金貸しから物書きまで 広小路尚祈著
ちょっとネタバレ気味です。この本を読みたいなと考えている方は読まない方が良いです(笑)。
この本を本屋で見つけたのは、今から半年くらい前です。ちょうど新幹線に乗る直前に駅の本屋で購入しました。
この出張中は、この本で時間を潰そうと考えていたから。
しかし、思いの外疲れていた私は、新幹線の中で熟睡。その後、ホテルでも雑誌なんぞを読んでしまい、結局自室の本棚直行と相成りました。
本棚を整理していて、思い出したように見つけた本書。この本を買ったときのわくわく感を思い出し、読み始めました。
こういった本は、久々でした。面白い。
主人公は、仕事が続かない男。
学歴なし、根性なし、妻子あり。これだけでもかなり面白いのに、性格がかなり破滅型なんです。
仕事の良い面を見つける事が出来ず、思い詰めながらも仕事を途中で放り出してしまう。
自分でも悪い癖だと分かっている。
ただ、この主人公、本当によく本を読むのです。そのため、頭は悪くないのか、自分が仕事を辞める理由を頭の中で勝手に理路整然と正当化してしまい、「だって、しょうが無いじゃん」と仕事をばっくれる。
また、この男は大の家族好き。家族が好きなあまり、家族のために自分が犠牲になろうと少し頑張るつもりになる。
でも、やはり駄目。この繰り返し。
この男が大好きな家族が、この男にとても優しい。この男がどんなに破滅型でも優しく包んでしまう。
この優しい家族のせいで、自分が惨めになり、また仕事を探そうとするが、人間関係がうまくいかない気がして、職探しも難航してしまう。それでも優しい奥さんに何かプレゼントを渡したいと考えるが、金がないから、小説でも書いて、妻に渡そうと考える。
そこで、書いた小説が本書の中にあるのですが、とても良い。続きが読みたいと思ったくらい。
作者の広小路さんというかたは、芥川賞の候補にもなったと聞いていますが、私は全く知りません。
しょっとして、これは作者が自分の事を書いたものなのか?そんな気がする。勝手に。
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