歯は生命維持の基本
今日は、波多野尚樹先生の著書「歯から始まる怖い病気」の中からデンタルエッセイをご紹介。
歯を意識する時は、あまり体調の良くない事が多いのです。
虫歯で歯が痛むときは、歯の存在を強烈に意識させられます。
歯を磨いたら歯肉から血が出たという時も、ひょっとして歯槽膿漏かと思わず鏡に歯肉を写してみたりします。風邪を引くと、どういう訳か歯が浮いた気がして気持ちが悪かったり。
元気な時には、ほとんど存在さえ忘れているのに、調子が悪いと妙に気になるのが歯というものの存在です。
歯の基本的な機能は、食べ物を咀嚼する事です。
人間は実にいろいろなものを食べます。主食だけでも、ご飯やパン、パスタにクスクスと地域によって違っても炭水化物をしっかりと食べます。
副菜として、肉、魚、貝など多彩なタンパク質を摂り、その上、野菜も果物もという具合に様々な食物を口の中に入れて、ゆっくり咀嚼してから体内に取り込みます。
歯は、消化吸収という生命維持に欠かせないサイクルの入り口という役割を担っている事になります。
もし、歯が無くなったらどうでしょう。
まず、血が滴るような美味しいビーフステーキは食べられません。香ばしい草加せんべいなどとんでもない。たくあんなどもってのほか。新鮮な野菜や果物を噛むときのシャキッとした歯触りも、実感する事が出来ません。
柔らかいか、液体に近いか、その程度のものしか食べられなくなり、食事の幅がものすごく狭くなります。世の中にはごくまれに食べることには興味がないという人もいますが、大半は好きなものを気の合う人と楽しく食べる事で満足を感じ、今日の幸せを神に感謝する。
満腹は満足と直結しています。もちろん食べすぎはよくありませんが。
しかし、歯が無いとその楽しみはほとんど失われます。これは実に寂しい。また歯で食べ物を噛むことは、体にとって重要です。
食べ物をしっかり噛んでいると、口の中が唾液で満たされます。よく噛むことで唾液が大量に分泌されます。この唾液には、炭水化物を消化するアミラーゼという消化酵素が含まれているので、米などの炭水化物の消化の助けとなり、胃腸での消化の負担を軽減させる事が出来ます。もし歯がなければ、しっかり噛むこと出来ず、唾液の分泌も十分で無いために消化もうまくいかず、胃腸の負担も大きくなります。
人はパンのみに生きるにあらずといわれますが、何かを食べてエネルギーに変えなければ、活動することは出来ません。
思考するにもエネルギーが入ります。
すべての臓器の中で一番エネルギー消費量が多いのが、脳だと言われています。
脳の重さは男性の平均で1340グラム、女性の平均は1240グラム。仮に体重60キログラムの男性の場合、脳の重さは体重の約23%ですが、エネルギー消費量では約30%以上を脳が消費しています。
つまり脳を活発に動かすためにも、食べることでエネルギーを補給しなければならりません。
効率よく補給するに歯でしっかり食物を噛む必要があります。だからこそ、歯が大切なのです。
今回私が、この文章を選んだ理由は、私自身が今大変歯で悩んでいるからです。歯で生活の生計をたてて入るにもかかわらず、自分の歯に目を向けることが出来なかった悔いでいっぱいなのです。しかし、自分と同じような患者さんを診察させてもらうと、「あ~、今このような痛みで悩まれているのだな」と同調する事ができ、診療するにはとてもプラスになっている事が少し皮肉なことですけれど。
参考文献 波多野尚樹著「歯から始まる怖い病気」 祥伝社新書
もし 歯がなかったら
考えられないし 考えたくもないこと
でも あらためて 歯 に感謝です
先生 早く 歯 良くなってください。