入れ歯のイロハ
本日は、日本経済新聞9月30日分サンデー日経の健康面に記載された記事からお届けいたします。
入れ歯のイロハ
せっかく入れ歯を作っても、「かみにくい」「痛い」「はずれやすい」といった悩みを抱える高齢者は多い。いくらおいしい食べ物でも味を十分に楽しめないと、生活に張りも出ない。入れ歯と上手につきあえば、生活の質(QOL)も向上するはず。
大人の歯は親しらずを除くと28本。厚生労働省の統計によると、自分の歯が20本以上ある人の割合は60歳で7割だが、70歳になると4割、80歳で2割まで減る。一方、自分の歯が一本も無い人は70歳以上で3割近くに達する。「歯を失う原因の約9割が虫歯と歯周病だ」(野首大阪大学名誉教授)
作ってからが本番
28本中、20本以上あれば高齢になっても、大半の食べ物をかみ砕くことは可能。咀嚼(そしゃく)がうまくいかないと、食べ物をおいしく感じられないほか、健康に悪影響をあたえかねない。最近では噛むことが脳の活性化に繋がるという研究も盛んだ。
入れ歯には総入れ歯と部分入れ歯があり、どちらも取り外す事が可能。自分の歯が全部なくなっている場合は、総入れ歯を、まだ多く残っていれば部分入れ歯を使う。部分入れ歯は残っている歯の本数や状況によって、形や大きさが異なる。
入れ歯はレジン(プラスチックの1種)やセラミックなどで作る。人工歯を支える義歯床には歯肉の色に似たレジンや、コバルトクロム、チタンなどの金属を使う。
レジンは加工しやすい反面、強度を保つためにある程度の厚みがいる。一方、金属は薄くて異物感が少ない。また、熱も伝えやすく、水を吸わないなどが利点がだが、調整しやすさではレジンに劣り、健康保険の対象にならないケースもある。
入れ歯は精密に型を取り、噛み合わせを決め調整しながら作るため、完成までに1~2ヶ月かかる。ただ、できあがったからそれで終わりではない。高齢者歯科が専門の小正裕・大阪歯科大学教授は「入れ歯は作ってからがむしろ本番だ」と話す。
まず、入れ歯に必要なのは慣れ。初めて入れ歯を使う人は数週間はかかると覚えておこう。使い始めに良くあるのが、「なんとなく気持ちが悪い」「しゃべりにくい」「痛い」といった訴え。
違和感は「はめる時間を少しずつ長くしていけば約1週間で慣れる」(小林教授)。はめる前に入れ歯を一度水で濡らすと口になじみやすくなる。
安定剤は緊急用
都内に住む60代の石川さえ子さん(仮名)は、歯周病が原因で昨年、上下とも総入れ歯にした。ただ、サ行やタ行がうまく発音出来ない。入れ歯を作ってもらった横須賀歯科医院(東京・太田)の横須賀正人院長に訴えると、「声を出して新聞を読んだり、好きな歌を口ずさんだりしてみましょう。」と助言された。早速実践すると三週間もしないうちに普通にしゃべれるようになったという。
噛みにくい場合は、豆腐やバナナなど柔らかいもので噛む練習をするのもよい。痛み出したら我慢は禁物。傷が出来ることもあるので早めに歯科で調節しなければならない。横須賀院長は「少しでも不具合があれば歯科医師に相談すること。勝手に自分でヤスリなどで削らないでほしい」と言う。
毎日の手入れも欠かせない。食後は入れ歯に食べかすがたまる。放置すると歯肉が炎症を起こしたり、細菌が繁殖したりする。高齢者だと細菌がもとで肺炎になるケースもある。
入れ歯をはずして専門ブラシなどで表と裏を丁寧に洗い流そう。歯磨き剤は特に使わなくてもよい。
ブラッシング後に専用の洗浄剤に浸せば除菌も出来る。入れ歯に熱湯をかけて消毒する人がいるが、変形するのでやめよう。寝るときははずし、歯肉を休ませる。合わないからといって、市販の入れ歯安定剤を使い続けるのは良くない。「あくまで緊急用。合わないのなら早めに歯科を訪ねて欲しい。」と専門家は口をそろえる。入れ歯は自分の歯の代わり。上手に使えるようになっても半年に一回、歯科での定期チャックは忘れずに。
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