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2008年1月25日 (金)

口の中のガン

本日は、徳島大学創立30周年記念において出版された「なるほど現代歯塾」よりお届けいたします。

口の中の怖い話

口の中のガン

「舌が動かしにくい」、「舌をさわると硬いしこりがある」、あるいは「歯肉に潰瘍ができ、歯磨きする時に出血しやすい」などの理由で歯科医院や大学病院を受診される患者さんは結構多いのではないのでしょうか。

このような場合、たいていは簡単な治療で治るのですが、なかには入院したうえで治療が必要なケースがあります。

いわゆる「口腔ガン」といわれる、生命に危機を及ぼす病気です。

口腔ガンや咽頭ガン、喉頭ガンを含めて「頭頸部ガン」といいますが、世界的にみて肺ガンや大腸ガンなどにつぐ第六番目に多く発症する「ガン」です。

世界で年間50万人が新たに頭頸部ガンと診断されています。疾学的研究より、ガンの発症率は年齢とともに指数関数的に増大するため、今後の高齢化社会を考えた場合、口腔ガンの発症の増加が容易に予想されます。

口腔ガンの主たる発症リスクファクターは、「喫煙」と「アルコール摂取」であることは広く認められています。これまでの報告で、46歳以下のヘビースモーカー、ヘビードリンカーあるいは両者を嗜好する人は、飲酒・喫煙をしない人に比較して、それぞれ20倍、5倍。50倍、口腔ガンの発症リスクが増大することが明らかにされています。

口腔ガンがどのように発症するかについては、他の部位のガンと同様に、他段階発ガン(*)であることが示されています。すなわち、前ガン病変とされる「白板症」や「紅板症」を経て、ガンの発症に至ります。

(*)口腔ガンの他段階発ガンとは

正常口腔粘膜→上皮過形成→軽度上皮異形性症→中等度上皮異形性症→高度上皮異形性症→上皮内ガン→浸潤性ガンと進むこと。

転移

「ガン」の最大の特徴として「転移」があげられます。

この転移には「リンパ行性転移」と「血行性転移」があり、一般にリンパ行性転移は所属リンパ節への転移であり、血行性転移は肺や肝臓、骨などの他臓器への転移です。

口腔の所属リンパ節は頸部、すなわち首のリンパ節です。口腔ガンが発見された場合、頸部リンパ節転移があるかないかは、予後を大きく左右するので、ガンの診断と同様にリンパ節転移のい有無は慎重に検査(造影CT法、超音波検査法、MRI、PET-CTなど)されます。

その個人の「ガン」がリンパ行性転移や血行性転移を起こしやすいか否かは、ガン細胞を産生する因子、たとえば血管内皮細胞増殖因子(VFGF)や塩基性線維芽細胞増殖因子などの産生量によって決定されます。

ちなみに、1cm3 の「ガン」があれば24時間に100万個以上のガン細胞が血液系へ流れ込みますが、大部分のガン細胞は、血流内で受ける障害のため死滅します。このため、転移は多くの場合起こりません。

口腔ガンの治療

それでは、実際に口腔ガンが見つかった場合、どのような治療がなされるのでしょうか?

①外科的手術療法②放射線療法③抗ガン剤による化学療法が挙げられます。これらの治療法を単独あるいは併用(集学的治療法)して用いる事により、ガンの撲滅をはかります。

けれども口腔領域には、①話すこと②噛むこと③飲み込むこと④息をすることといった、人が生きていくために必要な機能が備わっているため、これらの機能を出来るだけ残した治療法(機能温存療法)の構築が研究・開発されています。

最近ガン治療におけるトピックとして、「分子標的治療法」が挙げられます。この治療法は、たとえば非小細胞肺ガンに対する上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフェニチブや、大腸ガンに対する坑VEGF抗体であるアバスチンなどのように、ガンに特異的に高発現している分子のシグナルを遮断することにより、坑腫瘍効果を発揮させる治療法であり、次世代の化学療法の主役と目されています。

現在、分子標的治療法薬で口腔ガン治療に保険適用された薬剤はありませんが、今後の臨床研究・臨床試験により。適応できる分子標的治療薬を開発していきたいと思います。

参考文献 なるほど現代歯塾 徳島大学創立30周年記念出版 医歯薬出版

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