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2007年6月14日 (木)

お口の健康は家族単位で考える

本日は、予防歯科で有名な熊谷先生の著書からお届けいたします。

家族は似たもの同士

高校生の歯科医検診をすると、5%位の生徒に、かかり始めの歯周炎が見つかります。

今の高校生は概して清潔好きですから、口の中の清掃状態がひどい人は希です。歯肉の炎症もそんなにひどくありません。それでもクラスに一人くらいは、歯を支える組織が失われはじめている人がいます。これが侵襲性歯周炎のかかり始めか、慢性歯周炎のかかり始めか分かりませんが、放置しておくと大人になってひどい歯周病に悩む事になるでしょう。

かかり始めの歯周炎が見つかった生徒は、できるだけ家族との単位で診察します。すると多くの場合、ご両親のどちらかがひどい歯周病になっています。既に歯を何本か失っている方もいます。この姿は、この高校生が適切な診断と管理を受けなかった場合の未来の姿なのです。

歯周病はバイオフィルム感染症ですが、ひどくなる人には何らかの環境要因(喫煙など)と遺伝的要因が関係しています。そこで、家族単位で健康を考えるのです。歯周病を起こす細菌の感染も、多くの場合家族内と考えられます。

夫婦は、元は他人ですが、長い間いっしょに暮らしていると不思議に口の中も似てきます。ご夫婦がとても不潔な口の中をしていたら、それに気が付いていない場合、そのご主人の口のなかもそんなに清潔なはずはありません。2人はたまには(キス)もする間柄なのですから。

歯周病を起こすバイオフィルムも細菌は、夫婦や親子のような密度の高い接触によって感染すると考えられています。

両親と同じ失敗を避ける

急速に進行する歯周病は、家族によって同じように発症する傾向があります。遺伝的な要因が強ためか、若い年齢で細菌が感染するためか、食習慣や歯みがきなどの清掃習慣が似ているためか、いずれにせよ家族単位で考えると歯周病を起こす要因がつかめます。

お父さんがヘビースモーカーである場合、お子さんも受動喫煙のため歯周病になるリスクが高くなっています。

歯周病は、ひどくなるまでは自覚症状のない病気です。痛みも腫れもありません。だから専門的なチェックを受けなければ病気の進行にきずきません。両親のどちらかが若くして(40歳前)歯周病で歯を失った場合には、お子さんにも同じ問題がある可能性高いでしょう。早い時期に的確な診断と処置を受ければ、両親と同じ失敗は避けられます。

かかりやすさに違いは「氏より育ち」

歯周病はバイオフィルム感染症ですが、リスク因子は細菌だけでなく、喫煙、糖尿病、精神的ストレスなどです。変えることの出来ないリスク因子として遺伝的な要因、年齢、女性ホルモンの影響などがあげられます。

動物の細胞はホルモンのような物質を出して他の細胞に影響を与えて、体の恒常性を保ち、生命を維持します。

その働きは人によってかなり差があることがわかっています。小さな突然変異で違いが出来たのです。人の歯周病でも、炎症に関係する細胞ホルモンの遺伝的な違いが、病気の重症度に関係しています。もっとも、このような突然変異の頻度は人種によって小さな役割しかもっていません。歯周病のかかりやすさの違いは「氏より育ち」のようです。

参考文献 歯科本音の治療がわかる本 熊谷崇 秋本秀俊 法研

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