象牙質知覚過敏症発症のメカニズム
本日は、安田登先生の著書である「象牙質知覚過敏症」からお届けいたします。
象牙質知覚過敏症発症のメカニズム
象牙質に加わる物理的および科学的刺激が歯髄神経に興奮を起こすメカニズムが提唱されたのは古く、100年以上前のこととなります。
現在もっとも広く受け入れられている学説は、1963年にGysiが最初に提唱し、Brannstromら、Horiuchiらおよび堀内の報告でその詳細が明らかとなった、象牙細管内溶液の移動に注目した「動水力学説」であると考えられています。
しかし、その後、1992年においてさえ、まだ象牙質知覚過敏症は「なぞめいた物、不可解なもの」と呼ばれていたことも興味深い事実です。
動水力学説が提唱されてから約20年経過していても、なおその対処法に戸惑っている当時の歯科界の現状を物語っています。
では、動水力学説とはどのようなものなのでしょか?
象牙質知覚過敏症は、様々な要因より発症しますが、そのメカニズムは以下の順で生じるといわれています。
- さまざまな要因でエナメル質やセメント質が喪失することにより、象牙質が露出し、その表面に象牙細管(象牙質内を走る神経とエナメル質の間の管)が開口する。
- そこに何らかの刺激が加わる。機械的刺激(ブラッシング)、温度刺激(飲食)、咬合圧(歯ぎしり)、化学物質(ホワイトニング)、口腔乾燥(口呼吸、薬剤の服用、加齢)
- 象牙質に加わった様々な刺激により、象牙細管内溶液が外向きあるいは内向きに移動する
- 象牙細管内溶液の移動が歯髄・象牙牙境付近に分布する自由神経終末を刺激・興奮させインパルスが発生するために痛みが生じる。
**************************************象牙質知覚過敏症に関する多くの報告では、感覚の亢進した象牙質に対する診査の際に、冷気、冷水、および鋭利な探針による擦過刺激であるとされています。
また、興味深い知見として、温刺激が冷刺激よりも痛みを喚起しないのは、象牙細管内溶液の移動が緩慢であり、歯髄側の神経繊維を刺激させるまでには至らないとの報告があります。
冷刺激を感じやすい部位にも特徴があり、主として、上顎は左右ともに第一小臼歯、ついで犬歯、下顎右側は犬歯、ついで第一小臼歯、下顎左側は反対に第一小臼歯、ついで犬歯との報告もあります。
この部位特異性は、利き腕とプラークコントロールの関係によるものかもしれません。
参考文献 チームで取り組む 象牙質知覚過敏症 深川優子/安田登著 クインテッセンス出版
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