歯じめに
本日は、東京都立駒込病院の茂木伸夫先生の著書よりお伝えします。
歯じめに
二つの大きな病気の診療経験から
私は、東京都立駒込病院に勤務して、ほぼ30年近くになりますが、いろいろな病気の方の口の中を診てきました。
その中でも、二つの大きな疾患を診て口のケアを含めた口の管理の必要性を痛切に感じるようになりました。
二つの大きな疾患とは、エイズと白血病です。
この二つの疾患には、非常に似ている症状があり、共通している症状とは、免疫がかなり衰えてくるという事です。
エイズ患者さんは身体に入ったエイズウィルスが免疫細胞を殺してしまうので、免疫不全状態になります。また、白血病の患者さんは他の人から正常な血液をもらうために、患者さんの体の中のある免疫という他の物質を排除しようとする働きを抑えなければなりません。
そこで大量の抗ガン剤や免疫抑制剤を使います。そこで体の抵抗力がほとんどなくなる免疫不全状態になるのです。
日和見感染にご用心
免疫がかなり低下しますと、口や体にいくつもの菌が、病原体を持った細菌に変わって口の中にカビの一種であるカンジタという真菌を増やしてしまうことがあります。
たとえば主人が元気なときは、主人と一緒に体の中でおとなしく住んでいた仲間が、主人が弱くなってしまったことを良いことに、凶暴者に変身して攻撃して来るのです。
我々は、このことを日和見(ひよりみ)感染と呼んでいます。
ひどくなると、口の中にいろいろな潰瘍やガンなどを引き起こすこともあります。
口の中でみられる日和見感染は、①カンジタ菌②緑膿菌③肺炎桿菌④肺炎球菌⑤セラチア菌⑥カタル球菌⑦インフルエンザ菌⑧MRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)⑨MSSA(メシチリン感受性黄色ブドウ球菌)⑩ベータ溶連菌などがあります。
口の中のコンディションをベストに
免疫不全を起こしている患者さんの話はほとんど関係ないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、人間は、いつまでも若くはありません。誰でも歳をとります。またいつ病気になるかわかりません。だんだん歳と共に免疫力は衰えてきますし、若くても疲れた時など免疫の低下をおこすこともあります。
だから日々、口の中のコンディションをベストな状態にしておく必要があります。それが明日の健康に繋がるのです。
歯や歯肉の病気をそのままにしておいたり、口の中を汚くしておくと場合によっては虫歯や歯周病(いままでは歯槽膿漏といわれていた病気)から心臓や腎臓などの全身的な病気にかかってしまうことがあります。
このような病気を歯性病巣感染(しせいびょうそうかんせん)といいます。歯や歯肉の病気を放っておくと大変な事になります。つまり《寿命が短くなる》ことに繋がることがあることを知っていただきたいのです。
参考文献 歯医者さんにかかると寿命が延びる 茂木伸夫著 受育社
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