外科医 須磨久善
正直いって、著者の海堂 尊の本は苦手です。『チームバチスタの栄光』を最初に読んだ時に、ちょっと違和感があったから。
その後も、苦手と言いつつ本はしっかりと読んでいます。
今回読了した『外科医 須磨久善』は、歯科医の私が読んでも、とても共感できるおもしろい本でした。
医師(歯科医師も)は、卒業後に人生の転機となる決定をしなければなりません。自分はどんな医者になりたいのかを決定しなければならないのです。
私の場合は、大学に入学した時から、入れ歯を勉強したいとずっと思っていたので、あまりぶれはなかったのですが、決定していない先生にとっては、とても重要な岐路であります。
この本の須磨先生も、心臓外科医になるという決心はぶれなかったようです。
しかし、そのアプローチの仕方が普通の先生とは違うところ。興味のある方は是非一度読んで見てください。
しかし、つくづく医学の道は因果なものです。
勉強をしたいという向上心があり、それを実行に移すとなると、かなりの犠牲を伴います。自分の生活をかなりの部分犠牲にしなければならないのです。
須磨先生もそのあたりはかなり苦労されたようですが、たいていの先生方は、その向上の道を閉ざす方がほとんどです。しかしそれはやむを得ないのです。
向上心があって、勉強してみたい場合、どうしても本場の留学で勉強したいもの。しかし、それを行えば婚期が遅れ、開業が遅れ、歳も取る(笑)。
現在、一線で活躍されている先生方は、そうした犠牲を払って一線に上り詰めたと思います。
ちょっと脱線して歯科の話になりますが、私の学生時代は、インプラントは概要だけを習い、実習も講義もありませんでした。
本気で行うには、自分自身で目的をもって勉強するしか無かったのです。
今、現在インプラントの第一線にいる先生がたは、そうした地道な努力をご自分でなさって後輩に引き継いでいく。
この須磨先生も同じ生き方をしているのだなと思いました。
一つの事を極めるには、多くの犠牲の上に成り立っている。この本、これにつきます。
良本。
医学を志している方に特におすすめ。
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