哺乳動物の歯の決め手
本日は、西原克成先生の著書『歯はヒトの魂である~歯医者の知らない根本治療~』よりお届けいたします。
◇よく噛める歯が哺乳動物の決め手
歯には、食べる時にかじり取ったり、引き裂いたり、砕いてすりつぶしたりするほかに、ことばを話たり詩や歌を読む時、舌と口唇と頬粘膜と共同して音を作りだす働きもあります。
さらに食物や唾液を嚥下(飲み込む)する時に必要な、口唇・舌ととに陰圧を作るための密閉の働きがあります。
食べることは、生命を維持するうえで、呼吸と並んで最も大切なことです。
ヒトは雑食動物です。哺乳動物のうち最も精密に切断磨砕(トリボスフェニックス=切り裂きとすり潰し)型の臼歯を持つヒトは、よく噛ま(咀嚼)ないと充分に消化・吸収されません。
脊椎動物の定義は「骨性の脊柱をもつ脊索動物で、特徴器官が腸管呼吸の鰓と肺」です。そして哺乳動物とは「長ずると咀嚼を行うことになる吸啜のシステムを持って生まれてくる脊椎動物」ですから、咀嚼を行う歯が哺乳動物の決め手となる器官です。
そのうえ、咀嚼器官を動かすすべての筋肉が呼吸の内臓鰓腸筋肉に由来します。酸素を吸収しながら咀嚼し、咀嚼しながら呼吸するのです。
哺乳動物の極端に発達している内臓頭蓋の顎・口腔・顔面の筋群は、舌の含めてすべて、大半の時間を食べることに費やして、顎を動かして、咀嚼しないと十分な外呼吸が行われません。
咀嚼を充分にするだけで心臓が生き生きしてきます。咀嚼とともに行う外呼吸が不十分がと心臓もぐったりとして、当然ミトコンドリアで行われる細胞呼吸(内呼吸)も不十分となります。
従って、役にたつ歯は、よく噛めなければなりません。顎に植わっている歯には歯根膜という繊維関節があり、頭蓋骨も縫合によって繊維関節で結合している。
咀嚼時も呼吸時もこれらの繊維関節が反復的に波動運動をする時、この顎と頭蓋骨は、歯があれば生涯にわたって繊維関節部で骨髄造血を行っています。
外呼吸と内呼吸の仲立ちをするのが心臓脈管系と骨髄造血系ですから、咀嚼がうまくいかないと急速に体力が衰えるのです。
頭蓋骨以外で生涯にわたって骨髄造血を行うのは、腰骨の腸骨(頭の顎に相当する)と手や足の関節骨・肋骨等の関節骨です。
顎は上顎が固定されていて、下顎がよく動くようになっています。上顎の歯列弓の歯全体でもちをつく時の臼の役割をして下顎の歯列弓の歯全体で杵の役割をしています。上顎の骨の植わっている歯列と下顎の歯列を組み合わせように、下顎骨を頭の骨(側頭骨)に耳孔の前で結んでいるのが顎関節です。
美しくないゆがんだ歯列弓は、生体力学の力の偏りでできますから、当然顎の型と顎関節の型にも変形が及びます。そうするとよく噛めなくなるので役に立ちにくい歯になります。
役に立たない歯というのがあるのでしょうか。歯列から外に出た八重歯、いつまでも顎の骨に埋まったままの歯(歯列が狭まって充分に萌出出来ない歯)、斜めに生えている親知らず(智歯)、歯周病でぐらぐらになった歯や腐って根だけになった歯は、そのままでは何も役にはたちません。さらにかみ合わせが駄目になった歯列はあまりよく噛むことが出来ず、かみ合わせの不調で役に立つ歯とはいえなくなります。
参考文献 歯はヒトの魂である~歯医者の知らない根本治療~ 西原克成著 青灯社
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