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2007年8月24日 (金)

がん治療前に口腔ケア

平成19年8月19日の福島民報サンデー健康からの抜粋です。

静岡がんセンター調査 がん治療前に口腔ケア-合併症減りQOL向上-

がんの放射線治療や科学療法が原因で、重い口内炎や出血、あごの骨の壊死などの合併症に悩ませれている患者は少なくありません。

こうした合併症は、がん治療前に虫歯や歯周病の治療など口腔ケアを徹底することで、四分の一に減らせることが、静岡県立静岡がんセンターの調査で判明。

同センターは、口腔ケアをがん治療の一環と位置付け、QOL(生活の質)向上に役立てています。

★化学療法の約40%

米国がん研究所(NCI)のデータでは、口内炎を中心とする口腔の合併症は、化学療法を受けた患者の約40%で発生しました。造血幹細胞移植を受けた白血病などの患者では80%、顔から顎、首にかけての頭頸部がんで口腔が含まれる部分に放射線治療をした患者は100%に達します。

静岡がんセンターの太田洋二郎歯科口腔外科部長は「放射線や抗ガン剤は正常な細胞も傷つけるので、口内炎や味覚障害などが起きます。唾液を出す細胞が障害されると唾液が減り、プラーク=歯垢=1mmg中に約1億個いる細菌が繁殖しやすくなって虫歯や歯周病が一気に進みます。」と説明します。

さらに、食欲がなくなり、体重が減少、体力も低下してきます。医師や看護師、薬剤師らがチームで取り組むがん治療の中で「口内トラブルは生存率に直接影響を与えないので、注目されてこなかったのです。食事がちゃんと出来るようになって、初めてがん治療に成功したと言えるのに」と太田部長。

★病室で治療も

口腔ケアの重要性を裏付けるのが、がんで切除した舌を腹や太ももの筋肉を使って再建する手術の後の合併症調査です。

太田部長は、同じ形成外科医が再建手術をした患者を事前の口腔ケアの有無で比較しました。他のがん専門病院で口腔ケアなしで手術を受けていた33人では21人(64%)に感染症や肺炎などの合併症が起きていたのに対し、静岡がんセンターで口腔ケア後に再建した56人では9人(16%)と1/4ですみました。

この結果もあり同センターでは、がん治療が決まった患者には歯と歯肉を精密に検査し、歯石除去や虫歯治療を実施、ブラッシングを指導しています。放射線をかけた後に抜歯すると、変性してスカスカになった顎の骨が細菌の温床となるため、抜歯も放射線治療前にすませます。

入院中は歯科医や歯科衛生士が病室まで出向き、治療やケアをすることもあります。

口内炎の予防法は無いため、①清潔保持②保湿③局所麻酔薬によるうがいなど痛みのコントロールで対処します。

また、患者が自分でケアできるようにと「口腔ケアセット」をサンスターと共同で考案。通常は歯科医院でしか販売しない歯ブラシ、デンタルリンスを患者の状態に合わせて3種類のセットにして、7月から売店で販売を始めました。

★地元歯科と連携

静岡がんセンターでは、太田部長ら常勤医2人と他科兼務の研修医5人で、月に約1000人の歯科診療に当たっています。しかし、退院後の患者まで手が回らず、患者からは「がんの治療中と申告したら歯科治療を断られた」、歯科医院からも「がんの治療内容の内容が分からないので不安」との声も寄せられました。

「がんセンターで完結しようとすると歯科治療難民を生み出す」(太田部長)として昨年夏から進めているのが、地域の歯科医との連携です。講習会を通じて県東部の歯科医の半数近くに連携歯科医となってもらい、同センター退院後の患者を50人以上紹介。口腔ケアを徹底するため、がん治療まえからの連携につなげたい考えです。

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