夜間の口の動きは
私が今まで教えてもらった先生のほとんどが、口を揃えていうことがあります。
「歯科の病気の原因が細菌のバランスと力(咬合)のバランスが崩れたとき」というものです。
口の中の細菌は、悪い細菌を食べてくれる良い菌もいるので、すべての菌を殺菌してしまうと、これもまた具合が悪いのです。バランスが大事なのです。
もう一つ、大事な要素は力(咬合)のバランスです。
人は生まれてきたときから、徐々に歯が生えてきてその人に合った噛み合わせ(力のバランス)が構築されていくのですが、虫歯になったり、歯を何らかの原因で失ってしまったりすることで、その人本来の口の中の力関係が崩壊していきます。
その崩壊により、他の歯によけいな力が加わり、口の中のバランスが崩れ、調子が悪くなってしまうのです。
しかし、きちんと口の中のケアをしているのにもかかわらず、顎(あご)の調子が悪くなったり、歯の調子が悪くなることがあります。
その最大の原因といわれているのが、「歯ぎしり」です。
歯科の中では歯ぎしりにはいくつかの分類があります。
・ブラキシズム
一般的には睡眠中に行われる歯ぎしりとして定義されていますが、アメリカの咬合学会のなかでの定義は「昼間あるいは夜間の顎口腔系の非機能運動または異常機能」となっており、歯に負担を与える悪い口の中の癖全般になっているようです。
・クレンチング
上下の歯を押しつけることを意味します。要するに噛みしめのことです。歯ぎしりと異なる点は歯ぎしりの音がしない点です。
クレンチング(噛みしめ)は昼夜を問わずおこりますが、噛みしめが強いことが多いので、顎関節や補綴物(銀歯、金歯、作り物の歯)に多大な損傷を与えます。
このクレンチングとブラキシズムは一体どのくらいの頻度で見られるのでしょうか?
歯ぎしりの患者さんからとった問診票を調べた研究があります。
夜間のブラキシズムの出現率は8~16.1%、昼間のブラキシズムを含めると8~34.2%であると報告されています。
性差については、ブラキシズムには性差は無いとするものや、女性は夜間のクレンチングが多いなどというデータもあります。
小児の発生率もほぼ成人と同じであり、年齢差では20~50歳がもっとも発生率が高く、年齢と共に減少する傾向にあります。
しかし、ほぼ毎夜一定してブラキシズムを行う者、一過性(ときたま)ブラキシズムを行う者がいること、音を生じないブラキシズムがあること、ブラキシズムには日間変動があることなどから、ブラキシズムの程度や状態を性格に把握することは困難であるとされています。
またブラキシズムが人に指摘されて気づく場合が多く、人から指摘されることのない環境に生活する者のブラキシズムの有無は見つかりにくいと言われています。
ブラキシズムによるさまざまな影響
- 歯の破折
- 咬耗
- 知覚過敏
- 歯の動揺
- 修復装置の脱落、損傷
- 筋緊張型頭痛
- 顎関節症(クリッキング、顎関節痛、退行性関節疾患)
- 筋痛、疲労
- 咀嚼筋(口を開け閉めする筋肉)のこわばり
- 筋肥大
- 筋筋膜痛
このように、「食いしばり」には多くの弊害があります。ご自分で原因不明の不快感がある場合は疑って掛かってみる価値はあるかもしれません。ナイトガードのような予防器具もあります。お近くの歯医者さんでご相談下さい。
自分の歯ぎしりは経験ないとおもいます。
他人の歯ぎしりは金属音の嫌なイメージがあります。
毎日ですと、好い事はないわけですね。