村上春樹著「猫を棄てる」を読んで
新型コロナウィルスの影響で、自宅時間がかなりありましたので、村上春樹さんの新刊「猫を棄てる」を読了いたしました。
ページ数は100ページにも満たない短編小説くらいのボリュームでしたので、1時間くらいで読み終わりました。
ページ数が少ないからといって中身が全く無いかと言えば、まったくそんなことは無く、私は深く感動し、とても有意義な読書体験でした。
この本は村上春樹さんのお父さんの事の人生を中心に書かれています。
やはり、息子と父というのは、どこの家庭でも物語があるなって感慨深いものがあります。
村上さんのお父さんは何度か戦争体験がありまして、そういった生々しい話が随所に出てきます。
その中で非常に興味深い話が書いてありました。
戦時中、補給が上手くいかず、慢性的な物資不足で感染症が蔓延し、歯科医の圧倒的な不足のため、兵士は歯痛や虫歯に悩まされていたという記述があるのです。
記憶が定かではないのですが、私の祖父(彼も歯科医師)が戦時中、軍医をしていたという話を小さい頃、祖父に直接聞いた覚えがあるのです。
私は小さいながらも、「そんな馬鹿な、戦争に歯科医が必要な訳ない」って思っていたので、この本の中の記述を読んで、にわかに祖父の言っていたことに信憑性が出てきたのです。
この本は村上春樹さんのお父さんの話ですが、私はこの本を読むことによって、忘れかけていた祖父を思いだすきっかけになりました。
とても思い出に残る良い読書でした。
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