患者さんの言葉
毎日、多くの患者さんと接していると、自分でも気がつかなかったことが多く発見できます。
歯科医師になりたての頃は、今より知識(国家試験レベル)があふれていたのですが、それは教科書レベルの、臨床とは少し遠い知識(もちろん自己考察、診断の際には非常に役に立ちます)ばかりで、患者さんの言い分より、自分の内面と対話していた様に思います。
初診でお見えになった患者さんとは十分時間をとってお話をさせていただくのですが、そのときの会話が非常に自分の診療に役に立っています。
たとえば、何人かの患者さんが同じ病名の病気だったとしても、患者さんにとってははじめての病気がほとんどなわけで、それぞれ自分の痛いところ、気になるところを表現するニュアンスはそれぞれが違います。重い感じがする、鈍痛がある、指で押すと痛い、・・・・・etc。
患者さんは必死に自分の症状を訴えてくるのですが、それらを頭の中で順序良く整理していくと、患者さんの痛みのつらさが頭の中に浮かんでくるようになりました。
昔は、「この歯は神経がないのだから、痛いわけないだろ」だとか、「実際に調べてみても上下の歯は当たってないから噛み合わせが高いわけない」、「入れ歯が痛いといっても、どこにも入れ歯の傷が見えないから、たぶん患者さんの思い過ごしだろう」とか思っていました。
しかし、口腔内というのは、実は敏感な様に見えて、鈍感なところもあるということがわかってきたのです。患者さんの言葉通りに丹念に言われた場所をチェックしていくと、患者さんの指し示した場所よりちょっと奥に、訴えているような傷があったり、入れ歯があたって痛いという場所をじっくり指で追っていくと、口の開け閉めの際に当たっていることがわかったりと、やや鈍感な口腔内のため訴えている場所がかなりアバウトなことが多いのです。
そのため患者さんの訴えていることは100%正しいと自分で決めつけて診断を行うことにしています。そのため、入れ歯の調整にも患者さんが納得していただけるまで通っていただくことにしています。
そこで、最初に言った、今までの同じ病名の患者さんが訴えた言葉を覚えておいて、順に聞いていくのです。たとえば、初診のときの会話はこんな感じです。
「先生、ここの歯が痛いのです。」
「ここですか?重い感じですか?」
「重い感じではないです。」
「では鈍痛という感じですか?」
「鈍痛って感じでも無いです。」
「では、歯肉をこうやって(実際に押してみる)、押すと痛いですか?」
「そうです、その感じです。」
同じ病名でも患者さんにとっては、住んでいる環境、言葉、生活習慣で訴える表現は違います。多くの患者さんを診せていただいて思うことは、患者さんの目線に立って診査・診断していくことが、患者さんを救う早道になるのだなと思います。
今ではひとつの病名に対しては、どのような表現があるのかということを、手帳にまとめているのですが、かなり限定されてきました。
痛みを早く解決していくには正確な診断名が必要です。そのためこれからもたくさんの患者さんの訴えを素直に聞いて、自分の中の診断能力を高めていかなければいけないと思っています。
毎日、患者さんによって多くの事を学ばせてもらっています。
教えることは教えられることですね。
その昔一本の虫歯を放置したためそれが原因で、幾人かのドクターを困らせ仕舞いには大学に行くはめに、歯の大切さを身をもって経験した一人です。
又かぶせていた歯に空気がたまったのだとか、恥も外聞もなく歩道橋のうえで座りこんでしまったこと、あの時の痛さ忘れません。すばらしいドクターに出会い今があります。
yyy様
コメントありがとうございます。
そうですね、非常に勉強になります。
おばん様
コメントありがとうございます。
それはそれは、ごく労なさったのですね。今は大丈夫ですか?過去の経験を元に、再発を防いでくれればと思います。