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しろくま先生のブログ
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2006年10月27日 (金)

誤飲と誤嚥

最近、このブログのアクセス解析(誰が、いつ何を見たか分かる表)を良くみるのですが、圧倒的に多いのが、「喉に魚の骨がつまったら」というタイトルで書いたものが圧倒的に多いのです。

そのため、多くの方が、この問題に付いて悩んでいるのだなと実感しました。そのため、実は歯医者が考える誤飲で困るものについて、テキストを見つけましたので、ご紹介します。今日のテキストは、「もう虫歯にならない! 花田信弘著」です。

「誤嚥(ごえん)」という言葉を聞いたことがありますか?

子どもがビー玉やタバコの吸い殻を間違って飲み込んでしまうという「誤飲」なら聞いたことがあると思いますが、「誤嚥」は「誤飲」とは全く違うものなのです。

そもそも、ヒトは、猿から進化する過程で、のどの構造に大きな変化があったため、「誤嚥」を始めました。いささか唐突ですが高齢者と口腔ケアに関わることなので、触れておきたいと思います。

口腔はすべての動物にとって食べる器官(摂食器官)として機能しますが、人間んいとってはその他に、しゃべる器官(情報器官)としても機能しています。

人間は他人に、重要な情報を口でしゃべることによりその理解を得て仲間を増やし、他の動物よりも大きな集団を形成しました。そして、マンモスや虎のように圧倒的な破壊力を持つ猛獣にも打ち勝ってきたのです。

また、口でしゃべることによって次世代に先祖の知識を正確に伝え、文化の伝承や生産力の飛躍的な増大を成し遂げてきました。

しゃべるということは、人類が始めて経験した「IT革命」です。

口が食べる器官からしゃべる器官へと機能変化した際に、人間の口腔には大きな変化が生じました。

哺乳類は喉頭蓋(こうとうがい)が軟口蓋(なんこうがい)とつながって気道と鼻腔が直結しているので、息は必ず鼻から出し入れします。ところが、人間は、連続しておしゃべりするために、気道と口腔が開けっ放しになり、しゃべる息を吐き出した後、直ちに息継ぎをするために口腔から気道に空気が流入する口呼吸が必要になります。鼻呼吸専門のサルにはこれができず、しゃべれません。

つまり、口が食べる器官からしゃべる器官へ進化するにつれて、口腔・咽頭の変化が始まったのです。

人間は、しゃべる機能が優先させた結果、その昔サルだった時代には繋がっていなかった気道と鼻腔の中間に大きな穴が開いてしまいました。

そしてその穴をふさいだり、開けたりしているのが軟口蓋と咽頭蓋です。この働きが上手く行かなかった時、口に入ったものが間違って気道に入り込んでくる時があります。

よく食べながらしゃべっていると、気管にご飯粒などが入ってしまい、苦しい思いをしたことがあるでしょう。これが、「誤嚥」です。

口腔・咽頭の変化は、発語を可能にしてサルをヒトへと進化させ、ヒトはしゃべることで、集団として強くなったと考えられます。しかし、個体としてのヒトは必ずしも強くなったとは言えません。なぜなら、ヒトは口呼吸を行うようになったことで、細菌を含む唾液の誤嚥だけでなく、咽頭炎、上気道炎のような呼吸器系の疾患やひどい歯周炎に悩まされるようになりました。

また、他人に息を吹きかけるので、口臭の問題も発生しています。現在の日本の医療で、外来患者が最も多い疾患は風邪と歯科疾患ですが、これはしゃべるために、気道と鼻腔の間に大きな穴があいた結果、口腔の病原体が唾液を介して気道に入りやすいからだと考えられます。

この誤嚥が、とくに問題になるのは高齢者n場合です。脳血管障害を持つ高齢者の場合、寝ている間に少しずつ気道を経て、肺へ唾液が流れ込んでいきます。本人も気がつかずに唾液を気道から肺へと間違って飲み込んでしまうので、この現象を「不顕性誤嚥」といいます。

高齢者が夜寝る前に医療用アイソトープをのり状にして歯の表面に付着させ、夜中に徐々に解けるようにして、翌朝、このアイソトープを誤嚥しているかどうかを撮影するという実験を、東北大学医学部老人科の研究グループが行いました。その結果、両側に脳梗塞のある人92%、片側にある人は66%、脳梗塞がない人の場合は16%の人に誤嚥が認められました。

これがどうして問題になるかといえば、高齢者は免疫機能が低下しているうえに、口の中にさまざまな悪い菌が定着しており、唾液を通じて肺に入ってしまうからなのです。

高齢者の死因のトップが、がんや心臓病ではなく、肺炎だというのは意外な気がしますが、この中に、誤嚥による肺炎が少なくありません。高齢者の一部に見られる抗生剤を服用してもくりかえす肺炎は、口の中にいる細菌によって引き起こされていると考えられるのです。

たかが歯の細菌と言ってはいられません。介護の場合でも、歯と口の健康は重要で、生死に関わる問題だということがおわかりになっていただけたでしょうか?

口の中の悪い菌が唾液を通して、高齢者は
肺に流れて、肺炎をおこす、つらい事です
びっくりです。

by ゆここ | 2006/10/27 13:40:28

口の中の管理しだいで、高齢者の命まで左右しかねない。ってことなんですか。


町の口呼吸研究家です。口呼吸と口輪筋の関連を調べている内に、口輪筋と軟口蓋・舌根の動きとの密接な関係に気が付きました。口呼吸により口腔内の雑菌が肺に吸入され易いのではと推定していましたが、先生のアイソトープ実験紹介記事を拝見して眼からウロコの気持ちになりました。


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