あごでぽきんと音がする
本日は日本経済新聞2009年9月19日号の健康生活NIKKEI PLUS1の『ヘルスこの一手』よりお届けいたします。
◇痛みと開口幅に着目
食事の時、口の開閉につれ、耳の前で「カクン」「ポキン」などの音を感じる人は結構多いのではないだろうか。
耳の前に指を当て、口を開け閉めするとよりわかりやすい。この音は顎(がく)関節から発する音で、クリック音と呼ばれるものだ。
典型的なものは、口の開閉それぞれに繰り返し音が発生する症状。私たち歯科医師は「相反性クリック」と呼んでいる。
顎を動かすとジャリジャリ、ゴリゴリという音を感じることもあるが、こちらはクレピタス音と名付けられている。
顎関節とは下顎骨と頭蓋骨(ずがいこつ)を連結している関節のこと。関節をスムーズに動かすため、下顎骨と頭蓋骨との間には軟骨のクッションみたいなものが挟まっている。この関節円盤はハンモックのように前後から支えられ、通常は下顎骨の関節部分に帽子のようにかぶさっている。
クリック音が起きるのは、ハンモック様の支えに異常が生じ、関節円板がすれてしまうことが原因だ。開け閉めのたびに下顎骨の関節部分が関節円板にひっかかり、乗り越える時に「かくん」「ぽきん」と音が出る。音がしても痛みがない場合もある。
どの段階で受診すればよいのか迷うと思う。一般的な目安としては、口を開けた時の上下の前歯間の距離が40ミリ程度あり、咀嚼(そしゃく)時に引っかかる感じや痛みが出なければ、すぐ治療の対象にしなくてもよい。
音が消えても口が開けにくくなったり、音が続いて痛みや開口障害が頻繁に起きたりする時の方が、受診には必要だ。
一方、クレピタス音は下顎骨の関節部分が変形した場合や、骨の変形を伴う疾患で生じる。この音が出ている場合は、X線検査で骨に異常が認められる場合がおおい。すでに骨の変形があるため、簡単に症状が改善することは難しい。それでも食生活を工夫したり、歯のくいしばり・噛みしめをしないように注意することで痛みが軽くなることはある。痛みを伴うようであれば、まず受診をすすめたい。
顎関節のトラブルの治療は、開業歯科医院をはじめ総合病院、大学病院など様々な施設で治療出来るが異なるので、担当医と十分に話し合うことが大切だ。
テキスト:国立病院機構東京医療センター歯科口腔外科医長
最近のコメント