ユニクロの診療4
前日からの続きです。
今回参加した勉強会は、インプラントの勉強会なのです。
インプラントと言うのは、人工歯根のことです。
どんなものか、簡単に説明すると、歯が何らかの事故や虫歯、歯周病にて欠損(抜けてしまった)してしまった場合、通常なら、入れ歯やブリッジといった補綴処置(掛けた部分を補う処置)を行うのですが、体質的に入れ歯が難しい患者さん、入れ歯を口の中に入れておくと、嘔吐反射や異物感が強すぎて、とても入れていられない方、またまだ年が若いために、歯を削らずに歯を元通りに固定したい患者さんといった方に適応です。
具体的にインプラントとは、骨にチタン性のネジを埋め込みます。
インプラントの発見は、スウェーデンのブローネマルク博士が、犬の顎骨にチタン性のネジを埋入して、経過を見る実験をしていました。
その骨とチタンがどの様な反応を示すかを見るために、ネジを犬の顎骨から外そうとしました。ところが、チタン性のネジは犬の顎骨から外すことが出来ませんでした。
チタン性のネジが骨とがっちりくっついて、離れなくなってしまったのです。
この骨とチタンはくっつくという性質を利用して、インプラントは誕生しました。
私が大学に所属していた頃は、大学の授業に本格的なインプラントの授業は有りませんでした。仕組みを説明する程度です。
そのため、インプラントは卒業してから自力で勉強する必要がありました。
私は、インプラントと入れ歯を専門に行う医局に入局したために、インプラント漬けの生活を送りました。
当時のインプラントは、まだまだ部品の数が多く、専門の知識と経験が必要といわれていました。多くの部品と仕組みを頭にたたき込み、手術の度に手術器具の分解清掃を飽きることなく繰り替えしました。
また、インプラントは、骨にネジを埋め込むという、本来なら死ぬまで触れることの無い「骨」を人間が触れるわけですから、絶対的な無菌状態を要求されます。
きちんと手順を踏んでしっかりインプラントが埋めたのにもかかわらず、失敗することがあります。色々な原因が考えられますがその中のひとつに、完全な滅菌状態を手術中に保つことが出来なかったという事が考えられます。本当にこの無菌状態を作り出すと言うことが大変なのです。
私は開業する時に、大学の様な環境で手術を行った方が、経済的にも精神的にも楽と言う意味で、完全滅菌が可能な手術室を作ってしまったほどです。
もちろん、患者さんの方にも責任は重大です。歯医者任せにして口腔内の清掃を怠ってしまうと、口の中のばい菌がせっかくよい状態で入れたインプラントを駄目にしてしまう恐れがあります。
そのインプラントなのですが、現在星の数ほど存在いたします。どのインプラントが一番自分に合っているかは、実際に使ってみなければわかないのです。
私は、いくつものインプラントの講習を受けて、色々確かめてみました。そして、やっと自分に合ったインプラントを見つける事ができました。それが、今回講習を受けたインプラントだったのです。
実は、この講習を受けるのは2度目です。
自分にあうインプラントを探す過程で1度講習を受けています。なぜこのインプラントを選択したかと言えば、私が大学で使用していたインプラントの会社が同じであるため、道具になじみがあると言うこと。道具がかなり改良されているため、以前ほど煩雑では無くなったということ。そして何より重要なのは、多くの論文が出ているので、歯科医学的に認知されている材料だと言うことです。
また、インプラント自体の性能が上がっているため、以前ほど大変では無くなってきていると言う点です。
部品の数も以前の10分の1程度ですし、コストもかなり下がっています。手間とコストがかからないと言うのがかなり重要なのです。
それは、患者さんの治療費の削減になるのです。
今回このインプラントの講師を務めて頂いている先生は、非常に良い先生で、こんな事を私に言ってくれました。
「以前のインプラントは、手間と過程が煩雑で、その反動がすべて患者さんの治療費に跳ね返ってきてきていました。しかし、すべての人が受けられる治療でなければ意味がありません。ベンツの様な限られた人の治療ではなく、ユニクロの様な、誰でも手軽に受けられる治療でなければいけないよ。」
私は、この言葉に目から鱗がでる思いでした。
しかし、いかに道具が良くても、インプラントは難しい治療であることには変わりはありません。
まだまだ誰にでも受けられる治療と言うのには、まだまだ時間が掛かるでしょう。
しかし、治療費に関して言えば、患者さんも少し頑張れば手が届くようにはなってきていると思います。
この勉強会はあと4回あります。
以前勉強していたインプラントを再び勉強し直すのはとても楽しいです。
早く患者さんに還元したいと思っています。
やっと「ユニクロ」の意味が分かりました。インプラントもなかなかどれがベストというのは断言できないですよね。。。患者さんにとってのベストというところを私も気をつけたいと思います。
ユニクロがわかりました
望んでいた勉強会に出会えて良かったです・
・・・めからうろこ・・・
これも時に欲しいです。