噛む健康学12
今日は、斉藤滋先生の「よく噛んで食べる」の中からトピックをご紹介いたします。
「噛まないと近視になる?」
最近の若者は身長・体重こそ増え、体格は良くなっていますが、視力は衰えてきていると言うのです。
平成15年度「学校保健統計調査(文部科学省)」によれば、裸眼視力1.0未満の割合は、小学生25.6%、中学生47.8%、高校生60.0%。また、視力矯正が必要とされる「0.3未満の人」の割合も、年齢が進につれ、急上昇していることが明らかになりました。
これに付いては、ここ数年、視力を調節する筋肉の問題、眼球が収まっている眼窩の骨形の問題などからアプローチされており、両方が作用して、視力の低下を招いているのだと考えられているのだそうです。
噛むことと視力。
一見、無関係なようですが、実は密接関係があります。
視力の低下はよく噛むことによって、向上させることが出来る可能性が高いのです。
眼球のレンズである水晶体は、見る対象と眼との距離に合わせて、薄くなったり、ふくらんだりして、ピントを合わせます。
そのピント合わせに大きな役割を果たしているのが、毛様体筋という筋肉です。水晶体は、毛様体筋の働きによって変形します。
遠くを見る時は毛様体筋が緊張して水晶体は薄くなり、近くのものを見る時は毛様体筋が弛緩して水晶体は厚くなります。
噛むことと視力の関係に付いて、この毛様体筋からアプローチしているのは、神戸山手大学の島田彰夫教授です。
「子ども達は噛まなくなっている。噛まないと言うことは、顔の筋肉が衰える。すると、水晶体が調節機能不全を引き起こす、その結果、視力が低下すると島田教授は考えました。
毛様体筋が噛まないことで衰えているというのです。言い換えれば、噛むことで顔の筋肉が鍛えられ、水晶体の調節機能が高まり、視力がよくなる可能性が高いということです。
もう一つ、東京大学の比類人類学の遠藤万里先生のグループによる注目すべき研究があります。
遠藤先生のグループは、よく噛んでいる人と、噛まない人では眼窩の形が変わることに注目しているそうです。頭蓋骨の中で、眼球がすっぽり収まる穴が眼窩、眼窩の下の部分は上顎骨で、上は前頭骨や側頭骨など多くの骨で作られています。
よく噛むか、噛まないかで、これらの骨の形が変形し、眼窩の形が変われば、視力にも悪影響を及ぼすわけです。
さらに、京都大学再生医科学研究所の提定美教授は、噛む力が弱くなると、顎の張り(エラ)が減少し、小さな顎になる事を証明しました。
実際、最近の若者の顎は華奢になり、歯並びが非常に悪くなってきています。しかも、これは下顎だけでなく、、当然、上顎骨や頭蓋骨全体の変形にも関係します。
すると、眼窩の形も変形するので、近眼の原因になる可能性があるとも、提教授は報告しています。
人間の体は、全体が影響しあうひとつのシステムであることが、「噛むこと」と視力の関係においても、顕著に示されています。食物をしっかり噛む習慣を付けて、よく見える目を取り戻してください。
参考文献 よく噛んで食べる 斉藤滋著 NHK出版
噛むことの重要性
顎の変形、視力まで関する事
改めて考えました
噛む 噛む エブリデイ♪