歯科金属アレルギーで何が起こる?2
昨日の続きです。本日も吉川先生の著書からお届けいたします。
金属アレルギーに関連のある疾患
☆掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
歯科金属アレルギーの関連のある疾患として、最もよく知られているものが「掌蹠膿疱症」とよばれる皮膚炎です。
手や足にニキビのようなぷつぷつの湿疹が出来て、それが水疱になったり膿疱になったりします。痛くて立てない、歩けないというほどの症状が悪化することもあり、さらにひどくなると、女優の奈美悦子さんがなったような「掌蹠膿疱症性骨関節炎」という関節症状も引き起こします。こうなると、激痛に苦しむことになります。
ちなみに奈美さんの場合は、その原因が口腔内金属と関係があったのかどうかはわかりません。著書「死んでたまるか」(主婦と生活社)には、口の中の金属が原因かもしれないと考えて歯科医院へと行ったということは書いてありました。
そこまでひどくならないにしても、治ったと思ったらまた悪くなるということを繰り返す治りにくい病気で、皮膚科の特定疾患の一つとされています。
もちろん、歯科金属だけが原因ではありません。「金属アレルギー」の他に「感染アレルギー」(病巣アレルギー)もあげられます。扁桃腺から起こることは以前からよく知られていますし、体のどこかにある慢性的な感染病巣が原因になることも少なくはありません。
歯科領域では、根尖病巣(歯の根の先に出来る病巣、レントゲンで黒く映る)や慢性の重度の歯周病が原因になる場合もあります。
しかし、最近になって、原因が分からないような場合に、メタルフリーにすると、掌蹠膿疱症が治ってしまうことが多いことが分かってきました。こうして、ようやく口腔内の金属が原因の一つとして考えられるようになってきたのです。
〔症例〕頑固な掌蹠膿疱症、メタルフリーにすると半年で完治
27歳のかわいらしい女性、Bさんは、いつもロングスカートをはいています。それは高校生のころから出始めた足の湿疹が気になるからです。手にはニキビのようなブツブツが出ていました。
皮膚科には、何年も通っていました。掌蹠膿疱症と診断され治療を続けましたが、良くなったり悪くなったりそ繰り返し、いっこうに治りません。
皮膚科には良い温泉があると聞けば、遠方といわず訪れました。(Bさんは、「いちばん効果があったのは桃太郎温泉だったと言っていました)しかし、やはり治りませんでした。
インターネットで調べて「金属アレルギーが原因かもしれない」と考えたBさんは歯科金属アレルギー治療を行っている当院のホームページを見て来院されました。
パッチテストを行ってみると、金にアレルギー反応が現れました。
よく、「金ならアレルギーは出ないから、金属アレルギーの人は金を使うといいよ」と言われますが、パッチテストを行っている歯科医としては、金にアレルギー陽性反応を示す人は少なくありません。油断は禁物です。
Bさんの口の中を診てみると、金合金、金銀パラジウム合金などあが入っていましたので、相談の結果、メタルフリーの治療を行うことになりました。こうして口の中の金属をすべて除去すると、半年後、あれだけ頑固だった掌蹠膿疱症が、意外なほどあっさり治ってしまいました。きれいになった足を見て、Bさんは喜んでいました。
明日へ続きます
参考文献 金属アレルギーと歯科治療 吉川涼一著 現代書林
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