歯の歴史6
近年では虫歯の原因は既に解明され、もはや治療から予防の時代へと移り変わって行くのですが、その昔、近代文明が表れていない昔には、「虫歯」の原因はどんな事が考えられていたのでしょうか?
1:古代バビロニアでは・・・・
古代バビロニア(紀元前2000年頃)では、歯痛を伴う疾患(病気)は加持祈祷で治す方法が盛んに行われていたそうです。
ことに齲蝕(虫歯)やそれに伴う痛みは、歯を食う虫(歯虫)によって起こるとも考えられていたようです。
この想像物である歯虫の名が世に現れたのは紀元前20世紀の前半頃のことと言われています。バヴロニア人は歯痛が起きたときは、アヌ神(Anu)に「歯虫祓い」の呪文を3度唱え、その後、ヒヨスの実と乳香を混ぜた物を虫歯の穴に詰める事によって痛みを退散さたと言います。
もっとも、ヒヨスの実や乳香は知覚麻酔作用があるので、今から考えても合理的な処置だったようです。
このように、東方諸国の医師は齲蝕は「歯虫」によって起こると考えられていたのです。また、歯痛の治療法は、この虫を退散させるためにヒヨスの実の薫蒸法や殺虫方法が盛んに行われていたようです。
2:アラビアでは・・・・・
9世紀の頃ペルシア人でアラビアで医師として活躍したラゼス(860~932年)は、齲蝕は骨疸とを同じ物とみなし、その病理進行が隣接歯に蔓延することを防ぐために、虫歯の穴に乳香と明礬(みょうばん)を混ぜた物を埋めました。
このように歯牙治療後、虫歯の穴の永久充填(埋めること)を創案したのは彼が初めてです。
アラビアの医師アヴィセンナ(980~1037年)は、歯痛は「歯虫」という小虫が歯質を食うために起こるのであるから、歯の清掃が重要であると説いています。
そして虫歯の穴の治療では、歯痛が拍動性(心臓の鼓動のような感じ)を帯び激烈な場合には歯根に体液が過剰に蓄積したことによるとしてガーレン、アルキゲネス(1世紀にローマで活躍した医師)などが行った虫歯の穴をさらにあけて神経をとる処置を施し、薬をいれる方法を行いました。
3:古代中国では・・・・・
中国(支那)では、甲骨文(殷時代、紀元前1600~1028年の文字)に齲蝕について、
「歯を疾(や)めることあるは、これ虫なるか虫ならざるか」とか「貞(と)う、歯を疾(や)めることはこれ虫ならざるか」
とあることから、殷時代にも歯を疾(や)む原因が虫にあると考えられていました。
私は祖父、父が共に歯科医師であったため、昔からこのような歯の話には非常に興味がありました。
小さい頃、父が治療している所に良く遊びに行っていました。父は私が離れて見ていると、手招きして「こっちにきてごらん、歯の中の虫がとれたよ」といって、白いプルプルとした物を見せてくれたりしました。今はそれが「神経」だとすぐわかるのですが、その当時は本当に虫がいるものだと勘違いしていました。今になってみれば良い思い出です。
歴史と思い出、胸にくるものがあります
たくさん、思い出をつくりましょう。
良いですね、父親の仕事を子供が見てまたその仕事に就く・・・僕にも子供が出来たら興味を示してくれるのかなぁ、少なくとも僕は父親の仕事に憧れた事は無かったんですけどね。
しろくま(整)先生、こんにちは。
私にもまだ子供がいないのです。私の子供も私の仕事にあこがれてくれるのでしょうか?