味覚
私が毎月楽しみにしている雑誌に“GOETHE(ゲーテ)”があります。
中でも特にSONYの井出伸之さんの「対極を愉しむ」というエッセーがあるのです。その中で興味深い話が載っていたので、今回はそれをまるごとご紹介。
世界の食ビジネスでは「うまみ」は公用語
海外滞在が長くなると、無性に日本食が食べたくなるという人がいる。
僕はどちらかといえば、どこへ行っても現地の料理を愉しむほうだが、帰国直後はやはり寿司屋や天麩羅屋に駆け込むことになる。どういうわけだか、無性に食べたくなるのだ。
僕はこの春まで、スイスにある世界的な食品メーカー、ネスレの社外取締役を務めていた。就任当時、不思議に感じたことがある。英語で議論している最中に、食に関するある日本語がときどき混じるのだ。「うまみ」である。
なんと日本の「うまみ」は、「 U M A M I 」として世界で通用する言葉になっていたのだ。
もともと日本食は海外でも評価が高い。さらに日本の食に関する言葉が、世界の公用語にもなっていた。これは日本料理のレベルの高さを示す話である。
しかし、単においしいというだけでは、日本人があれほど日本食を食べたくなる理由にならないと思うのだ。僕はこの疑問が解けないでいた。
ところが、先日、あるパーティーで食品メーカーの方から、なんとも興味深い説を教えていただいた。初対面だったが、彼の会社のキャッチフレーズについて始まった立ち話は、僕が思わず膝を打つほどの話へと展開したのだ。
日本料理が、独自の味わいを出せる理由
その説とはこうである。そのそもうまみは、2つの成分に大別できるという。アミノ酸系と核酸系だ。前者で代表的なものが、グルタミン酸。後者はイノシン酸である。
日本料理の大きな特徴は、うまみがアミノ酸系でも核酸系でもないこと。なんと、この2つを複合し、掛け合わせることによって生まれるうまみだというのだ。
例えば、日本料理のベースである「だし」は、昆布とかつお節から取る。これは昆布のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸が掛け合わされることによって深みのある味が出ている。
それぞれを単独で使うよりも、うまみが10倍になると言われているというのだ。刺身も同様である。生魚のイノシン酸としょうゆのグルタミン酸が掛け合わさり、何倍ものうまみが出る。この掛け合わせこそが、日本料理のうまみの原点なのだ、と。
対してフランス料理に代表される欧米系の料理の特徴は、核酸系だという。これこそが、日本人が海外で日本料理を食べたくなる理由なのだ。
単一に核酸系ばかり食しているうち、あの深みのある掛け合わせの味を体が求め始めるのだ。また、欧米の料理が核酸系ということは、アミノ酸系が取れない。その結果、本能的に体がアミノ酸を求めるというのである。
フランス料理にも掛け合わせがあった
だが、欧米料理の中でも、日本人に特に好まれる料理がある。イタリヤ料理だ。この料理も、上記の仮説で説明できる。
イタリヤ料理は、グルタミン酸が多く含まれるトマトやチーズをイノシン酸である肉に合わせることが多い。だからフランス料理などに比べると、日本人が好む掛け合わせ的「うまみ」を味わうことが出来るというのだ。
ただし、グルタミン酸とイノシン酸の掛け合わせは、微妙な比率が「うまみ」を左右するらしい。黄金比率は5:1だという。
実はイタリヤ料理や韓国料理も、掛け合わせによる複合的な味を出している。だから、日本人は好んで食べる。ただし、比率がもっとも洗礼されているのが日本料理。だからこそ日本料理は、日本人はもちろん、世界中のグルメを堪能させているのである。
ただ、この仮説を聞いて、僕はフランス料理のすごさにも改めて気づくことになった。日本料理とは違う“掛け合わせ”である。
例えばチーズとワイン。そこには理屈を越えたうまさがある。うまいチーズと冷えた白ワインが口の中でとろけていく味は、なにものにも換えがたい。ここにも「うまみ」の秘密があるのか、ぜひ探求してみなければ。
また僕の好きなパリのレストラン「SAVOY」があるが、この店には「パンのソムリエ」がいる。注文した料理にあうパンをクルミ入り、オリーブオイル風味などなど十数種類のパンから選んでくれるのである。羊の肉でこのソースなら、このパンで、という具合だ。これがまた美味しいのである。
そしてフランス料理は、貪欲に日本の味を吸収してきた。ヌーベルキュイジーヌはその代表例である。いわば「対極」をかけあわせてしまったのである。
実は、いかに日本料理を高く評価する欧米人も、日本料理ばかり食べていると、自国の料理を食べたくなるのだという。そこには日本料理とは違う“掛け合わせ”があるのあkもしれない。対極の妙味である。
どうですか。私はこの文章を読むたびに、日本の味を再確認すると同時に旅行へ出かけ、美味しい料理に舌鼓をうちたくなるのですが、いかが?
お腹空いてきますね。。。
鰹節に代表されるイノシン酸、幼少時~10歳くらいまでに馴染んでおけばそういう風に味覚が作られ日本食が好きになると聞いたこともあります。○クド○ルドなどが、○ッピーセットなどで子供を取り込もうとしているのは、そういう風に味覚を覚えさせようとしてるからだとか何とか。ファストフードやジャンクフードで育った人はそこからなかなか抜けられないということなので、うちの子はまだハンバーガーデビュウはしておりません。。。日本食好きになって欲しいですね。
日本料理に改めて脱帽です
歴史 お先祖様 先達に感謝いたしました
毎日意識しないで食している我々は、
海外旅行や疲れた後に恋しくなる日本料理
私達は幸せなんですね。世界一の うまみ の中に居る
のだから。
須田先生
最近、先生のブログのコメントがサボりがちで申し訳ありません。
私も子どもが生まれたら、ジャンクデビューは少しでも送らせたいと思います。
ゆここさん
本当に、疲れている時なんか、日本料理は美味しいですよね。つくづく日本人で良かったと思う瞬間です。
コメントありがとうございました。