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しろくま先生のブログ
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2016年6月 4日 (土)

親知らず抜歯に関する私の考え方

私の歯科医師人生の方向を決めてくれたのは、実は私の姉と義兄です。
私のは女子大を卒業してOLをしていたのですが、一念発起して歯科医師となった努力の人なのですが、彼女が未熟な私をとても心配してくれまして、色々と世話をしてくれました。
開業する前に、私の治療の基礎となった噛み合わせの研修会に参加させてくれたのも姉と義兄ですし、今日これからお話する親知らず抜歯を訓練してくれたのも姉です。
私は、大学院中から開業するちょっと前まで姉の歯科医院で働かせて貰っていました。その時、親知らずの抜歯を沢山経験させてもらったのです。今考えると自分の未熟な技術でだいぶご迷惑をおかけしたと思うのですが、そりゃもう抜きに抜きまくりました。その時にどうしてうまく抜けないのだろう。。なぜこんなに時間が掛かるのだろうと一人悶々と考えて試行錯誤を繰り返し、自分なりの親知らず抜歯技術を確立出来ました。この経験が口腔外科に自信が持てましたし、難しいインプラントやその他の外科手術にも精通することが出来たと思っています。本当に姉と義兄に感謝感謝です。


親知らずの治療というと一般的に多いのは、智歯周囲炎といって、少しだけ出ている親知らずの周りの歯肉が炎症を起こしてしまうという症状です。
もともと歯並びというのは、たくさんの法則(それこそ沢山、、噛み合わせ等々)の上で歯が並んでいるのです。その歯並びの中には歯の清掃作用というのも含まれます。つまり歯垢・歯石が溜まりづらい歯肉の形態をしているって事なんです。少しだけ出てしまった親知らずは、そんな繊細で緻密な歯並びの法則なんか関係なく、「そんな法則知るかよ〜〜〜」ってな具合にニョキッと出てきますから、当然清掃性のかけらも無く、歯肉炎に掛かり痛みを伴い腫れ上がります。
あと、よくある症状としては、上顎の親知らずが萌出(生えてきて)してきて、下顎の親知らず周囲の歯肉を傷つけ擦過傷を作ってくるというケース。患者さんは、「下の親知らずが痛いんです」って言う場合の半数はこのケースが当てはまります。このケースの場合は、痛い下顎の親知らずを抜くのでは無く、上顎の傷を作ってしまった親知らずの抜歯を選択する事になります。



先日、私がこのブログでシークエンシャル咬合を勉強して診療の幅が広がったという話を書きましたが、この親知らず治療の考え方の幅もかなり広がりました。
ここからは下顎の親知らずの話です。
中学一年生頃までに永久歯すべてがほぼ生えそろいます(もちろん例外もありますし、先天性欠損もありますので、絶対ではないのですが・・・)。その後、親知らずが歯胚(ちょうど花の球根のようなもの)という感じで歯肉内に現れて急成長を行います。これが永久歯の歯列に悪い影響を与えてしまうのです。
例えが悪くて非常に恐縮ですが、永久歯が電車の座席にきちんと座っているとすると、後から乗車してきた親知らずがその座席に無理矢理座り込んでしまうといったイメージでしょうか?そのため、ドミノが倒れ込むように口の前方に倒れ込んでいきますから、前歯が叢生(凸凹、グチャグチャ)になったり、開口(口が閉じられない)といった症状になってしまうのです。これを「ポステリアーディスクレパンシー」と呼んでいるのです。矯正が終わったのに後戻りが始まってしまったり、歯列が乱れてしまった患者さんの相談を受けることがあるのですが、小臼歯が抜歯されていて、親知らずが残っているケースが非常に多いです。
親知らずは成人してからも長期間動きを止めませんから、歯並びが変わってきたと訴える患者さんも非常に多いのです。
きちんと歯列の中にきれいに親知らずが収まっているケースは無理して抜歯する事はありませんが、それ以外のケースは遅かれ早かれ必ず悪い症状を呈する事が多いですから抜歯をおすすめいたします。
出来れば、ジャームエクトミーという治療法なのですが10歳前後で親知らずが歯胚のうちに抜歯することをお進めいたします。親知らずは歯胚の頃は下顎の場合ですが、骨の上の方にあります。それが年齢を重ねるうちに骨の下の方(深い方)へ移動し、やがて歯根を形成し神経に近いところまで成長してきてしまいます。成長が完成してしまうと抜歯するのにも大変ですし、抜歯後に顔が腫れ上がる可能性もあります。ですので、歯胚が上の方にある10歳前後にエックス線で親知らずの歯胚を確認して、抜歯の相談をした方が良いかもしれません。
上顎の親知らずの場合は、ちょっと下顎の親知らずとは考え方が違います。
上顎の親知らずは計画性をもって抜歯の計画を立てる必要性があります。場合によっては、第二大臼歯を抜歯して親知らずを第二大臼歯の場所に生えさてやるということもあります。上顎の親知らずの抜歯計画を失敗すると「シザースバイト」という特異な噛み合わせになってしまいます。シザースとはハサミのことなのですが、上下顎がしっかりとかみ合わず、ハサミの様にすれ違いのような咬合になってしまうのです。これは治療がとてもやっかいだけでは無く、歯の清掃性がかなり低下しますので要注意です。
まとめになりますが、虫歯になりやすいのは、清掃性が悪くて、噛み合わせが悪い時に多いのです。やはり親知らずが生えて、歯列が崩れて清掃性と噛み合わせが低学年の学生のうちから起こってしまうと、どうしても虫歯が多い成人になってしまいます。ほんの小さなことですが、毎日多くの患者さんを診ていると親知らずの抜歯というのは小さい頃から親が責任をもって行うべきものだなと思うのです。
現在では、CTを持っている歯科医院も増えてきましたので、一度検査してみるのもお進めです。
私も親知らずを抜歯する時は、CT撮影は必須になってきました。親知らずの位置がきちんとしっかり分かりますので、正確に抜歯出来ます。
正確にというには神経や大切な器官を傷つけにということです。
先日も私の二人の子供たちもX線写真を撮影して、親知らずと噛み合わせのチェックを済ませました。これから定期的にチェックを繰り返したいと思います。
小さいうちなら、小児矯正も難しくないのでまだまだ取り返しがつきますので。
今日はだいぶ長くなってしまったのでこの辺で。
また、今後もこんな歯科医療的な事も書いてもいいかもしれませんね。

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