれませんね。

2009年3月 6日 (金)

くしゃみは鼻に、なぜ

本日は、松矢篤三先生、古郷幹彦先生の著書『のどちんこの話し』よりお届けいたします。

◇くしゃみは鼻に、なぜ

若い女性の「クシャン」というちいさな「くしゃみ(嚔)」はいかいも可愛いのですが、むさ苦しい男がばかでかい「くしゃみ」の後で、「クソー」とか「オラー」とか無理に声を出しているのは誠に下品な仕草で、国際的にもひんしゅくを買うと思うのですが、いかがでしょうか。

「くしゃみ」とは鼻粘膜の刺激が脳幹の「くしゃみ」の中枢に働いて呼気が勢いよく排出される反射行為です。鼻粘膜の刺激以外にも、光刺激などで「くしゃみ」を催すことがありますが、一般に「くしゃみ」は鼻腔内の異物を排出させる反射運動です。人前で不意に「くしゃみ」が出てあわてて口や鼻を押さえることがありますが、出る前にこの反射を抑えることも出来ます。また、途中で出なくなって、スッキリしない思いが残るようなこともあるでしょう。

気持ちの良い「くしゃみ」は、一度あるいは二~三度短く息を吸った後、口を開き一気に「ハークション」となります。この時、肺から出た空気は鼻のみならず、口にも分かれて出ることが多いのです。したがって恥ずかしいことに、「くしゃみ」と同時に鼻水が出ることもあれば、たんまで飛んで出ることもあります。

咳は呼気が鼻から出ないのに、なぜ「くしゃみ」は鼻と口に振り分けられて出るのか。しかも十分に意識をしないうちに、鼻中心の「くしゃみ」と、多分に口に振り分けたような「くしゃみ」にすみ分けられることが出来ているのはなぜなのか。こんな疑問をもったこおてゃないでしょうか。次のような面白い仕掛けがあります。

鼻腔内の異物を排出させるために、「くしゃみ」では咽頭から鼻腔に至る呼気のスピードが当然早くなければなりません。呼気の通過する通路、すなわち気道で呼気に抵抗を与えているのは、声門と鼻咽腔です。そこで、声門と鼻咽腔が同時に開大する必要があります。

声門を広げる役目をするのは咽頭の後筋という筋肉ですが、この筋肉が働いているときは、この筋肉から脳幹への情報によって脳幹は、「のどちんこ」(軟口蓋)を下垂させ鼻腔への通路(鼻咽腔)を拡大するようにという命令が軟口蓋の運動核に伝えられ、鼻咽腔も閉鎖しない状態が保たれるようになっています。

これによって、「くしゃみ」では肺からの呼気が勢いよく鼻腔を通過することができるのです。

ところで、軟口蓋の下垂時に軟口蓋と咽頭蓋が重なり合って、口への通路が遮断されている動物では「くしゃみ」も呼気はすべて鼻にでることになります。しかし、人では軟口蓋が下垂している状態でも咽頭蓋との間には空隙があり、この部を舌の奥を使って完全に閉鎖しないと「くしゃみ」は口にも呼気が出ることになるのです。

「くしゃみ」の鼻と口への振り分けは舌の位置によるそうです。鼻に「こより」をいれて実感してみてはいかがでしょうか。

参考文献 のどちんこの話し  松矢篤三 古郷幹彦 著 医歯薬出版 

2009年3月 4日 (水)

口呼吸の弊害

本日は、西原克成先生の著書 『歯はヒトの魂である』よりお届けいたします。

◇「よい歯コンクール」1等賞だった女子高生

最近、関東のある県下で小学6年生の時に「よい歯コンクール」で1等賞になった方が、アトピーだらけで赤ら顔の女子大生となって、私の診療所に出っ歯と叢生(ごちゃごちゃの歯並び)と開口(奥歯が噛み合っても前歯が上下噛み合わず、いかの天ぷらがころもしか噛み切れない状態)で受診しました。

大学病院を受診したら手術で治す他、治療法はないと言われたそうです。よい歯コンクールでは、虫歯が無いばかりではなく、歯ならびも左右対称で、上下ともきれいに並び、歯列弓も日本人の標準として上下顎とも放物線を描かなければなりません。噛み合わせも上顎の歯列がきれいに下顎を覆うのが理想です。この女子大生は、12歳時に理想的な歯並びで歯の病気も全くなかったのに、18歳で大学に入学した時には、虫歯が無いだけで、歯型ががたがたになったうえに開口で、おまけに顔が真っ赤なアトピーになってしまい、背骨も歪んでいました。

一体なにが原因でしょうか?これは中学に入って行った部活動のバスケットボールが原因です。

この女子大生は小学六年生までは実に健やかに育ったのですが、中学の部活で、口呼吸、片咬み、悪い寝相の三つの癖がついてしまったのです。テニスやバスケット等たいていのスポーツでは、常に左をむいている姿勢が多いため、ねじれ顔となります。

彼女はそれまでの正しい鼻呼吸の習慣が、でたらめなスポーツ指導によって口呼吸に変わり、同時に過度な運動による過労で寝相も悪くなり、うつ伏せ寝か横向き寝のために睡眠中に口呼吸が常習化したのです。横向きかうつ伏せ寝では下側になった鼻腔が鬱血してふさがって口呼吸になります。口で呼吸が出来るのは哺乳類では1歳以後の人類だけです。これは600万年前に言葉を習得したための人体の最大の欠点です。歯型が駄目になる原因のもっともたるものが、以外に思われるかもしれませんが、この口呼吸なのです。

参考文献 歯はヒトの魂である 西原克成著 青灯社

2009年2月 9日 (月)

口が達者な高齢者は脳も達者

本日は、斉藤滋先生の著書『かむ力生きる力』よりお届けいたします。

◇口が達者な高齢者は脳も達者

年をとってもぼけたくないし、寝たきりにもなりたくない。高齢者の現代では、誰もが願う切実な思いです。

人が生きる活力を得るために大切なことは、食べること、しゃべること、味わうことです。これらすべて口の機能に関わることで、いつまでも口を不自由なく使えることは、人の生き甲斐の一つです。どんなに年をとっても、口だけは達者でいたいですね。

高齢者が寝たきりになるきっかけの多くは、何らかの原因で入院して、入れ歯をはずされ口から食事が出来なくなったり、点滴栄養補給になることがあげられます。このような状態になると、口からの刺激がなくなり、脳の血流が低下し精神活動意欲をなくしてしまうのです。

逆に、寝たきりでいた人が、入れ歯を装着して少しでも自分の口から食べる努力をしたことで、徐々に体力と気力が回復して、数ヶ月後には起きあがれるようになったという例は数限りなくあります。口から食べることは、脳に対する刺激の入力の一つなのです。

ことに、体の各部からの感覚情報を受け取る大脳皮質の感覚運動野・補足運動野・連合野などは、その3分の1が口やその周辺からの感覚入力を受けています。つまり、口やその周辺からの情報は脳に入力され、身体活動の重要な役割を果たしています。

口が元気な高齢者には痴呆症も少ないのです。食は生きる意欲の入り口です。いつまでも自分の口でしっかり噛んで味わうことが、長生きの秘訣です。

参考文献 かむ力生きる力 斉藤滋著 デンタルダイヤモンド社

2009年1月21日 (水)

年間14万人にもおよぶ味覚障害

昨日からの続きです。本日も高津先生からの著書よりお届けいたします。

★年間14万人にもおよぶ味覚障害

昨日は、味覚のお話で終わりました。しかし、その本当の問題は、最近の子ども達の間でこの味覚障害が増えていること。日本人の味覚障害者は、年間14万人にものぼると言われています。

原因はさまざまですが、主に亜鉛不足が原因で、味蕾細胞の新陳代謝が行われなくなると、味覚異常が起こると考えられています。食品添加物や保存料は、体内の亜鉛を排泄してしまう働きがあるので、おそらく食生活の影響も大きいでしょう。

また、味蕾細胞は、刺激を受けるたびに機能が低下し、ほぼ一ヶ月に一度の割合で生まれ変わりますが、刺激が強い化学物質によってダメージを受けることから、薬の副作用による影響も軽視できません。

その他の原因としては、心因性風味障害、口腔疾患、風邪、あるいは女性が妊娠した際に、食べ物の嗜好がかわると同時に、味覚障害が起こる場合があります。

いずれにしても、現代人のように偏った食生活や不規則な生活を続けていると、それだけ味覚障害の可能性が高まることは確かです。

味覚障害は、活発な新陳代謝が行われる肌や髪の毛などに影響が出ると同時に、立ちくらみや、体の全体の抵抗力が低下する免疫不全をも引き起こします。

このような症状が起こる前に、真っ先に影響が表れるのが舌です。

その意味でも、舌は、体の健康状態を示すバロメーターだといえるのです。

ちなみに、味覚障害は、亜鉛を多く含んだ抹茶、緑茶、煎茶などを使用することで、かなりの比率で治るといわれます。他に、亜鉛を多く含まれている食品としては、牡蠣、数の子、玄米茶、ココア、煮干し、タラバガニ、サザエ、寒天、海苔、きなこ、カシューナッツ、アーモンド、胡麻、麩(ふ)などです。

参考文献 現代喫茶養正記 高津正利著 文芸社