レンドルとラケット。
診療している時に気がついたのですが、いつも使っているコンポジットレジンのパッケージの形態が変わっていました。
コンポジットレジンとは、白い粘土(医療用プラスティック)の様なもので、特殊な青い光を当てると固まる材料です。我々はコンポジットレジンの頭文字をとってCR(シーアール)と略語で読んでいます。
私の個人的な考えなのですが、あまり新し過ぎる物は使わない傾向にあります。
使い始めてから副作用が出たら怖いので、ある程度使用年度が過ぎて安全性が実証されているものが好きです(だから未だにインプラントは新しいものが使えない。。安全第一なため昔から殆ど同じインプラントばかり)。
それと、再現性の問題です。
歯の寿命は大体4〜50年くらいあるのですが、材料の寿命はそれほど長くはありません。
そのため、歯の寿命が来る前に材料の寿命が必ず来ますので、再治療と言うことになります。
患者さんは以前と同じ様にと望まれる場合が多いので、材料のメーカーや品番を新製品が出るたびに変えていたのでは以前と同じように色調の歯の色を出す再現性が無くなってしまうのが怖いのです。
カルテに色調の品番さえ記入して置けば、同じ色のCRが使えて、術者の私も安心です(安全性は確保出来ていますので)。
写真の左が当たらしい形態のCR、右は従来の形態のCR。
で、なんで私がこんな事を書いたかと言えば、ちょっと診療するときに形態が変化していたために、戸惑ったからなんです。
こんな逸話があります。
私が高校生の頃なのですが、私はその時の趣味はテニスだったのですが、海外のプロのプレーを観るのも大好きでした。
私が一番記憶に残っているプレーヤーと言えば、マッケンローとレンドルです。
マッケンローはネットに出て攻撃的な感覚重視のテニス。レンドルは堅実に守りを固めて確実に射貫くいわば型にはめるテニス。
基本的にどちらも痺れるほどかっこよかったです(笑)。
お小遣いを貯めて、皆で東京にレンドルの試合を観に行った事を今でも覚えています。
で、レンドルは型にはめてカチッとテニスをするプレースタイルだったのですが彼には悩みがありました。どうしてウィンブルドンで優勝出来なかったのです。
今でこそラケットの発達で後方でラリー戦が当たり前ですが、当時はラケットが今ほど発達していませんでしたから、身体的に優れた選手が自分のプレースタイルや戦術を変えて試合に望ま無いといけませんでした。
そのため、サーフェイス(テニスコートの種類、芝だったり土だったり、コンクリートだった)の違いで得手不得手があったのです。
レンドルは守りの選手なので、土のサーフェイスの様に球足の遅いテニスには強いのですが、球足の速い芝のウィンブルドンは苦手だったのです。
晩年はついにラケットを変えて、攻撃性の高いプレーを目指しました。
ちょうど長年契約していたアディダスとの契約が切れる時だったため、日本のミズノとの契約をむすんだのです。ウィンブルドンで勝つために。
その時、レンドルがミズノにラケットを作るときに条件として出したのが今まで使用していたアディダスGTX-PROの柄の部分の形態を新しいラケットのミズノ・イワンレンドルタイプを作るときに同じ形態にして欲しいとオーダーしたのです。
バックハンドのテイクバックの時の感覚を同じしたいという理由で。
徹底的に型にこだわるレンドルらしい職人気質な感じがします。
振り返って調べて観ると、アディダス以前に使用していたクナイスルのラケットの柄も同じ形態をしているのです。
やはり、プロになるとコンマ、何ミリにまでこだわるのだなと思った経験があります。
私もレンドルほどではないのですが、やはり同じ診療スタイル(道具だったり、やり方だったり)にはこだわりたいと思います。
最初レンドルの写真がアディダスのラケットの時のバックハンドテイクバック。次がミズノのラケットでのテイクバック。
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