歯科用インプラントの治療に携わって20年以上経過しましたが、当初では知り得なかった事が経験によりだんだんと私の中で分かってきた事があります。
毎回このブログで私の治療の考え方を説明していますが、「その歯が駄目になってしまった原因の除去をせずに歯の治療をしても、また同じ原因で駄目になる」という事です。
インプラントに関して言えば、「抜歯に至った原因」をそのままにして、インプラント手術を行っても、長くは持たないということです。
インプラントが駄目になる4大原因としてあげられるのが、「歯周病」「喫煙」「内科的疾患」「歯ぎしり・食いしばり」です。
患者さんが自分の口腔内のブラッシングによる歯肉の管理が上手く出来なければ、出来る様になるまでインプラントの手術は延期した方が良いし、禁煙する、もしくは喫煙の本数をコントロール出来る様になるまではインプラントの手術を延期もしくは中止(必ず悪い症状が出る可能性があるので)。内科的疾患の場合は内科医と連携して手術のタイミングを計る。歯ぎしり、食いしばりが原因の場合はマウスピース治療および、矯正治療により適切な噛み合わせを獲得してから手術を行う・・・・などです。
とても面倒くさいと思うかもしれませんが、これらの要因を無視して、強行に手術を行ってしまうと、後々大きな問題を抱えて、かなりのストレスとなり、「インプラントなんかしなければ良かった」という事になりかねません。
では、上記の問題をクリアしてインプラントが成功したとします。それで一件落着ではありません。
インプラントにはやっかいな問題がまだあるのです。それはインプラントが顎骨と直に結合していると言うことです。
「そんなの当たり前じゃないか、インプラントなんだから」
と思うのですが、ここで、天然歯の構造について考えてみたいと思います。
天然歯は骨との連結には「歯根膜」という天然のスプリング(車でいえばダンパーみたいなもの)がついています。このスプリング(歯根膜)が過酷な口腔内環境、特に歯ぎしりや食いしばりの脅威から歯を守っているのです(歯の痛みが出るとすれば、まずこの歯根膜です。痛いから直ぐに神経を抜いてしまうのは間違いの様な気がします)。
しかし、インプラントにはこの「歯根膜(スプリング)」がついていないので、歯ぎしりや食いしばり、強い噛みしめの力を直に受け止める事になります。起きている時の食事は、「意識」というブレーキが効いているので問題ないのですが、就寝時には無意識の噛み込みが出るの、インプラントには相当な力がかかります。インプラントには「微少動揺」という微少な揺れ(ゆれ)がかかり、スプリング(歯根膜)の無いインプラントは、支えている骨を少しずつ削るように破壊して行きます。
これは、問題の無いインプラントにも発生する問題です。つまり、歯周病、喫煙、内科的疾患、酷い食いしばりの無い患者さんでも常に起こっているのです。
だから、インプラントにはかならず、メンテナンスとマウスピースによる歯の保護が絶対不可欠なのです。
・・・・・と、私は考えています。

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