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2007年5月20日 (日)

消化は口から始まっている

本日は、宮田隆先生の著書「老けない人は歯がちがう」からお届けいたします。

「歯はなんのためにあるのか」といえば当然、食べ物を噛み砕くためにあります。

食べ物の存在は本来体にとって“異物”となります。人間の体には、自分の体の構成要素でないものが侵入してくると、これを異物とみなして攻撃する防衛機能が備わっています。

そこで、消化器官は、唾液や胃液、胆汁などに含まれる消化酵素で食べ物を分解することで、食物という異物がもっている抗原性(アレルギー反応などを起こさせる性質)をなくして、「栄養素」という生きていくうえで不可欠の物質へと変えていくのです。

「歯を一生守る」必要があるのは、まさにこのためです。歯を守ることは、生命を守ることに直結しているからです。

毎日、食事のたびにいちいち歯を磨いたり、免疫力を高めて歯周病や虫歯にかからないように努めるのは、すべて咀嚼のためです。より高いレベルで健康を維持して、若さを保ちたければ、しっかり咀嚼する(=栄養を取り入れる)ことが肝要なのです。

咀嚼の役割は、ただ飲み込みやすいように小さく砕くだけではありません。それと同じくらい大切な働きとして、唾液と食べ物をよく混ぜ合わせ、食べ物に化学反応を起こさせる役割があります。

その意味では、歯は、胃や腸と連なる消化器官の一部なのです。

味覚や咀嚼運動が合図となって、舌下腺、顎下腺、耳下腺といった唾液腺から唾液がでています。この唾液が食べ物と混ざると、消化がスタートします。

米などを食べているときに分泌される唾液には、α-アミラーゼという消化酵素が含まれており、炭水化物を麦芽糖に分解して、胃腸で吸収されやすい形に変える働きがあります。

米をはじめとする炭水化物が噛めば噛むほどうまくなると言われるのは、口の中で、炭水化物が糖に変わるためです。

食事中や空腹時に出される唾液は、通常よりネバネバとしています。これはムチンという粘度のある成分が多く含まれるためです。

ときとして食べ物には、辛み、苦み、熱さ、冷たさなど、さまざまな刺激があります。胃や食道の粘膜はデリケートなので、これらの刺激が繰り返されると、組織が傷ついて潰瘍などの原因となることもあります。

ムチンは、食べ物をオブラートのように包むことで、食べ物が胃や粘膜に刺激を与えるのを防ぎ、飲み込み動作をスムーズにさせる役割があるのです。

辛いものや苦いもの、すっぱいものは、思わず素早く飲み込んでしまいがちですが、良く噛んで、唾液と絡ませれば、胃腸の粘膜が荒れるのを防ぐことが出来ます。さらに、唾液には、食品中の発ガン性物質や細菌を抑制する働きも備わっています。

よく噛めば、体に有効な栄養素をより吸収しやすくして、体に有害な物質はぐんと減らすことができます。同じ食べ物をとるのでも、よく噛んだ人と、噛まない人では、からだに取り込まれる成分がまるで違ってくるのです。

唾液による消化は、胃に移ってからも20~30分間にわたり続いています。つまり、咀嚼が不十分で唾液が食べ物によくからんでいなければ、それだけで胃腸の仕事を増やして、負担をかけることになります。

咀嚼という消化の第一段階でのつまずきは、消化活動に最後まで影響を与えます。十分に咀嚼されていない食べ物の成分は、小腸での吸収率が低下するともいわれています。

健康のために、どんな食べ物を選び取るかも大切ですが、体にどう効率的に取り込ませるかも同じくらい重要なことなのです。

その鍵は、歯によって行われる咀嚼にかかっています。

参考文献 老けない人は歯がちがう 宮田隆著 草思社

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