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しろくま先生のブログ
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2010年1月20日 (水)

歯に大きな穴が開いたときの治療~永久歯編~

本日も昨日に引き続き、熊谷先生と医療ジャーナリストである秋元秀俊さんの『徹底解剖 むし歯・歯周病~「一生笑顔」を約束する新しい歯科の知識~よりお届けいたします。

◇穴があいても、リスクコントロール

今日は永久歯についてみてみましょう。歯は非常にリスクコントロールの重要性が大事なのですが、これは初期の虫歯に限ったことではなく、大きな穴があいてからも同じです。

歯に穴があいてしまうと、むし歯のリスクが一つ増えることになりますから、リスクコントロールがより大切になるのです。残念ながら、大きな穴が自然にふさがることはありませんが、リスクコントロールをすれば、穴の拡大、進行を止めることが出来ます。

また、まだ軟らかいうえに、感染部分の色も淡い進行中のむし歯には、なかなか気がつきにくいものですが、この段階でリスクをうまくコントロール出来ないと、感染は一気に広がり、穴もどんどん大きくなります。

やがて感染は象牙質のなかにまで進み、痛みという信号を発して私たちに治療を促しますが、こうなると削って詰める処置で、歯の機能を回復するしか方法がなくなります。しかhし、むし歯の後始末のために削られた歯は、たとえどんなに丁寧な処置を行っても、より酸に浸されやすくなります。上手に処置しても、むし歯のリスクを改善しなければ、結局再発してしまうのです。

そして削り方、詰め方、その材料はさまざまです。患者さんにはこの違いを気にする人が多いのですが、本当に大事なのは、感染した歯質をしっかり除去したうえで、再びミネラルの収支バランスが崩れないようにすることなのです。

「むし歯の治療」とは「リスクをコントロールして、ミネラルの収支を改善する」ことであると、肝に銘じておいてください。

◇穴の処置のキーポイント

むし歯の穴の処置には、三つのキーポイントがあります。

まず一つ目は、歯の中に入り込んだたくさんの細菌を除去または殺菌することです。そのために感染した象牙質を削り取ります。けがにたとえれば、細菌が入り込んで膿んだ組織を切り取り、消毒する処置です。

二つ目に、削り取ることによってむき出しになった象牙質の傷口をふさぎ保護する処置です。これは象牙質と一体になった組織である歯髄を守るための処置でもあります。けがの処置でいえば包帯をかけるようなものです。

手足のけがなら、自然に皮膚にあたるエナメル質は再生しないので、三つ目のポイントとして穴を金属やプラスチックといった人工の材料で埋めて、元の形を復元します。また最後に、色も自分の歯のようになれば、さらに満足です。

患者さんの目には、穴を埋めて外見を回復した姿しか見えませんが、しっかり細菌を除去したり、傷口を保護して、歯のなかの歯髄を守る「見えない」処置こそが大切です。

なぜなら、歯は一見死んだ組織のように見えますが、そうではないからです。硬い歯は、象牙質と一体になった歯髄によって体液を内部から受け取り、痛みを感じたり、刺激に反応したりしています。

歯を「生きた組織」にしているのは、この歯髄なのです。

◇「歯を守る」治療と「痛くない」治療

歯髄を守るために、細菌に感染した歯質を丁寧に除去し、傷口をしっかり保護するといった「歯を守る」処置が痛くなければいいのですが、残念ながら痛みのない治療と、歯を守る治療は両立しないことがしばしばです。

感染した歯質をしっかり除去しようとすると、どうしても痛みが出ます。また歯質を除去した結果、歯髄がむき出しになり痛むこともあります。歯髄を除去すれば、とりあえず痛みはなくなりますが、歯は死んでしまいますし、除去後の経過は必ずしもよくありません。

また、削るとき、痛みのないように麻酔をすると、血行が悪くなり歯髄がダメージを受けやすくなるうえに、患者が痛みを訴えないので、歯を削りすぎてしまう傾向にあります。

患者の喜ぶ「痛くない」治療は、技術的には簡単ですが、良いことばかりではないのです。

最近では抗菌剤を利用して感染した歯質を殺菌し、出来るだけ歯質を削らずに残そうとするやり方もありますが、硬い歯質に薬剤をしみこませることは難しく、思うような結果が出ていません。また、むし歯の穴を接着剤で覆ってしまえば、痛みをなく歯髄も保護できるといいことずくめなのですが、なかなか完全に覆うことは困難です。

このように、痛みがなく、しかも確実に歯を守ることの出来る治療はありません。削って詰める以上は、たとえ痛くても、丁寧に痛んだ歯質を除去し、確実に「歯を守る」治療を進めるべきなのです。

参考文献 徹底解剖 むし歯・歯周病~「一生笑顔」を約束する新しい歯科の知識~ 熊谷崇 秋元秀俊 共著 法研

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