アスリートの口腔衛生
本日は、デンタルトリビューン紙2008年11月号よりお届けいたします。
◇アスリートの口腔衛生
(米国)本年8月8日から17日間にわたって開催された北京オリンピックでは、多くのアスリートの活躍を見ることが出来ましたが、アスリートにとって、口腔衛生を良好な状態に維持しておくことは、トレーニングを行う上でも、競技に参加するうえでも非常に重要です。
無痛治療やYouTubeでの受診行動促進に取り組んでいる米ペンシルベニア州の歯科医師Jerry Gordon氏が、sの重要性をデンタルトリビューンに発表しました。
◇競技前には検査が必要
競技に参加する選手は全員、かかりつけ歯科医師による齲蝕、歯周病、欠損歯、感染歯の検査を受け、さらに第三大臼歯の位置を確かめうるために、パノラマX線写真を撮影することが進められます。特に、対戦相手との身体的な接触がある競技では、顎骨骨折のリスクが高いため、下顎枝、下顎角、下顎骨下縁付近に第三大臼歯が位置している場合には、抜歯を検討するべきです。
歯の健康管理が適切に行われていなければ、選手の成績や競技スケジュールにも悪影響が及ぶ可能性があります。実際に支障が出たケースも少なくありません。
オリンピック総合病院で施された歯科治療件数は、1992年のバルセロナ大会で約600件であったのが、1996年のアトランタ大会では900件以上に増えました。大会前に適切な検査と治療を行っていれば、オリンピック会場に来てまで治療をしなければならないケースは大幅に減っていたはずです。
◇競技中の口腔のけがに注意
アスリートにはけがは付きものです。歯の場合は、特に前歯の欠けや位置のずれ、脱落などが多く、顔面では、唇の裂傷、顎骨骨折、および顎関節の損傷などが多く見られます。また、顎や頭部への衝撃は脳震盪を引き起こす可能性があり、意識消失やめまい、あるいはさらに重篤な合併症の原因となることがあります。
歯や顔面のけがには強い痛みが伴い、多くの治療費を要することが多いのです。これらを予防するためにも、競技中には歯科医師が作製したマウスガードを装着することが勧められます。
米国歯科医師会(ADA)が行った調査によると、高校のバスケットボール選手がマウスガードを装着せずに試合に出場した場合、31%が歯や顔面になんらかの外傷を負っていることが報告されています。一方、マウスガードを装着せずに試合に出場した場合、外傷を負った選手はわずか4.2%でした。
このように、マウスガードの装着により、けがの予防効果は7倍も改善します。しかし、このような統計があるにもかかわらず、毎年200万本以上の歯が競技中に脱落しており、その多くが、マウスガードを装着していないアスリートの歯です。
マウスガードの装着はほとんどのスポーツで勧められます。特に、身体的な接触が多いボクシングやアメリカンフットボール、格闘技、キックボクシング、レスリング、ストリートホッケーなどでは、自分の歯に合わせて制作されたオーダーメイドが必須であるといえます。
◇スポーツ飲料の後には水を摂取
そのほか、より良好な口腔衛生を維持するためにスポーツ選手が知っておくべき事として、スポーツ飲料の影響が挙げられます。ほとんどのスポーツ飲料は、ソーダ水と同程度の酸性度であることが確認されており、酸蝕症を引き起こす可能性があります。従って、スポーツ飲料を飲む際にはマウスガードを口の中から取りだし、スポーツ飲料は口の中には溜めずに素早く飲み込むか、ストローを使って歯に触れないように飲み込むことを心がけます。さらに、可能であればスポーツ飲料を飲んだ直後には、酸の濃度を薄めるために水を飲むことを強く推奨します。
歯のトラブルによって、選手の成績や競技スケジュールに悪影響が出ないようにするためにも、適切な口腔衛生管理やマウスガードの装着を行うとともに、スポーツ飲料の飲み方にも注意を払うことが重要です。
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