国家試験合格発表当日
私にはとても大事にしている友人がいます。
彼とは大学時代は全くつきあいが無く、しかもお互いに「なんだ、あいつは!!」みたいに思っていたのです。
彼は大学時代から頭が良く、私が「なんだあいつは!!」と思っていたのは、単なるひがみでしたけれども。(私はいつも単位ぎりぎりで、先生のレーダーには引っかからないステルスみたいな感じでした。)
その彼とは大学を卒業してから同じ講座(医局)に入りました。その講座は局部義歯の講座でした。
私の卒業した当時、私の大学は国家試験の合格発表は、大学の所属する講座にて合否を確認するというとても恐ろしい現実がありました。
受かれば良いけど、落ちたら目も当てられません。すごすごと荷物をまとめて内定の決まっている講座を去らなければなりません。歯医者でないものをおいておくほど大学は寛容ではないですから。
国試の発表の日は今も忘れる事が出来ません。
その日は担任の先生から、
「国試の発表は12時頃。何かあれば必ず本人に連絡を入れるから必ず連絡を取れるようにしておくこと」
という連絡を受けていました。一応、自己採点では合格の目安が付いていたのですが、そんな物全く当てにできません。
その当時出回り始めた携帯電話を白衣のポケットに入れて落ちつきなく「電話が鳴らないでくれ~」という思いで待っていました。
12時を回ったか、回らないかくらいです。突然私の携帯電話が鳴り始めました。頭が急に真っ白になり、背中に冷や汗が流れました。
「やっぱり、国試駄目だったか~」と思い、電話に出ました。
「あなた、どうだったの?」既に歯科医師になっている姉からの電話でした。
「も~、勘弁してよ。今、合否分かるところだから。後で連絡するよ。」
母が気が気では無く、姉に合否の確認をさせていたのでした。
とりあえず、不合格の連絡では無かったことにほっとしつつ、深呼吸すると、うしろから肩を叩かれました。
「本当に今度こそ駄目だ(激汗!!)」と思って振り返ると、先の友人が立っていて、
「猪狩先生、おめでとうございます。」と言ってくれました。
今まであまりしゃべったこと無かったのに、国試対策委員の彼が真っ先に心配してくれているであろう私に教えてくれたのです。本当にうれしくて、すぐに実家に連絡を入れたのを覚えています。(このブログを書きながらも、思い出すと涙がでます)
彼とはその後、プライベートから仕事に関してもすべてオープンに相談出来るくらい親しくさせてもらっています。
どうして大学時代に一言も話さなかったのに、今はこうして仲良くさせてもらっているのか?本当に人生、何がきっかけで友情が芽生えるのか分かりませんね。
すくなくとも、あの国試発表の日は患者さんを助けなければいけないという使命感ににた責任と何者にも代え難い友人を手に入れた最高の日でした。
ドキドキしながら読みました、若い時が、なつかしいです。
猪狩先生、と呼ばれる人がいてくれてうれしい。ありがとう。
重たいあのおもい、身内だから同じ場面に共存する。
そしておもいがけないところに、かけがいのない人がいる。いずれも出会にしてすばらしい財産ですね。
更なる出会いを期待して。