オールオン4
本日は、加藤大幸先生の著書「よくわかる 歯科インプラント治療」からお送りします。
オールオン4
オールオン4(All on 4)はブローネマルクインプラントを発売しているノーベルバイオケア社の即時埋入治療(イミディエートファンクション)のコンセプトをもとに、ポルトガル・リスボン市の歯科医パウロ・マロ博士(Dr.Paulo Malo)によって開発された治療方です。
従来、上顎の奥歯には上顎洞という副鼻腔があり、インプラントを埋入する場合に骨移植などの複雑な処置が必要なケースが多々ありました。また下顎に関しては下顎管といわれる神経が走っているため、無理にインプラントを埋入すると、神経を傷つけてしまい麻痺が起こることがありました。
その上顎洞や下顎管を避けるために、奥歯に埋入するインプラントに傾斜を付けて安全に手術をする発想から生まれたのが、オールオン4です。
無歯顎患者のインプラント治療にはオールオン4の他にもボーンアンカードフルブリッジ、オーバーデンチャー、ザイゴマインプラントなどがありますが、手術後すぐに固定性の人工歯をいれることが出来るのは、オールオン4だけです。
この方法はインプラントを4本しか用いないために治療による刺激が少なく、しかも経済的です。さらに審美的に美しく治療することが可能です。
インプラントの手術自体は、1時間くらいでおわってしまいます。午前中に手術を終え、型どりをしてから患者さんにはしばらく休んでいただきます。
その間に仮の人工歯を制作しますので、夕方までには新しいブリッジを装着して帰宅できるのです。
歯の抜けている期間がまったく無いため、患者さんは正常に食事をすることができ、社会生活に不便をきたすこともありません。
高齢者のQOL(生活の質)は食生活と密接な関係を保っていますので、オールオン4によるインプラント治療は老後の人生を豊かにする必要十分条件となるはずです。今日の高齢者が求める自己イメージは、「若さ」です。この考え方はアンチエイジング(坑加齢)医療の路線と一致します。
オールオン4を用いるということは、今までインプラント治療が不可能とされていた骨量が不足する患者さんにも、ひろく適応できるということを意味しています。上顎の臼歯部、奥歯では骨吸収のために上顎洞が近接してインプラントを埋入できないことが多いのですが、こうした状況でもインプラントを傾斜させることによって、小臼歯(犬歯より奥の歯)の部位から上顎洞を避けて埋入することができます。上顎のサイナスリフトや骨移植の適応症の80%は、オールオン4を用いることによって回避できるのです。
オールオン4は下顎においても有効です。下顎の臼歯部(奥歯)では、合わない入れ歯を入れているために歯槽骨が吸収して下顎管(神経)との距離が薄くなり、インプラントが埋入できないことが多々あります。しかし、オトガイ孔(神経孔)の前方には十分なボリュームの骨が存在し、解剖学的にもしっかりしていますので、小臼歯相当部から傾斜した状態でインプラントを入れることによって、神経近くを避けて前方の豊富な骨を利用することが出来るのです。
このようにオールオン4の手法なら、上下顎の臼歯部(奥歯)に存在する解剖学的な制約を傾斜埋入することによって克服することができるので、骨量に問題を抱えてインプラント治療を諦めていた総入れ歯の患者さんには大きな福音となるでしょう。
そして、サイナスリフトや大きな骨移植のような高価で刺激の強い治療法は不要となり、患者さんの肉体的、精神的、経済的負担は大幅に軽減されるはずです。
従来、骨密度に問題がある場合には、骨移植を行ったり1本あたりにかかる力を分散させることによって上下顎の豊富に骨があるところを利用できますので、インプラント治療が抱えていた骨量という高いハードルが取り払われたといえます。
参考文献 よくわかる歯科インプラント治療 加藤大幸著 現代書林
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