美人の条件1
本日は 、何日間に渡り、長谷川正康先生の「歯は命」より美人の条件をお届けいたします。
国語辞典を引きますと、人相とは「人のみめ」(見目、眉目)で、顔かたち、特に女性の顔立ち、器量(きりょう)とります。「きりょうよし」の意味は顔かたちが美しいこと、美貌のことです。
また、美人とは、①顔や姿の美しい女、②美しいこと、③才徳の優れた女性と書かれております。私は、美人とは主として①②を具備した女性であると思っています。この範囲の女性は数多くいます。
しかし、③を同時に持っている女性は意外に少ないようです。私は、三つの条件を備えている女性を「美しいひと」と表現しています。
美人(きれいな人)と美しい人は違うと思っています。
美人というのは、顔の美醜のみに限定されるものではなく、髪型、顔の形態、体型、服装、才徳などのバランスを総合して決まるようで、ミス・ユミバース、ミス・ワールドの審査選考の様子をみますとよくわかります。
最近は、わが国にも足の長い、すらりとした、いわゆる、股下75センチ以上の格好の良い若い女性が少なくなりました。おそらく、生活様式の変化で座敷に坐る習慣が少なくなったことと、食生活が洋式になった結果ではないかと思われます。
昔、伊藤絹子がミスユミバース第三位に入賞したとき、世界で宣伝されていたのは八頭身という言葉でした。彼女は実際は七頭身半くらいだと思われます。
ちょうど、その頃のアメリカ映画会社の採用標準は、百点満点で才能は五十%、残りの五十%は髪六点、眼十点、口唇九点、歯二点、バスト四点、ウェスト二点、ヒップ五点、手五点、足七点。すなわち首から上二十七点、手足十二点、BHW十一点で、これからすれば口唇と歯が十一点で、全体の十一%、五十点の率からすれば二十二点で、口歯がいかに擬人の魅力的要素として常識化されているかを物語っています。
人の美醜は、人種や国柄でその標準が違うもので、といって、その標準に一定の規定があるかというとそれはなく、また、それぞれの人種、お国柄で特に規定、基準が違うようです。彼らの好みや美意識は、その時代、時代の流行で決まるようです。
東洋人が観る西洋美人、西洋人が観る東洋美人は、多少なりとも自分の種族の美人の要素をもつものを選ぶ傾向があります。これは、おそらく親近感によるものと思われます。また、同時にまったくそれらに関係なく、別の範囲のい人を選ぶ傾向にあります。「なるほどザ・ワールド」というテレビ番組(今から20年以上前に放送していた番組です)の外国人の好みの日本人の男女芸能人を選ばせるクイズを観ても分かることでしょう。
一般に美醜の判断は顔が中心で、顔は人々に最も敏感に美醜の感じを与えるところです。
美人に対して、醜女(しこめ)に属する人をわが国では一般に「ブス」といいますが、なぜ不美人といわないで「ブス」というのでしょう。
夏になると紫色の美しい花を咲かせるトリカブトという植物があります。この根にはアルカロイドが含まれています。昔、狩人達は、この根を砕いて、その液を矢に付けて大きな動物を狩りました。このトリカブトを漢方薬(生薬)では「附子(ぶし)」といって、強心剤、強精剤に用いていました。人がこれを多量に飲んだり、傷口から入ったりすると、顔面蒼白、呼吸中枢に麻痺を起こし、同時に感情や思考力が停止し、無表情となります。この状態を「ブシ」による顔、訛って「ブス」というようになりました。
したがって、顔に動きのない、感情のない能面のような顔をブスと表現するようになりりました。
顔を構成する要素を見ると、まず、その土台となる頭骨、上下顎骨の表面(顔という敷地)に、額、眉(毛)、目尻、目(目とは主として眼球のみを表現し、瞳のこと示します)、鼻、頬、口唇(口唇と歯)、オトガイ、そして耳が造作として配置されています。これを顔立ち・生まれつきの顔といいます。
これらの顔の構成要素の各々には、それぞれ大小、細太、長短、厚薄などの違いはありますが、顔に対して、それぞれの配置が解剖学的平均的基準に合っているか否かによって、ある程度、美醜が決まるといわれています。
この配置バランスの良いのが美人の第一条件でしょう。
しかし、顔を構成する多くの要素の中で、眉(毛)、頬もそうですが、特に目と口は直接動的な機能をもって変化するので、外形の美醜に影響すること甚だしいのです。「目は口ほどに物を言い」また「目元千両口元万両」という諺(ことわざ)でも分かるとおりで、すばらしい顔の動き(動的機能)を持つのも美人の第二の条件でしょう。
動きのない顔があったら、これこそ「ブス」といっていい顔というものでしょう。噛む習慣をつけて、顔に動きのある明るい表情を作るようにしたいものです。
鼻や耳は静的存在なので、美醜に直接関係がないのでしょうか。
日本では昔から「目鼻立ち」と言われたくらい注目された部分です。鼻は、目、口と違い、耳元に立体的な存在で、鼻筋が通って高いのを良しとしています。したがって、鼻ぺちゃはブスに属することになります。
クレオパトラは、美人の条件の総てを備えた絶世の美女であったといいます。これに迷ったローマのアントニウスは、彼女にそそのかせれてローマに矢を引き、エジプトと共に滅亡してしまいました。世の多くの歴史家は「もし、クレオパトラの鼻が低かったら、歴史は変わったであろう」といいます。彼女の鼻は、国を滅ぼすほど格好がよかったのでしょう。
明日へ続きます。
参考文献 噛む 歯は命 長谷川正康著 求龍堂
「ブス」が漢方の「附子」からとは面白く、驚きです、
美 とはバランスなんですか。