ジルコニア
本日は、加藤大幸先生の著書「よくわかる歯科インプラント治療」よりお届けいたします。
ジルコニア
医療の現場では、2年おきくらいに新しい技術が導入され、大きなイノベーションが起きています。そのなかには、医療メーカーや製薬会社が売り込みをかけて大々的に発表するものがありますが、本当に使えるものはごくわずかなのです。
しかし、発表当時は全くダメなもの、それから2年も経つと先例されて使えるようになってきます。たとえば、型どりした歯型をコンピュータで三次元的に読み込んで機械で人工歯を作る技術、CAD/CAMがあります。当初は適合も悪い上にコストも高く、とても使える代物ではありませんでした。しかし、3年ほどまえからアメリカで徐々に普及してきて、あっという間に技術革新されました。
日本でも2006年11月に薬事法の認可が降りて、本格的にCAD/CAMを使った治療が始まりました。現在では工作精度も上がり、歯科技工士が造る補綴物(人工歯)と遜色ないレベルにまできていますし、人工ダイヤモンドであるジルコニアを使った人工歯も作れるようになっています。
ジルコニアの利点は、金属をまったく使うことなく、天然歯と遜色のない審美性を持った材質であることです。もちろん強度も強く、理想的な材料といってよく、身体に害がなく、生体親和性に優れたジルコニアは、今後の歯科治療を変えていくでしょう。
私のクリニックでも昨年からジルコニアを使った治療を開始していますが、非常に扱いやすく、しかも見た目も美しく、納得の行く治療が可能です。
まず型どりした歯型を専用の読みとり機でデータ化し、その情報だけをスウェーデン工場(現在は幕張にアジアの拠点が出来ました。)にメールで送信いたします。そうすると一週間くらいでジルコニアの人工歯の土台が出来上がってきます。
それを噛み合わせや歯の色のチェックをしながら仕上げて行くのですが、型どりから仕上げまで2週間もあれば完了です。将来的にはCAD/CAMで治療するのが当たり前になるでしょう。
ジルコニアクラウンとは、金属を一切使わない修復システムで、生体親和性と優れた審美性を追求する治療法です。
ジルコニアは審美的な白色を有しているだけではなく、生体親和性においてもすぐれ、医療分野で人工関節の球状骨頭部などに既に20年近く用いられています。
またスペースシャトルの断熱保護材やF1のブレーキディスクなどにも使用され、過酷な状況下での耐久性も証明されています。
今までのオールセラミッククラウンではどうしても強度的に弱く、せっかく治療したのにも関わらず割れてしまうことがありました。ジルコニアは人工ダイアモンドやセラミック包丁などに使われている材料で、通常のセラミック強度よりはるかに硬く、強靱で科学的に安定した物性を持っていますが、あまりにも硬すぎるために加工が難しく、今まで歯科治療に使うことが困難だったのです。
しかし工業界では一般的になってきたCAD/CAMという技術を使い、ジルコニアの塊(インゴット)をコンピュータで切除しえ作ることが可能となったのです。
今までは工作精度に問題があり、治療に使えるようなものではありませんでしたが、近年CAD/CAMの技術が進化して、現在では30ミクロン以下の適合も可能となり、技工士さんが手作業でつくる金属クラウンと遜色ないレベルに達しています。将来的にはインプラントを除くすべての人工歯がジルコニアに移行していくと思います。
現在、私のクリニックでもジルコニアクラウン・ブリッジを使用した治療を行っておりますが、透明性が高く、口腔内では天然歯ととものバランスのとれた自然な印象を与えることが出来ます。
歯を作り出す歯科技工士はとても過酷です。ひとつひとつハンドメイドで丁寧に仕上げられるのですが、彼らは毎日徹夜を覚悟で、応えてくれているのです。CAD/CAMが、彼らの過酷な労働条件を少しでも軽減してくれれば、技工士さん達のストレスも軽減されるでしょう。
お客さん一人一人にあった型を元に、革靴や服をつくるシステムの事です。昔は当たり前のように行われていたことですが、現在では限られた一部のセレブのための特別なサービスとなってしまいました。
例えば、ビスポークで靴を作るとだいたい50万円くらいします。こんなに高いの?と思うかもしれませんが、ビスポークは最低でも2足は作るのです。そして、一足目で当たりが強いところをや履き心地をチェックして、その靴を捨ててしまいます。もったいない事ですが、そうして出来上がった靴は靴擦れもなく、手入れを怠らなければ一生ものなのです。価値あるものはそれなりに高価なのです。
将来、歯科クリニックに行くと、「ビスポークにしますか?それとも機械で作りますか?」などと聞かれることになるかもしれません。
参考文献 よくわる歯科インプラント治療 加藤大幸著 現代書林
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