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2006年3月16日 (木)

日本料理は素材が主役

東京都認証NPO団体のDOH(デンタルハイジニスト&オーラルヘルスセラピー協会)が発行している「歯から始まる健康と医療」という本があります。

その中に、食に関して非常に興味深い一節がありますので、今日はそれをご紹介いたします。以下にその中からかいつまんでご紹介します。

日本料理は素材が主役

おいしさの基本因子には、食べる人の身体的、精神的状態、あるいは食習慣や食体験、食環境などの二次因子、そして「噛んで味わって」はじめて美味しいという情動を引き出す一次因子、味やにおいなど食べ物の化学的性質、温度、硬さ、粘着性、弾力性、形、大きさなど食べ物の物理的性質が挙げられます。

実は「おいしい」という情動が生じるのは、それを引き起こす基本的因子がさまざまに複合して、人の五つの感覚-味覚・視覚・嗅覚・聴覚・触覚-に訴えることから始まるのです。

世界の料理で共通して言えるのは、もちろん「味覚」ですが、それでも特徴を挙げれば、フランス料理は香り(鼻-嗅覚)、中国料理は味(舌-味覚)、日本料理は盛りつけ(目-視覚)とされており、それぞれのお国柄があります。

西欧の食文化と日本の食文化について簡単に比較をしてみたいと思います。

日本の食文化は、自然の物をそのまま食前に運んでくる事です。

西欧の食文化は、物を作り出す。創造の中で色とりどりに複合味を作り上げる事です。

日本の料理では、食べ物の味、その一物の味というものを壊してはいけない、と言うのが基本にあります。

外国の方が私の家に来ると、朝食で、小さな器に入ったいろいろな料理が出るため、なんて日本人は贅沢なんだといいます。

確かに私がアメリカにいたときは、パンのトーストとバターとジャム、目玉焼きにベーコンと青野菜が一品くらい。毎日同じでした。

日本の朝食は、旅館に行っても、お皿の数がたくさんある。なんて贅沢だということになるわけです。

しかし、贅沢だといっても決して物を混ぜていない。ひとつひとつのものが、ひとつひとつの器に主役として出てくる。天然の配合、まさにその通りです。

日本の料理は主体が魚ですが、「生で食べ、焼いて食べ、煮て食べ、それで駄目なら捨ててしまえ」と言うように、まず生で食べることからです。

たとえば、刺身は生の魚を包丁で切って、醤油とわさびで食べますが、フランス人に言わせれば、どこにでも売っている醤油とわさびだけで食べるなんて文化ではないと反論されます。

ですが、決してそうではありません。魚の旨味は、捕ってすぐが旨いわけではありません。絞めてどのくらいの時間で一番旨味が出るのか、しかも歯ざわりをうしなわないですむのか。これは板前さんの絶妙な判断が必要です。私たちは、何気なく出されたものを食べているようではありますが、そういう奥深い技術の結果、美味しいものを食べているといえます。

このように、山から取れたもの、海から取れたもの、畑から取れたもの、その食材の色、形、歯ざわり、歯ごたえ、香りを壊さないように食膳に運んでくるのが日本の食文化です。

包丁の入れ方も、たとえばさいの目切りだとか、千六本切り、あるいはささがき、蛇腹切り。末広切り、茶筅切りなどがあり、いろんな包丁の入れ方で食素材の自然を活かした形でテーブルに運んでくるわけです。

また日本はソースに匹敵するダシの文化を持っていますが、ダシは決して表に出ることはなく、主役を演じる事はありません。常に脇役で、食素材を活かすためにダシが取られています。鰹節、煮干し、昆布、あるいは昆布と鰹節をあわせて取るということをしています。

したがって、基本的には食素材ひとつひとつの「らしさ」を失わないようにお料理をするのが、基本的に日本の食文化です。

歯ざわり、歯ごたえ、これについても、どちらかというと日本人のほうが微妙な感覚をもって楽しんでいるといえます。

聴覚については、日本人は音を楽しんで食事をしますが、世界のどの国もそういう楽しみ方をしません。食事中のどんな音も嫌う西洋では、まったく考えられない食事の楽しみ方なのです。

さらに、日本料理は見映えを非常に大事にします。つまり、盛りつけの工夫がすばらしいということです。

昨今は日本のコックさんが大勢フランス料理を勉強しに行くようになって、器も多少、変わったものを使うようになりました。盛りつけも食べる人の方向へ向けます。

しかし、基本的には盛りつけ、器についてはバラエティに富み、多様性があるのは日本の食文化のほうです。

日本料理は目で食べるともいわれ、食素材の形、色に合わせて、器選びに始まり、杉盛り、重ね盛り、俵盛り、平盛り、混ぜ盛り、寄席盛り、散らし盛りなど、あくまでも客人に向かって料理を引き立てる事に大きな心配りがされます。

情緒的、非対称的、立体的に盛りつけます。また使われる食器も、九谷焼、有田焼、備前焼、織部焼など、いろんな器があり、さらに異質な陶器も使われて、ひとつの会席料理のコースが出されます。

西洋料理の盛りつけは、合理的、対照的、平面的で、使われる食器も同じ器の同じ飾りの形式の126ピースのものが使われるのが、一般的なフルコースです。

ある意味では、ヨーロッパの食事はシンメトリーになっています。あるいは統一の美と言えるでしょう。食器などを考えてみますと、整然とした美しさがあります。

それに比べて、日本料理は破調の美、流動感、変化の美を求めている食文化です。盛りつけには7つくらいの基本がありますが、生け花に通じる、盛りつけの美しさがあります。

輪切り、半月切り、いちょう切り、みじん切り。ツマとして出てきたり、あるいは主役として出てきたり、カットの仕方でさまざまに変わります。

いつも何気なく料理をみていますが、このようにしっかりと西洋と和食の違いを比べてみると、日本食には独自の文化があることがうなずけます。食事は舌で味わって食べるものですが、確かに見た目が悪いと食欲が起きないのも事実です。

今回は私もこのレポートを読んで深く料理の奥深さを感じました。

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日本料理、世界一の文化そして男性が仕切っているのも納得します、四季、それぞれお庭を前に良い器で節のものを静かに味わいたいものです。

by ゆここ | 2006/03/16 14:51:20

身近な呉服屋さんに、何故日本の皇室の晩餐会ではロープデコルテにフランス料理なのかとの疑問詞になるほどと思ったことがあります。理由はともあれ日本の食文化の素晴らしさ、先ず目でいただくなどとは世界に類がないでしょう。醤油のない食生活考えられません。ところで先生の結婚披露宴の食事は和洋でしたがとても美味しいものでした。

by おねーね | 2006/03/16 19:04:32

ゆここ様 おねーね様

私は今まで食べる専門でしたが、これからは色々な角度から「食」というものを見つめて見たいと思います。
コメントありがとうございました。

by しろくま | 2006/03/17 15:24:54

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