たばこ~歯周病のリスク①~
近年、虫歯の数がどんどん減少気味になり、歯科予防の効果がじわりじわりと出てきています。それに反比例して、歯周病のリスクはどんどん大きくなってきています。
それは、歯周病は生活習慣病でもあり、感染症でもあるからです。
今日は、その習慣中から、もっとも歯周病のリスクが大きいと言われてる喫煙について、志賀康昭先生の著書「歯周病の治療と予防」から抜粋してお届けいたします。
最も高いリスク「喫煙」
近年、たばこについては世界的趨勢が禁煙に移行してきています。
たばこの害悪に対する認識がグローバルに受け入れられてきているからなのでしょう。
日本も同様に禁煙、もしくは分煙の傾向にありますが、世界的に見ればほとんど喫煙天国といっても差し支えのない状態です。
男性の喫煙率は低下傾向ですが、逆に女性の喫煙率が増加しているというデータもあります。
喫煙はさまざまな病気のリスクといわれていますが、歯周病もその例外ではありません。例外どころか喫煙は口から吸うものです。歯や歯周組織への影響は絶大です。
たばこの煙の中の有害成分は200種以上。これらを口腔内に受け入れ続けることによる歯周病のリスクは、非喫煙者と比較して約4倍にもなることが今世紀に入って指摘されています。
歯科医院に行くと、必ず喫煙歴について聞かれます。喫煙本数や喫煙年数によって歯周病の進行具合が容易に推定されるからです。もちろん多ければ多いほど、長ければ長いほど、喫煙開始時期が早ければ早いほど進行スピードは加速していきます。
また、喫煙歴を申告しなくても、歯科医は口の中をみれば即座にどの程度の喫煙習慣があるのか把握できます。喫煙による傷跡が残っているからです。
医学界でも、ヘビースモーカーの歯周病の進行度はたばこを吸わない人と約10年の差があることが報告されています。
40歳で歯が抜け始める人なら、喫煙により30歳でそうなるということです。歯肉炎などが発症してきて歯科医院にかかり始めたとしても、そこで喫煙を止める事が出来なければ、治療効果は半減してしまいます。自宅でのプラークコントロールの効果も貧弱なものになります。
歯科医の中には患者に「禁煙するまで治療を開始しない」と厳しく指導する先生もいます。
では、なぜ喫煙は歯周病を悪化させるのでしょうか?喫煙に含まれるニコチンは筋肉や神経に直接作用し、毛細血管を急激に収縮させます。そうすると、歯周病への血液供給が大幅に低下し、組織を維持する酸素や栄養の運搬が減少します。
同時に同じ部分の老廃物の吸収も阻害され、全体的に歯周組織の機能が低下します。この低下により、歯肉や歯根膜の繊維芽細胞の機能が低下します。
この細胞は組織の修復などを行うもので、活動低下により炎症などで破壊された歯肉などを修復する能力が著しく低下します。そうすると、周辺の細胞は一時的にでも組織を守ろうとして、歯肉や歯根膜の本来の機能を持たないかさぶたのような組織で、破壊された部分を覆います。これを医学的に繊維化といいます。
繊維化するとその部分の神経は鈍くなるため、破壊されても見た目も感覚的にも自覚症状が出にくくなります。また、出血もしにくくなります。これが「喫煙が歯周病を隠す」といわれる理由です。
最終的にはこれらの喫煙によって悪化した部分は細菌から体を防御する免疫機能の低下を招き、歯周病菌の活動を促進してしまうのです。
その他、タールが歯に付着すると、その部分のプラークの吸着力が高くなるというデータもあります。
喫煙は、咽頭癌、肺癌、脳血管障害などのリスクファクターであるといわれています。いずれの病気も肉体の免疫力を下げてしまいます。歯周病が感染症である以上、これによるリスクはドンドン高くなっていくのです。
受動喫煙についても触れなければいけません。喫煙者本人にも大変な影響が出ていますが、その周囲、例えば家族にも有害な影響が現れてきます。
たばこを吸わない時に出る副流煙は、タールは主流煙の3倍、アンモニアは46倍と、非常に毒性の高いものです。これら有害物質が家族の口腔に作用して、悪影響を与える事になります。
参考文献 歯周病の治療と予防法 志賀泰昭著 日東書院
喫煙している人を見ると、気の毒におもいます。
特に若い人が気になります。
禁煙と喫煙をはかりにかけて、やめて欲しい。
いつもためになることをありがとうございます。
私はまだ、1年と、少しですが、タバコをやめました。
やめたくなかったのですが、胃炎のお陰で、何も
苦しまずにいらなくなりました。体に合っていなかった
と思います。歯にもそんなに影響があったんですね。
そういえば、あまり、寝込まなくなりました(^^)
やめて、良かったんですけど、なんだか軽薄な気がして
・・・(^^;)