ライオンの歯
本日は、波多野先生の著書「歯から始まる怖い病気」からお届けいたします。
ライオンは歯が抜けると死ぬ
歯の形にはそれぞれ意味があり、機能が決まっています。
肉食獣のライオンの歯を見てみると、ほとんど鋭い牙のような歯であります。
門歯(前歯)は小さい歯が上に4本、下に5本生えています。目に付くのは大きくて鋭い犬歯で、その後ろにもとんがった4、5本の歯が生えています。人間の様な平べったい臼歯はありません。
つまり、穀物や野菜などのような、すりつぶさないと消化しにくい食物は食べないということです。
ライオンはの牙は人間でいえば、ほとんどの歯が犬歯であるということです。歯の構造からも、草食動物の生肉のみを食べる食生活をしていることがはっきりわかります。
もし、ライオンの歯が抜け落ちてしまったらどうなるのでしょう。
人間なら、お粥やオートミールのような流動食に近いものを食べてエネルギーを得ることができますし、最悪の場合、点滴で必要な栄養素を入れることもできるので、問題はありません。
ライオンはお粥が食べられるでしょうか?
ライオンはオートミールが食べられるでしょうか?
答えはノーです。
動物園で、飼われているライオンなら、オートミールを胃の中に流し込んでもらえるかもしれません。しかし、それが体内でエネルギーに変換されて元気に大地を走り回ることができるかというと、それは難しいのです。
なぜならば、ライオンはオートミールを消化する酵素を体内に持っていないので摂取しても、エネルギーは作り出せないのです。
ここで疑問が出てきます。
ライオンは、草食動物を主食としていますが、ビタミンやミネラル、エネルギー代謝の基本となる炭水化物を摂っていないのに、どうして健康を保てるのでしょうか。
たとえば、血液中にあって酸素の働きをするヘモグロビンという物質があります。ヘモグロビンは、植物を原料として作られています。ヘモグロビンと植物の葉緑素は化学構造が似ていて、葉緑素は体内に入ると血色素になります。
野菜や果物を食べないライオンにも、ヘモグロビンは体内にあります。それではどうやって原料を調達しているのでしょうか。
栄養学者の川島四郎先生の研究によると、ライオンは草食動物を襲うと、まず小腸から食べ始めるといいます。
草食動物の小腸では、食べた草が消化されてほぼ溶けており、吸収されるばかりの段階になっています。ライオンはこれを食べることで、間接的に野菜を食べたことになり、ビタミンやミネラルを摂取することができるといいます。
野菜の消化酵素は無くても、吸収しやすい状態になっていれば問題なく、必要な栄養素は摂取できるというわけです。
しかし、それも鋭い牙があればこそ。
もし、歯が抜けてしまったり、あるいはまったく歯が無かったら、シマウマの首に食らいついて相手を倒すことも、生肉を引き裂いて食べることもできません。
歯が抜けて食物を捕獲できなくなった動物は、死を待つしかないのです。これが自然の掟です。
参考文献 歯から始まる怖い病気 波多野尚樹著 祥伝社新書
肉食動物は草食動物で生かされている。
なんとも、酵素とは、今まで解りませんでした。
自然の法則、みたいな うまくできているんですね。
ゆここさん
この話、私も知りませんでした。
それに、肉食動物の栄養のことまで考えたことなかったです。
私も勉強になりました。