歯石を取ってみよう4
今回は、「歯石を取ってみよう」の4回目です。
前回までは、患者さんご自身で歯を磨く、パーソナル・プラークコントロールと歯肉縁上(歯の部分)の歯石を機械的に除去するスケーリングの説明でした。
今回は、歯肉縁下(歯肉の下、歯と歯肉の間)に溜まった歯石の除去の話です。
この歯肉縁下のプラーク除去は、患者さんが自分自身で歯石を取ることは出来ません。
術者(歯科医師、歯科衛生士)が、専門の道具を用いて歯石除去を行います。
この歯肉縁下の歯石除去は、すべての患者さんが行うものではありません。歯肉縁上歯石を除去を行って、歯肉の状態が良好又は安定した場合は、無理には行いません。
なぜ、歯磨きだけでは上手く歯肉縁下の歯石が除去できないのかといえば、歯肉縁下の歯石はバイオフィルムと呼ばれている特別な細菌の塊になってしまうのです。
バイオフィルムとは、細菌の塊が、バイオフィルムと呼ばれる粘性のフィルム状の膜を作って細菌を包みこんでしまうのです。また、このバイオフィルムとなる細菌は非常にずるがしこく、細菌同士で会話をするように情報交換をしながら住み着いていきます。またこれにより、細菌の性質を変えることができます。このことを自己誘導体とも読んでいます。
バイオフィルムは非常にぬるぬるしており、排水溝のぬるぬる(これもバイオフィルムです)に良く似ています。排水溝のような水流の激しいところでも決してぬるぬるがとれることがありません。
またバイオフィルムは、歯の表面だけでなく、舌の表面に付いて口臭の原因になったり、口から体の中に流れ込み、循環器障害、誤燕性肺炎、発熱が出たりします。
東京歯科大学微生物講座奥田教授はいいます。
「消毒薬や抗生物質などの抗菌薬は、バイオフィルムに対してその効果を発揮させることはありません。バイオフィルムを構成する「ぬるぬる」の本体に浸透出来ないためです。またバイオフィルムの中心部の細菌は、代謝も低く、それを阻害する薬剤は無効です。従って、バイオフィルムは機械的除去が不可欠であり、PMTCに勝るバイオフィルム除去方法はないと断言できる」
PMCT(昨日のブログを参照してください)の効果は
1:虫歯の予防
バイオフィルムを除去し、再付着を防ぐので虫歯の予防効果があります。そのため歯のエナメル質表面へのカルシウム補給を促し、再石灰化(歯を作り直す)を促進します。
2:歯周病・歯肉炎の改善
歯周ポケット内にあるバイオフィルムを除去するので、歯肉の状態を改善し、予防にも繋がります。3ミリ以上深いポケットの場合は、他の方法でバイオフィルムを除去します。
3:歯質の強化
洗浄後にフッ化物入りのペーストやカルシウム補強剤を塗布することにより、歯の再石灰化をさらに促進します。
4:自然な美しさの回復
歯についたヤニや色素も取り除けるので、患者さん本来の光沢のある歯面になり
「歯石を取ってみよう」も明日で最後です。よろしくお願いします。
参考文献 やさしい説明、上手な治療(2)歯周治療 末永書店
歯の予防シリーズ バイオフィルムとPMCT 株デンタルダイヤモンド社
ジスロやマクロライド系はどうやらバイオフィルム溶解能があるということが言われてきているみたいヨ。小児歯科学会誌からなのですが、今のペリオも見てみたらそういう論議がされているのかな、と思ったりして…。
あとPMTCがPM「CT」になっておりますよ。
へ~。知らなかった。まんざらジスロもすてたものではありませんな。勉強になりました。私も小児歯科学会入会しようかな。それと、PMCTは速攻でなおしました。ありがとうございました。
初めて投稿します。
突然ですが、しろくま先生に質問です。
歯石の成分と尿管結石の『石』は同じでしょうか?
食生活に関係ありますか?
教えてください。
宮ちゃん 様コメントありがとうございます。
早速調べてみました。結論から言えば別物です。
尿路結石の石は主に70%以上は蓚酸カルシウムを含みます。また、感染が主な原因である燐酸マグネシウムアンモニウムや,尿酸,シスチンは20%を占めています.歯石は歯垢といってプラーク(口腔内の細菌)が固まったものといわれています。了解していただけましたでしょうか?また質問お待ちしています。
御返事有り難うございました。大変勝手なお願いをしてしまい失礼な事をしたと思っていましたが、返事が返ってきてうれしかったです。自分も大学病院の方で補綴科に属しています。是非一度見学をしたいと思います。週末しか行くことができませんが、都合のいい日があれば教えてください。よろしくお願い致します。