歯科用実体顕微鏡
その勉強会は感染してしまった歯の治療についてのものだったのです。
皆さんもだいたい想像できると思うのですが、本来歯の中は見ることが出来ません。
せいぜいレントゲンを撮って、根の形から頭の中で根の走行を予測してその先にある病巣を攻撃していくのです。
そのため、予測も付かないことが多く起こります。迷路のように根の中が複雑に入り組んでいることもありますし、途中でふさがってしまっている事もあるのです。
しかし、私たちはそれを見ることができないので、根の中の大筋だけを治療して、脇道の根を忘れたり、途中でふさがってしまっている根を無理矢理こじ開け、穴をあけてしまったりすることがあるのです。
今回の勉強会では、あらかじめ持っていかなければならない物がありました。
それは抜歯歯牙です。患者さんから抜歯した歯を持参するのです。その歯には事前に穴を開け、根の治療をする準備をしてくるようにと指示がありました。
勉強会も中盤に入り、いよいよ実習になりました。そこには歯科雑誌でしか見たことのない、歯科用実体顕微鏡がありました。
本物を見たのは初めてだったのでとても興奮しました。
私も診療の時はマイクロスコープという小さい顕微鏡のような物をメガネに付けてみているのですが、その倍率はだいたい3倍くらいです。
でも3倍でもとても威力を発揮しています。十分すぎるくらいです。でも、この顕微鏡は24倍で見えるのです。
24倍っていうのは、約1センチの歯が24センチに見え、1ミリの根が24ミリに見えると言うことです。
初めてその顕微鏡を使って、自前の歯牙の根を見た時の感動は今も忘れられません。その時の感想は
「根の中は見ることが出来るんだ・・・・。」
ということでした。今まで見る事なんて出来ないと思っていたのに。
良く脳外科手術の時に見る大きな顕微鏡の歯科版だと思っていただければよいです。
しかし、神経の治療費は多くても200~300円位です。その治療のために1万倍もする顕微鏡を導入する事は現実的に不可能な事です。
良い診療をするには、日々の努力だけではどうにもなりません。「弘法筆を選ばず」とはいいますが、それは昔の話です。患者さんも最新の設備で治療を受けたいはずです。腕だけでは限界があるのです。
(私はまだまだ向上の余地が十分すぎるほどありますので、設備のせいにするには、かなり無理がありますが・・・・・。)
医療費が下がり続けている現在、良い医療を患者さんに提供するには、もはや国を頼りにせず、自費で治療するしか無いのかもしれません。悲しい現実です。
そういうことで、私の診療ではまだまだ根を見ることは出来そうにありません。
ここで、根をあげるわけにはいきませんが・・・。
治療費ダウン、医療器具の高値、全くアンバランス、
先生、納得のいく診療が出来ない現況ですね、
何処に向かって大声をあげればいいのか?
でも、先生の姿勢を伺えただけ・・感動です。
真実一路ですよね。
ゆここ様
私はこのブログから声を上げていかなければいけないと思います。しかし、私は、治療費が下がっても治療の質は下げませんよ。大丈夫です。