生き物の歯
今日は、波多野尚樹先生が書かれた「歯から始まる怖い病気」の中から、動物の進化についてご紹介いたします。
歯で分かる動物の進化
動物の歯は実に多様です。
肉を食べるライオンやヒョウの歯は、鋭い牙です。牛は前歯4本と平べったい臼歯が4本の組み合わせ。海のギャングといわれるサメは、牙が何列にもわたってびっしりと生えています。木を削るビーバーは、2本の前歯が他の歯に比べてとても大きいです。
歯を見れば何の生物か分かるほど、多種多様な歯をしています。
これほど多くの形の歯は、その食べ物や食物を得る環境に適応しています。
『恐竜VSほ乳類』(NHK『恐竜』プロジェクト偏・ダイアモンド社刊行)に興味深いことが書いてありました。
今を遡ること二億二千万年前のことである。三畳紀後半の地球上は、大型恐竜が支配する日本だった。その恐竜の足元に隠れるように必死に生きていたのが、アデロバシレウスというネズミの大きさの生物である。アメリカで化石で発見されてその存在が分かったのだが、おそらく知られている最古のほ乳流と言われている。
現在地球上には人類も含め、約四千種類のほ乳類が生息しているが、これらすべてのほ乳類の元祖、発祥、祖先がこのネズミほどの大きさの生物なのだ。
その後、中国遼寧(りょうねい)省の一億二千五百万年前の地層から化石が発見された。エオマイアと名付けられた犬ほどの大きさのほ乳類は、アデバレシウスの二倍の大きさの脳を持っていた。
ほ乳類の脳の巨大化を可能にしたのが、「歯の進化」だといわれています。
最初のほ乳類アデロバレシウスは、山型の歯だったのに対して、エオマイアはトリボスフェニック型大臼歯という現在の有袋類などの持つ大臼歯を獲得していました。
大臼歯というのは、人間の奥歯でもわかるように、食物をすりつぶし消化吸収の効率をアップさせる機能があります。山型の歯しか持っていない時には切り裂くことしか出来ませんでした。しかし、大臼歯を持ったことで噛み切った後で、すりつぶす事が出来るようになりました。
こうなると、今まで食べていた昆虫よりも大きな物を食べることが出来るようになり、木の葉や皮、あるいは実なども食べることが出来ます。つまり、食べられるものの種類が格段に広がります。食べるものが増えれば、エネルギーを大量に体内に取り入れることが可能となります。
このエネルギー量の増加がポイントです。
すべての臓器の中で、脳が一番エネルギーを消費します。つまり、頭をフル稼働させようとすればエネルギーが要るようになります。
歯の進化によって、ほ乳類はエネルギーをふんだんに取り入れることが出来るようになったため、脳の容量も二倍に増えたというわけえであります。
まさにこれこそが進化において歯が果たした役割なのだと得心できます。歯と脳がどれだけ密接に関係しているかが分かっていただけると思います。
その後、アメリカ・テキサス州の一億二千万年前の地層から、ほ乳類の歯の化石が大量に見つかりました。牙の様な歯、小さな歯が連なっているもの、大臼歯、小臼歯など本当に様々な種類の歯であります。
なかには、恐竜の子供を胃の中に残したまま化石になっているほ乳類も見つかっています。
恐竜の足元で恐竜を恐れながら暮らしてきたほ乳類が、大きくなった脳で考え、体の機能をいっそう複雑に変化させて恐竜の子供を食べられるまでに進化しました。それをサポートしてきたのが歯の存在であります。
ほ乳類は歯を進化させることで、どれだけ食べられるものの範囲を広げ、エネルギー摂取量を増やしていたかが分かります。逆から考えると、歯の化石は、その歯を持つ生物がどのような食生活をしていたかも如実に物語っています。
生物にとって食べる事は、生命維持の基本です。つまり、歯を見れば生物が環境にどのように適応し、何を食べて生命を維持してきたか、その進化の過程が分かるのです。
歯 によって脳が進化する
エネルギーの摂取等
改めて歯の重用性やその生物の歴史が解るんですね。