ALL-ON-4が他のインプラント手術と違うわけ
先日参加したALL-ON-4エッセンシャルの最初の議題は、『天然歯の抜歯基準』でした。
実は、このALL-ON-4という術式は、私自身も含めて、理解するのに非常に時間のかかるものでした。
というのも、このALL-ON-4は、全く歯が無い患者さんが行うものではなく、歯がしっかりあるのだけれど、歯が重度の歯周病に罹患しており、すでに抜けそうな歯、もしくは今度5年~10年は持たないであろうといわれる歯を今後の予知性を高めるために、あえて抜歯を行い、ALL-ON-4を行うと言うものです。
インプラントの最大の欠点は、骨の中のインプラントがメインテナンスさえしっかりと行っていれば、きちんと持ってしまうという、少々逆説的なところが、今後の課題とされています。
ちょっと『?』という感じですが、いままで、欠損部を補う治療のもっとも簡単なブリッジという方法は、寿命が平均8年と言われています。この8年のサイクルで古くなった技工部を新しくし、次に繋げていったことが歯科の歴史の中にあります。しかし、インプラントはメインテナンス次第では半永久的に持ってしまう。そのため、インプラントの歯の部分が駄目になったり、インプラントを支えているネジが切れてしまったり、インプラントと噛み合う天然歯が駄目になってしまうといったことが今後出てくると言われているのです。
そのため、近い将来抜けてしまう歯のことを考慮にいれずに無計画にインプラント手術をしてしまうと、本当にインプラントが必要になったときに、最初に入れたインプラントが骨の中で邪魔になり、ALL-ON-4のインプラント手術が困難なものになってしまうということが出てきます。
そのため、最初から将来起こることを見越して、抜歯をするという少々逆説的なことになってしまうのです。歯を残そうとする歯周病医の反対を受けているのはそのためです。
それと、インプラントは骨がたくさん有った方が成功率が高まりますが、ALL-ON-4は骨が多すぎると成功率が下がります。本来、骨は表面の皮質骨と言われる硬い骨と中央の海綿骨という柔らかい骨で構成されます。ALL-ON-4は、出来れば『バイコーチカル』と言われる、皮質骨にインプラントを2カ所接触させて行きたいので、海綿骨の豊富な骨量の多い骨より、皮質骨が多い痩せた骨の方が成功率が高くなります。
それと、ALL-ON-4の特徴の一つに、外科的侵襲が少ないことも特徴の一つです。骨がない場合、普通はグラフトといって、移植の手術が他に必要になりますが、ALL-ON-4は、その必要が無いのです。まったくないとは言いませんが、確率的には全く低い確率です。
私は、ALL-ON-4の治療を受けた後の患者さんの笑顔が好きです。いままで、義歯や歯周病で大変だった食事が、1日で普通に食べられ、しかも審美的にもかなり優れているので、満足度が高いみたいです。
なかなか理解されにくい治療ですが、私は将来性のある良い治療だと信じています。
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