余剰セメントによるインプラント周囲炎
本日はデンタルトリビューン紙2009年10月号よりお届けいたします。
◇発現率高いが、除去いより迅速に消失
《米国》インプラント治療には日々新たな機材や処置法が考案されているが、術者の技量不足、知識不足によるトラブルも散見される。
上部構造の固定方法の1つであるセメント固定方では、取り残した余剰セメントに起因するインプラント周囲炎が補綴物装着後4ヶ月から見られ、遅発性の場合、9年後になっても発現する可能性があることがJounal of periodontology(2009;80:1388-1392)に報告された。
◇利点と欠点を把握すべき
インプラントの上部構造装着法は、スクリュー固定方とセメント固定方の2つがある。
セメント固定法は術式がシンプルで咬合コントロールが容易、かつ安価などの利点があるため、急速に普及している。一方で欠点として、インプラントや周囲軟組織に付着した余剰セメントによってインプラント周囲炎を惹起することがこれまでにも報告されているが、いずれも少数派での報告であった。
どのような処置法であっても利点と欠点を併せ持つが、術者は利点だけでなく、欠点を理解したうえで、それを補う努力が必要である。そこで、テキサス大学サンアントニオ校歯科臨床准教授も務める開業歯科医Tomas G Wilson Jr. 氏は、余剰セメントとインプラント周囲炎の関連を調べる事を目的に、歯科用内視鏡を用いた観察研究を行った。
◇症状を示す8割に余剰セメント
対象は、インプラント周囲炎の臨床症状がデブライドメントや0.12%5%クロルヘキシジンによる1ヶ月間の洗浄によっても改善しない患者、また、は、骨喪失や排膿が認められる患者とした。
登録基準を満たす患者は39名(41~78歳)であった。そのうち12名は追加で新たにインプラントを埋入する必要が生じたため、インプラント周囲炎を示す既存の42本を実験群とした。
用いられたセメントは、レジン添加型グラスアイオノマーセメント(27名)、リン酸亜鉛セメント(7名)、接着用レジンセメント(4名)、グラスアイオノマーセメント(1名)の4種類であり、セメセメントの種類による初期炎症反応の違いは確認されなかった。
歯科用内視鏡で確認したところ、実験群42本中34本(約81%)において歯肉縁下に余剰セメントの付着を認めた。一方、対照群ではいずれのインプラントにおいても余剰セメントの付着は確認されなかった。
◇除去1ヶ月後に症状消失
これらの余剰セメントは、確認されたその場で歯科医師や歯科衛生士によって、ハンドスケーラーは超音波スケーラーによる機械的除去が行われた。余剰セメント除去1ヶ月後に再評価を行ったところ、プロービングによる出血(BOP)などの臨床症状や歯科用内視鏡で認められる炎症症状が消失していたインプラントは、評価可能な33本中25本(約75%)であった。
さらに、インプラント周囲炎は、上部構造装着後4ヶ月という早期に発現するケースもあれば、9年以上を経てから発現するケースもあることがわかった。
以上の結果より、Wilson Jr氏は、「装着後しばらくは安定していても、余剰セメントによって遅発性にインプラント周囲炎が惹起されることがある」と指摘し、「術者は、上部構造装着後にすべての余剰セメントを注意深く除去すべき」と提言した。
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