歯周病の予防はまずお口の清掃から1
本日は、宮田隆先生の著書よりお届けいたします。
歯周病は感染症で、それも深刻な感染症であることは何度も強調しました。そして、その感染源は細菌達の集合住宅であるバイオフィルムにあり、その中に潜む歯周病菌であることもお話しました。ですから、その歯周病菌が繁殖しないような状態を常に保っていれば理論的には歯周病にはならないはずです。
ただし、これもすでにお話しましたが、私たちの数%、おそらく7~8%ぐらいの人は、どうやらもともと遺伝子的に歯周病に罹患しやすい体質を持っていて、なかなか歯周病から逃れることが出来ないようです。
しかし、残りの90%の人たちは、バイオフィルムさえ駆逐すれば(あくまで理論的には、ですが・・)歯周病にはならないはずです。
ただ、残念ながら生まれて死ぬまで完璧にお口の清掃を出来るかたなどいませんし、さらに加齢現象の様々な影響で私たちは知らぬ間に歯周病に罹ってしまっています。問題は、どうそれを最小限の被害でとどめるか、ということでしょう。
歯を良く清掃し、お口の中を清潔に保つことは、私たちの身体に多くの効能があります。もちろん、虫歯にもなりにくくなります。虫歯の原因は歯にこびりついた食べかすに繁殖した虫歯菌が原因ですから、そういう意味では予防はそう難しいことではありません。
虫歯菌が繁殖して大量の酸を出し、PHが5.5以下になると歯の表面が脱灰し始めます。ですから、その前に歯をきれいにしておけば虫歯にならないことになります。
しかし、歯周病の場合、歯周ポケットが出来てしまうと、歯ブラシだけでは歯周病の進行を止める事はなかなかできません。
こういうふうに考えたら如何でしょう。ます、歯周ポケットがない状態では、歯と歯の周りの清掃は大変効果があります。しかし、運悪く歯周病菌に感染して歯肉が腫れたり、わずかな歯周ポケットが出来てしまうと、清掃だけを目的とした歯ブラシだけで治すのは難しくなります。
清掃プラスちょっとした工夫が必要となります。その「工夫」についてはあらためてお話します。
さらに、歯周病が進行してはっきりとした歯周ポケットが出来てくると、歯ブラシによる清掃だけでは決して治りません。もちろん、しっかり歯ブラシしてお口の中をきれいに保てば歯周病の進行を遅らせることは可能です。しかし、あなたが体調を崩したり、何かの原因で免疫力が落ちたときに、歯周病は確実に、そして急速に進行してしまいます。つまり、歯周ポケットがあるかないかで日常のケアの考え方が全く違う、ということなのです。ただし、あなたは自分で歯周ポケットがあるかどうかは分かりません。もちろん、歯周病の得意な歯科の先生に診察してもらい、歯周ポケットを測定してもらうのが確実ですが、歯ブラシをすると「出血」する、という兆候で自分も歯周ポケットの有無程度の判断は出来ます。
よくテレビでも「歯肉からの出血」が歯周病の危険信号といったコマーシャルを耳にしますが、それはその通りなのです。
歯周病がもっと進行するうがいぐらいでも出血することがあります。ですから、歯ブラシの後や、うがいで出血したら、まず歯周ポケットがあると判断すべきでしょう。
明日へつづきます。
参考文献 歯周病の本当に怖いわけ 宮田隆著 医歯薬出版
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