ストレスとはなにか?1
本日は、3回に分けて、志賀泰昭先生の著書『噛み合わせと顎関節症の治療と予防』よりお届けいたします。
◇刺激に対して体が反応する
咬合異常はヒトの体にとって大きなストレスとなります。そこで、「ストレス」とは何かを整理して起きましょう。
物理学では、物体に力が加わった時に生じる物体内の「ゆがみ」のことをストレスといいます。これは医学や生物学の分野でも同じです。したがって、一般には外部からの刺激のことをストレスといっていますが、正確には刺激に対する反応が「ストレス」です。
ストレスというとカナダの生理学者であるハンス・セリエ(1907~1982年)の「ストレス学説」が有名ですが、生理学の分野で最初にストレスという言葉を使ったのは、先ほど(志賀先生の本を参照してください)出てきたウィンター・キャノンです。
キャノンは、イヌに吠えられて緊張状態にあるネコの血液中にアドレナリンという交感神経の伝達物質がたくさん存在することを発見したのです。
緊張時間が発生して、闘うか逃げるかしかない状態では、心拍数が上昇し、瞳孔が開き、消化器の働きが抑えられます。キャノンは、生体がこのような状態になることを「ストレス」という言葉で表現したのです。
セリエは、外部から刺激を受けて緊張したり体にひずみが生じたりすると、これに対応しようとして体内で非特異的な生理的反応が起こるというのです。非特異的は特異的の反対語です。
たとえば、急に寒くなって震えるというように、ある刺激に対して常に一定の反応が起こるのは特異的反応です。これに対して、非特異的反応は、どのような刺激かに関係なく起こる反応です。
セリエはこの非特異的反応をストレスと呼び、その反応を生じさせる有害な外部環境因子をストレッサー(ストレス因子)と呼んだのです。そして、ストレッサーに対する生体の適応現象をセリエは「一般的適応症候群」といい、これには次の3段階があるとしています。
◇1警告反応期
体が連続的にストレッサーにさらされた時に緊急的に反応する段階です。まず、体温が低下し、血圧が低下し、血糖値が低下し、神経の活動が抑制され、筋肉の緊張が低下し、血液の濃度が上昇するなどの反応が現れます。
次いで、生体防衛反応が現れて、副腎が肥大し、胸腺・リンパ組織が萎縮し、血圧が上昇し、体温が上昇し、血糖値が上昇し、神経の活動が活発になり、筋肉の緊張が増加するなどの反応が現れます。
2抵抗期
持続しているストレッサーと抵抗力のバランスが崩れて、適応現象が安定している段階です。適応を持続するにはエネルギー(これを適応エネルギーといいます)が必要ですが、このエネルギーが消耗してしまうと適応力が低下して、次の疲憊(ひはい)期に移行します。
3疲憊期
抵抗力が失われてしまい、再び体温が下降し、胸腺・リンパ組織が萎縮し、副腎皮質の機能が低下するなどして、生体に大きなダメージを与え、最悪の場合には死に至ることもあります。
以上が、ハンス・セリエのストレス学説の概略です。
明日へ続きます。
参考文献 噛み合わせと顎関節症の治療と予防 志賀泰昭著 日東書院
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