計算士
村上春樹さんの大好きな小説「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」があります。
この小説は「ハードボイルド・ワンダーランド」という章と「世界に終わり」という全く相容れない物語が交互に語られ、最後には収束していくという村上春樹初期作品としてはとても素晴らしい実験的な小説だったのです。
「ハードボイルド・ワンダーランド」の主人公は「計算士」という職業についているのです。目の前に綺麗に削った新品の鉛筆何本かとコーヒーを用意してもらい、トランス状態になりながら「とある計算」を行うのです。休憩の為に正気の戻るといくつかの鉛筆が折れていたり、机の上が荒れていたり。
つまり極度の集中力の話を書いているのです。
私も「計算士」の様に極度の集中力で意識が飛ぶほど計算は出来ないのですが、それに似た仕事はします(白目)。
それは矯正のセファロ分析という人間の骨格を計算する作業です。
大抵の先生はパソコンのソフトを用いて行っていると思うのですが、私は手書きの方が好きなのです。
というか、大好き。患者さんと向き合っている感じになるし、とても頭の中に患者さんの骨格が正確に入り込めるからです。
このセファロ分析は「計算士」の様に一気に集中して行う必要があります。
だから、比較的患者さんの少ない時や診療後、もしくは診療開始前に行うことがあります。
実質30分くらいの作業なのですが、矯正治療では一番大切な作業なので、患者さんの骨格と対話しているようで楽しく集中出来る時間なのです。
先日もこの作業を行ったのですがとても楽しい時間でした。
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