よく噛めるとは
本日は、佐藤考先生の著書「歯からはじめよう!アンチエイジング」よりお届けいたします。
「よく噛める」とはどういうことか
「よく噛む」には「よく噛める」状態が必要
「よく噛む」ことはアンチエイジングにとって大切な要素です。「よく噛む」には「よく噛める」状態にする必要があります。自分では噛めていると思っても噛めないことも多く、また逆に噛めないと訴える人もいます。
それでは、「よく噛む」とはどういうことなのでしょうか。意識して噛む回数を多くし、時間を掛けて出来るだけ細かくすりつぶすことなのでしょうか。
一口ごとに数十回も噛むことは非常にむずかしいことです。実際、そのように噛めば食事はドロドロになり、味もまずくなり、食事そのものを楽しめなくなります。
ましてやまずい物はとてもかみ続けることは出来ません。食事をすることはただ噛むだけではないからです。噛むことは、食事が喉を通るだけの大きさに砕き、唾液と全体が混ざることであって、食物をより細かくするのが目的ではないのです。
「よく噛む」ことは意識して行う行動で、よく噛めないと途中で疲れていやになって飲み込んでしまいます。
ですから、よく噛める歯があってはじめて「よく噛む」ことができるのです。その歯がグラグラしたり、歯が喪失していたのではよく噛むことは出来ません。しかし、単に丈夫な歯が揃っているから噛めるとは限らないのです。
「噛める」とは意識的なものではなく、歯のかみ合わせがバランスよく機能して得られる感覚なのです。これは一般的には「歯ごたえ」と表現しているのかもしれません。
人は食物を口の中へ入れ、無意識に歯の上にのせて噛み始めます。その噛み始めの位置と噛み込んだ後の位置が、常に同じでズレていないことが大切です。これがズレていると、どこで噛んで良いのかわからないという感覚になります。このことは、つまり顎の動きのスタート地点とゴール地点が常に同じ場所にあって、必ず元の位置に戻ってくることが「噛める」、あるいは「噛めている」という感覚になります。
剪断、圧断、臼磨の三機能
また、食物を噛んでいる間は、上下の歯は摂食していません。ある程度食物が小さくなり量が少なくなると、最後には上下の歯が当たるようになってきます。そのため、噛むときの顎の動きは食物の性状によって多少の違いがあるものの、顎はいつも同じような運動をします。噛む動きは一定の決まったパターンがあり、このパターンに沿って食物を歯の上にのせて噛みきり、それを砕き、そして最後にすりつぶすことをします。
この時の顎の動きと歯の噛む面の形との間に、調和がとれていることも大事な要素になります。これらの働きを剪断、圧断、そして臼磨運動と表現していますが、これらが上手く機能するかどうかが「よく噛める」あるいは「噛めている」かどうかに影響してくるのです。
たとえば板のような平坦なもの同士で食物をはさんで食べる場合は、噛みきって砕いてすりつぶすことが充分に出来ず、よく噛めないのです。また、一般的に噛みにくいとされているイカやタコなどのような性状の食品はこの三つの機能が働かないとよく噛めません。
「よく噛む」には噛み合わせが重要
そしてそれに加え「よく噛める」感を感じ得るためには、天然歯であれば噛み込む力を十分に食物に加えることが出来ることです。噛む力は、歯の周りの歯根膜全体から歯槽骨に加わり、末梢と中枢を連携する神経のネットワークに沿って脳へ伝わり噛みごたえとして感じるもので、その感覚が大きければ大きいほどよく噛めるといわれています。
たとえ、歯がなくなってしまっても義歯を通して口の粘膜に均等に噛む力が伝わり、その力によって粘膜の下の神経を刺激し「よく噛める」という感覚を得るのです。
このように「よく噛む」ためには「噛み合わせ」が重要で、噛み合わせがうまく調和して機能していれば、食物もよく噛み切れて砕け、そして擦りつぶせるため、自然に「よく噛める」ようになり、無意識によく噛むことになるのです。
これによって脳にもしっかり刺激が伝わり、食物の味もおいしく感じられ、噛むことの効用が発揮されてきます。「よく噛める」とは、歯が単にそろってあるからではなく、顎口腔系全体の調和した働きによって成り立つもので、アンチエイジングにとっては非常に重要なことになります。
参考文献 歯からはじめよう!アンチエイジング 佐藤孝著 日刊工業新聞社
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