糖尿病と歯周病
本日は、鴨井久一日本歯科大学名誉教授と沼辺幸博日本大学教授との共著「新・命をねらう歯周病」からお届けいたします。
太りすぎると歯ぐきがやせる?-糖尿病と歯周病
糖尿病は、ブドウ糖を消費するのに必要なインスリンの量が不足することによって、血液中の血糖値(ブドウ糖の量)が高くなる病気です。
この糖尿病と歯周病との関わりは、他の病気よりもいささか複雑です。
糖尿病には、2つのタイプがあります。一つは、生まれつきインスリンの分泌量が少ないために起こるもので、若い頃から発症することが多く、治療には必ずインスリンが必要なことからインスリン依存症(1型)糖尿病といいます。
もう一つは生活習慣病が大きく関わり、肥満の人に起こりやすいもので、必ずしもインスリンの投与を必要としないことからインスリン非依存型(2型)糖尿病といいます。
そして、日本人の糖尿病の約95%が、後者のタイプです。こうした背景があるために、糖尿病は生活習慣病の一つに数えられているのです。
糖尿病の患者さんには合併症として、網膜症・腎障害・神経障害・末梢血管障害・大血管障害などが起こってくることが知られています。
そして、この5つに続いて最近では、歯周病が第六番目の合併症であると考えられるようになってきました。つまり、糖尿病の患者さんは歯周病にかかりやすく、またそれが悪くなりやすい傾向にあるということです。
その理由の一つとして、高血糖があげられます。血液中に糖分が多いという血液中のタンパク質が糖化され、それがマクロファージなど白血球の一種である免疫細胞の働きを狂わせ、ケミカルメディエーター(*)を過剰に産生させてしまうのです。
過剰なケミカルメディエーターは歯周組織を破壊し、機能を弱らせ、その結果、歯周病菌に対する歯周組織の抵抗力を低下させてしまいます。
また、高血糖は歯ぐきの血管を弱らせるとともに、歯ぐきの弾性力を保つコラーゲン繊維の成分を減らすことも分かっています(コラゲナーゼを活性化させ、コラーゲンの分解を促進させるため)。
こうして、糖尿病の患者さんは歯周病にかかりやすくなり、すでに歯周病にかかっている人は状態が悪化しやすくなるのです。
したがって、糖尿病のコントロールをきちんとするためには、歯周病をきちんと治すことが重要で、また、歯周病を予防したり進行を防ぐためには糖尿病の治療が大切だということになります。
歯周病と糖尿病。以外に密接な関係なのです。
太りすぎの方は糖尿病にならないように気を付けることが、歯周病をはじめさまざまな病気にかからないためのキーポイントと言えるでしょう。
*:ケミカルメディエーター
炎症の場にある細胞たちが出す、様々な作用をもった成分の総称です。たとえば、プロスタグランディン、ヒスタミン、プラスミンなど。これらは、血管を広げて血流を良くしたり、白血球を血管から組織のなかへ呼び込んだり、他の細胞をもっと増やして病原菌たちと戦う細胞を増やしたりと様々な役割をはたします。
参考文献 新・命をねらう歯周病 鴨井久一 沼辺幸博共著 砂書房
糖尿病はすべての器官に悪さをする、
避けたい病気です。
遺伝と環境。
氏より育ちを注意して守りましょう。