せっかく作っても食べてくれない
本日は、 田村文誉先生の著書、『上手に食べるために2~摂取指導で出会った子どもたち』よりお届けいたします。
◇せっかく作っても食べてくれない
料理が得意なお母さんも、そうでないお母さんも、お子さんに十分に栄養をとって欲しい、美味しく食べて欲しいという気持ちは同じでしょう。どちらのタイプのお母さんも、自分が心をこめて作った料理をお子さんが食べてくれないときには、悲しくなってしまうことでしょう。
Lちゃんのお母さんは、料理があまり得意ではありません。Lちゃんは一人っ子なのでお母さんの愛情を一身に受けています。Lちゃんは広汎性発達障害で、地域の小学校に通っています。学校のお友達とけんかをして帰ってくることもありますが、学校は大好きで、毎日元気に通学しています。
お母さんは専業主婦で、家に一人でいることが多く、その間、いつもLちゃんのことが心配でたまらないのです。毎日、なんとか頑張って料理を作っているのですが、せっかく作った夕飯なのにLちゃんはほとんど食べてくれません。「これでは栄養失調になってしまう!」とお母さんはまたまた心配になります。
でも、学校の先生によれば、「給食はよく食べていますよ。おかわりもします」とのこと。それで、お母さんは、「よっぽど私の料理が美味しくないのね!」とますます落ち込んでしまうのです。お父さんは「美味しいよ」と言ってくれるのですが、肝心のLちゃんが食べてくれなくてはどうしようもありません。
お母さんの話しを聞いていて、「お母さんはLちゃんのことが心配でたまらない→深刻な顔をしてしまう→Lちゃんは暗い顔のお母さんはイヤ→だから食べたくない→学校では楽しいので食べる→お母さんはさらに落ち込む・・・・」といった悪循環になってしまっているのかなと思いました。
昼間ずっと一人でいて、お子さんのことを一生懸命気にかけているお母さんは、このような負のサイクルにはまってしまうことがあるようです。一人で抱え込まないで、気持ちを分かってくれる専門家に相談出来るとよいなと思います。
料理な得意なお母さんも、お子さんが食べてくれないと、それはがっかりしますよね。
Nちゃんのお母さんは、フルタイムで働いていて、忙しい毎日なのですが、料理が得意で朝と夜の食事はきちんと作っています。けれどもNちゃんは、好き嫌いが多く、食べたり食べなかったりするのです。太っても痩せてもいないので、きっと食べている量は足りているのでしょうが、今日食べたと思ったら、明日は食べないといった状況で、お母さんは何をどれくらい作ったらよいか予測がつかないので困っています。
Nちゃんは自閉傾向があるといわれています。自閉のお子さんの場合、白いご飯しか食べない、あるいは逆に白いご飯は食べない、決まった色のおかずにこだわるなど、偏食を示す場合があります。自閉のお子さんは偏食を治すのは簡単なことではありません。無理強いしても逆効果なため、本人が受け入れられる食べ物が、徐々に増えていくのを待つしかないでしょう。
料理が得意なお母さんにとって、は腕の振るいがいがなく、また仕事でくたくたに疲れて帰ってきて必死で料理しても、まったく食べてくれなかったりするので、もしかすると大声で叫びたくなる時があるかもしれません。とても辛いことだと思います。
「せっかく作っても食べてくれない」、という悩みを抱えているお母さんはたくさんいます。専門家に相談しても、即効性のある答えは得られないかもしれません。でも、よく話しを聞き、気持ちをわかってくれる専門家を見つけることで、安心して食事の時間を育んでいけるのではないでしょうか。
参考文献 上手に食べるために2~摂取指導で出会った子どもたち 田村文誉著 医歯薬出版
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