知覚過敏を引き起こす歯の状態とその状況1
今回は、知覚過敏について取り上げます。テキストは、安田先生と深川先生の共著である「象牙質知覚過敏症~しみる!痛い!にどう対応?~」からお届けします。今回のテキストは歯科医師に向けて書かれたものなので、すこし難しい内容になっています
象牙質知覚過敏症鑑別診断において考慮すべき要因
私たちは、知覚過敏症の患者さんを前にすると、いろいろな検査、問診、視診、X線等の診査をして、様々な情報を元に診断をしていきます。
その中で、知覚過敏症を引き起こす歯の状態や症状があります。今回はその一つ一つを検証していきましょう。
1:膿瘍(根の病気)のある歯、あるいは失活歯(神経の無い歯)
膿瘍のある歯や失活歯は、X線写真所見で、根尖部(根元の部分)に透過像(バイ菌がいる可能性があるということ)が認められたり、同部位にフィステル(膿が歯肉を突き破って口腔内に出てしまうこと)の存在が多く認められたりします。
大部分は、生活している組織においても、1根(歯の根の数は1~3本)だけが、部分的に壊死を起こしていることも多く、この場合は、電気歯髄診などのバイタルテストを行います。痛みの原因は主に歯根膜の痛みと考えられます。
2:破折している歯
垂直的破折、あるいは咬頭が部分的に歯髄にまで達していれば歯髄、あるいは歯根膜の痛みを伴います。また咬頭が部分的に破折して象牙質が露出していれば当然象牙質の知覚過敏が生じます。
3:う蝕のある歯
う蝕進行に伴う感受性はエナメル象牙境(エナメル質と象牙質の境目)でもっとも強く感じますが、その部分を超えると歯随に到達するまでの間、一時的に鈍くなります。う蝕はほとんどの場合でう窩(虫歯で出来た穴)を伴うので、X線写真像、探針などで鑑別する事が可能です。
4:歯肉退縮のある歯
一般的に、歯肉退縮はブラッシングによる機械的刺激や急性歯周炎が治癒した後、またはオーバートリートメント後に発症することが多く、これによりセメント質が喪失し、歯根部の象牙質が開口することにより感受性が亢進します。また、歯周病により歯肉クレフトも考慮しなくてはなりません。
5:ブラッシングによる摩耗のある歯
毛先の硬い、あるいは軟らかい歯ブラシで不適切な磨き方によりエナメル質を摩耗させてしまいます。特に研磨材配合の歯摩材の使用が相乗効果として働き、エナメル質を喪失するだけでなく、歯面表面の軟らかい歯肉を退縮させる要因ともなります。
6:咬合性外傷による障害(アブフラクション)
咬合性外傷(アブフラクション)による障害の感受性は大変強く、歯髄にまで進行してしまう場合があります。アブフラクションは、始めにエネメル質が剥離し、その後摩耗や酸蝕などの影響を受けるためか、結果として生じる象牙質知覚過敏、歯質の実質欠損の原因には複数の因子があると考えられます。また肉眼では認識しづらいアブフラクションもあり、むしろこn場合も方が診断の対処の方法も大変難しくなります。
7:酸による障害
一般的に、胃酸の逆流などの内因性の酸による障害は口蓋側に起こり、酸性食品の摂取による外因性の障害は頬側に起こる傾向があります。
pH値が大変高い炭酸飲料のコーラやフルーツジュースなどの大量消費や長時間消費(だらだらと飲む)は、酸による攻撃と同じです。そのうえさらにブラッシングを行うと、酸によって軟らかくなったエナメル質や象牙質の歯質を引き起こす要因となります。また、咬耗がみられる臼歯部咬合面に凹状のエネメル質喪失を引き起こします。
明日へ続きます。
参考文献 チームで取り組む 象牙質知覚過敏症 深川優子 安田登 共著 クインテッセンス出版
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