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しろくま先生のブログ
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2008年12月16日 (火)

どうして、入れ歯では噛めないのか?

本日は、波田野先生、石橋先生の共著『一生美味しい 総義歯&インプラント』よりお届けいたします。

◇どうして入れ歯では噛めないのか

総義歯というと、かなりの高齢者が使うものと思っている方が多いことでしょう。確かに総義歯を入れている約四百万人の大半は五十五歳以上の方です。

しかし、四十歳代で自分の歯を大半を失っている方も大勢いらっしゃいます。また、総義歯を使っているのは四百万人と聞いても、日本人の人口の三十分の一ですからそれほど多くないように感じるかもしれませんが、横浜市に住んでいる人と同じかそれ以上は総義歯なのですから、その多さがおわかりいただけると思います。

その四百万人の方の大半が、入れ歯に対して何らかの不満や悩みを持っています。私のところにも、多くの患者さんが来院し、現状の不満を訴えます。

  • 旅先で人目をしのんで入れ歯を洗うのがいや
  • 噛み合わせが悪くて、咀嚼していると疲労を感じてしまう
  • 義歯を載せたところが炎症を起こして痛くて装着していられない
  • 歯肉と義歯がぴったりしないので、なんとなくガタガタする。
  • 義歯が不安定で、何度か義歯が壊れた
  • 義歯がゆるんでいて、すぐにはずれる。
  • おしゃべりしたり笑ったりすると義歯がはずれる
  • 顔が老人みたいになった。

楽しく食事したりおしゃべりするために作ったはずの義歯が機能していないのです。これは困ったことです。

原因の一つに、歯を失った年齢と総義歯を作った時期のギャップがあります。

事故にでも遭わない限り一度に全部の歯を失うことはありません。一本抜けてまた一本という具合に抜けてしまい、いよいよだめだという時点で総義歯をいれます。実はその時点で、歯を支える構造が以前と大きく違っているのです。

歯は、口を開けて見えている部分は全体の三~四割で、あとの六割以上が歯肉の下にあります。歯の構造で見ると、一番外側はエナメル質という水晶ほどの硬さのある部分で、その内側に象牙質という少し軟らかい空間があり、そこに動脈と静脈と脳への伝達神経である三叉神経が通っています。この動脈から血液と栄養分と酸素が運ばれて、静脈から不要なものが運び出されます。

歯の根は直接歯肉に埋まっているのではなく、セメント質という骨のようなもので薄く覆われています。この部分が歯と骨を結ぶ大切な役割を担っているのです。

そのセメント質を歯根膜が覆っています。歯は、歯槽骨といわれる部分に歯の根が植わっています。歯槽の内側にある歯槽骨と、これを取り囲んでいる歯槽を支える支持骨があります。歯はこうした組織にがっちりとサポートされているので、硬いものを噛んでも抜けることがないのです。

問題は歯が抜けた時に生じます。

実は、全身の骨は二年で新しいものに生まれ変わる、リモデリング(骨再生)を繰り返しています。破骨細胞が骨を作るという作業を繰り返すことで、全身の骨が入れ替わっているのです。骨を支える歯槽骨も同じように、再生が行われます。しかし、歯がぬけるとそれを支える骨も必要なくなるので、破骨細胞の働きが骨芽細胞を上回り、骨が壊れ、やがて身体に吸収されていきます。つまり歯のないところに歯槽骨は存在しなくなってしまうのです。

話しを総義歯に戻しましょう。

総義歯を作ろうと思ったときは、歯が抜けてから相当時間がたっているために、当然歯槽骨は吸収されにくくなっています。いわゆる歯肉が痩せたという状態になっているために、上唇のあたりにしわがよって老人のような顔になるわけです。

老人のようになってしまった現在の顔に、歯をいれることでかつての顔に戻そうとするわけですからあわないのは当然です。

作る際に歯のあった時代の写真を見たり、その方の昔の顔をしっかりイメージしてそれに合わせて総義歯を作らなければ、ぴったり合う総義歯などできるはずがありません。

患者さんの歯の色と形、歯肉の色や顔貌、体格、失われた歯肉と歯槽骨の量はどれくらいか、顔の大きさなどを考慮し、歯のあった頃を想像し、どんな位置で咬合していたか、好きな食べ物や職業、社会的地位などをお聞きした上で三次元的に造形することで、使い勝手のよい総義歯が出来るのです。たとえば、政治家の方の総義歯を作るときは、前歯を大きく派手(歯出)に作ってあげることもあります。これだけでアクティブな印象になるからです。

総義歯は個人に合わせたフルオーダーメイドですから、絵画や彫刻といった世界に一つしかない芸術品を作るのと同じくらい技術をセンスが要求されるものなのです。総義歯を作る歯科医は、一流のアーティストでなければ最高のものは作れないといわれつのはそのためです。

参考文献 一生美味しい 総義歯&インプラント 波田野尚樹 石橋卓大共著 小学館 

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