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2009年8月 5日 (水)

チンパンジーの「叱らない」教育

本日は、AERA with Baby 2008年春号よりお届けいたします(写真も本より複写いたしました)。

◇親の背を見て、子は育つ!~教えない、そして叱らない。~

人間とチンパンジーのゲノム(遺伝子情報)の違いは、わずか1.23%。容貌はかなり違いますが、2本足で立ち歩く、手で道具を使えるなど、ほかの動物と比べると類似点も多いそう。

松沢先生(京都大学霊長類研究所 所長)がいうとおり、人間とチンパンジーはまさに「進化の隣人」なのです。

アユム(チンパンジーの名前です)は、母親を見て、課題の仕組みを理解し、自発的にチャレンジするようになりました。このような「母親から何も教えない子育て」は、野生チンパンジーにとっても、一般的な子育て法です。

「写真は、野生の母親チンパンジーが道具である石を使い、木の実を割っている所です。子993_4 どもはそばで見ています。母親は絶対に、子どもに教えません。見て、覚えられなければ、その子は石を使えない。野生のチンパンジーにとって、石を使えないことは大きなデメリットですから、なんとか見てまねしようとします」(松沢先生)

野生の場合、石を使えるようになるのは4歳ぐらいから。親の「お手本を至近距離で観察して、自分で何度も試して見る。うまくいかない時には、また、親のお手本を見る、ということを繰り返します。ところが、親が石を使う様子を見て育ち、自分もチャレンジしてみるものの、どうしても使えるようにならないケースもあるのだとか。

人間の母親は、「これが出来ないと子どもが苦労する」と、親心から一生懸命、教えようとします。その結果、上手に出来なかったり、やる気がなくてふざけいている子どもに苛立ってしまうこともしばしばあります。

「チンパンジーのお母さんは、絶対に子どもを叱らないんです。子チンパンジーも人間の子どもと同じように、歩いていて突然、立ち止まったりするんですけど、母親はそっと背中を押して、歩くようにうながすくらいしか指示をしない。そして、子どもが歩き出すのをじっと待っているのです。」

◇「忙しい」からこそまねしたい、チンパンジー流「叱らない教育」

忙しく、つい「早く早く」とせかしてしまうことも多い人間の母親には、なかなかできないことも多いです。

子どもの自主性を尊重して、親の都合では叱らない。「そはいっても、人間はチンパンジーとは違うのだから」という声も聞こえてきます。確かにそうではありますが・・・・・。

「人間の親はいろいろな「都合」を子どもに押しつけがちですよね。自分が忙しい時に、子どもがのんびりしているとせかしたり。偏食のお母さんが、自分は食べないのに、子どもには「野菜を食べなさい」といって叱ったり。

そんなとき、叱っても子どもは野菜を食べませんが、お母さんが楽しそうに、おいしそうに食べてみせれば、自分から食べるようになると思うんですよ」

確かに、子どものは母親のことをよく見ているもの。無意識のうちに言っている口癖を子どもにまねされて、驚いて苦笑した経験のあるお母さんも多いのでは。

前述の野生のチンパンジーが石を道具として使うことにしても、もし母親が石を使えなければ、子どもには学ぶチャンスもありません。つまり、親が出来ないことは子どもも出来ない、ということなのです。

それは、人間もチンパンジーも同じではないでしょうか。教えようと力むから、親はますます忙しくなってしまう。ならば子どもにみて学習してもらえばいい・・・・。

この発想の転換が出来れば、私たちの人間の子育ても少し、身も心も楽が出来るようになるかもしれません。

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