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2007年1月21日 (日)

スポーツ外傷2

本日は、昨日の続きです。

転倒したりすると、歯がぐらぐらする事があります。これが脱臼です。小学生男子の約12%が歯の脱臼の経験を持っているといわれます。

もし歯が抜けてしまったらどうすれば良いのでしょう。外力によって脱臼した歯は、完全に口の中から飛び出してしまった場合でも、抜けた場所に再度植えること(歯の再植)で保存が可能です。

ただし、歯肉に炎症があったり、歯槽骨(歯を支える骨)が折れていたら、再植は諦めなければなりません。

脱臼の頻度の最も高い歯は上顎の前歯です。

では、実際に抜けてしまった時の処置の仕方を紹介します。

まず、脱臼した歯は汚染されていると考え、生理的食塩水(水道水は駄目です)と抗生物質で洗浄する。

普通、抗生物質などが、家庭に常備されている事などはないので、出来るだけきれいな水で洗って氷で冷やしておく。ただし、フリーザーなどで冷凍してはいけません。

凍ることで歯の細胞が破壊させてしまうからです。歯の周りについている歯根膜などの組織は出来る限り傷つけないようにします。

つまり、歯根膜の細胞を温存することです。そのためには、ぬれたガーゼか牛乳に浸けておくと良いです。そうすれば細胞の乾燥が防げて、栄養も確保することが出来ます。

この方法だと、6時間は歯根膜細胞を保存することが出来ます。ただ、唾液中に歯を保存ずるのはやめた方が良いです。唾液の中には非常に多くの細菌があって、歯髄が感染するからです。

なるべくならば、試合途中であっても、冷やした歯をもってすぐに口腔外科を受診することをお勧めいたします。

スポーツ競技はたいてい休日に行われるので、普通の歯科医院は休診していますが、病院の口腔外科ならば当直の先生に診てもらえます。

歯が抜けてしかった歯肉は、出血しないように清潔なガーゼを当ててしっかり噛んでおきます。口腔外科では、傷口を洗い、抜けた歯の消毒をして元の場所に戻してくれるでしょう。

理想的には、受傷したその場で脱臼歯の再植を行うことが望ましいです。歯が砂などで汚れてしまったら水(水道水は駄目です)で洗い、歯槽窩(歯が抜けた後の歯肉のくぼみ)に押し込み、保持します。チームメイトにやって貰えば良いでしょう。1週間ほど固定しておけば、抜けた歯は元の位置に固定します。固定した歯は、痛みが無ければ早く噛んだ方が良いです。歯と歯肉の接着には、適当な刺激を加える事が重要です。

抜けた歯が定着するかどうかを左右するのは、脱臼歯が口腔の外に放置されていた時間とその保存方法であります。

口腔外に長時間放置された歯だと、長くても数年で脱落してしまいます。しかし、たとえ数年でも脱落歯を保つことが出来れば、受傷時の精神的ショックや不安はかなり軽減できるはずです。

スポーツに関連した骨折は、上顎骨には発生しにくく、下顎に多いです。従って、スポーツ中に顎をぶつけたら、まず、下顎が折れていない事を確認します。下顎骨折が起こりやすい部位は、オトガイ正中部(下の前歯の下あたり)、顎角部(下顎のえらのあたり)、関節突起部(耳の前あたり)であります。

とくに、顎角部の骨折は、若年者に高頻度でみれら、親不知(智歯)が骨折の誘因となっています。つまり、親不知が骨の中に埋没していると歯の幅だけ骨が薄くなり、機械的強度が低下するからです。

また、いわゆる不正咬合(噛み合わせの悪さ)の有無によっても骨折の頻度が変わります。我々の調査では、下顎骨骨折疾患の73%に不正咬合がみられました。

骨折の症状には腫脹、疼痛、開口障害などがありますが、噛み合わせの異常という本人には一番わかりやすいと思います。

何となく、事故の前と噛み合わせが違うと感じたら、たいていどこかで顎が折れていると考えて良いと思います。そんな時には専門医による早急な処置を受けなければならないのです。

顎骨骨折の診断はX線診断が中心でありますが、どういう方向からどの場所にぶつかったという受傷の際の外力の方向が分かると、診断がより確実になります。

本人あるいはチームメイトなどの協力が得られると、正確な情報が聴取しやすい。

顎骨が折れている場合には、全身状態が許せば出来る限り早期に整復・固定を行うべくです。

顎骨骨折の整復の目的は、まず咬合の回復です。そのため、下顎骨骨折の場合は、上顎の歯列弓に合わせて骨のずれを整復する事になります。咬合を考慮せずに整復を行うと、骨折部は治癒しても歯がうまく噛み合わず、再度手術が必要になることもあります。

顎の固定には、上下の歯をワイヤーで縛り付ける顎間固定という方法がとられます。顎間固定の解除後は、開口練習をして積極的に機能の回復をはかります。

一般的にスポーツに起因する外傷は、他の原因によるものと異なって予測しうるものであり、予防が重要です。

特に、顎顔面領域おけるスポーツ外傷の頻度と程度は、マウスガード(歯のプロテクター)を装着する事により著しく軽減します。

もしすべてのコンタクトスポーツの選手がマウスガードを装着すれば、シートベルトの着用によって交通外傷が激減したように、スポーツ外傷は大幅に減少するはずです。スポーツ関係者の理解が望まれます。

また、若年者に下顎角部の骨折が多いのは、親不知の埋伏状態に関連があります。コンタクトスポーツの選手にとって早めに親不知を抜いておくことは顎角部骨折を防ぐ一つの方策であり、積極的な抜歯をお勧めします。

参考文献 上田実著 咀嚼健康法 中公新書

顔 口 は身体と違って隠せないことも
あって、診療に気を使わなければと思います
一番 外傷したくないところです。

by わいわいわい | 2007/01/21 21:35:57

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